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プロローグ 今 年 の 展 望 |
いよいよロードシーズン
今年は各レースとも例年にない大激戦必至!
順天、駒澤、山梨、神奈川の4強のバトル!……大学駅伝
駅伝シーズンは毎年10月から翌年の1月までの4ヶ月である。テレビで観戦できる大会は13ほどあるから、月平均にして4レースということになる。どのレースもそれぞれ特徴があって興趣つきないものがあるが、そのなかでも圧巻はやはり大学駅伝(男子)ではないだろうか。今やすっかり正月の風物詩となった感がある「箱根駅伝」のせいばかりではない。「出雲全日本大学選抜」「全日本大学」を加えてビッグレースが3つもあるからである。
シーズンの開幕を飾るのは「出雲全日本大学選抜」である。まずは大学駅伝のみどころからとりあげてみよう。関東の大学にしてみれば、良くも悪くも「箱根」が頂点にあり、「出雲」「全日」はあくまでもその前哨戦という位置づけである。昨年は2つの前哨戦制したのは駒澤だったが、「箱根」を制したのは順天堂だった。順天は「出雲」5位、全日本8位から「箱根」に勝つという大きな変わり身をみせて、周囲をアッといわせた。ともかく大学駅伝(男子)については個々のレースだけでなく、3つの大会を相互に関連づけて、箱根へと向かうストーリーを楽しむことができるのである。
昨年は駒澤、神奈川、山梨学院のビッグ3対決といわれながら、いずれも最終的には順天堂の脇役になりさがった。今年もこの4校を中心に展開するだろうが、昨年以上に実力接近で眼がはなせない。
順天堂は箱根優勝メンバーが8人も残っている。昨年の三代直樹のような巨砲はいないが、実績のあるランナーがそろっており、なかでも高橋謙、入船満がエース格に育ちつつある。今年はマークがきつくなるだろうが、やはり優勝候補のナンバーワンか。
駒澤は今季も学生トリプル・クラウンが狙える陣容である。藤田敦史、佐藤裕之というエースがぬけたが、西田隆雄、神屋伸行、揖斐祐治の2年生らが中軸を占め、ほかに大西、前田、上原なども健在である。層の厚さではナンバーワンかもしれない。
層の厚さといえば一昨年の覇者・神奈川もあげるべきだろう。絶対的なエースは不在だが、今年も安定した走力のあるランナーがそろっている。小松直人、野々口修、勝間信弥相馬雄太、飯島智志……。総合力が生きる展開になれば大きく浮上してくる。
台風の目になりそうなのが山梨学院である。ハーフマラソンや長距離での上位入賞者が6〜7人もそろっており、ケニア留学生カリウキがスーパーエースになりつつある。さらに最近は不振をきわめる古田哲弘が復活すれば覇権の奪還も夢ではない。箱根で天国を観、そして地獄を観た古田がもどってくれば、各校にとってこれほど怖いものはないだろう。
そのほかでは新しい戦力が育ちつつある中央、箱根では予選落ちの早稲田に復活の兆しがあり、両古豪の戦いぶりにも注目したい。関西勢が出場する「出雲」と「全日本」では、今年こそ京産大に関東上位校一角崩しの期待がかかる。
有力チームの戦力を探るという意味で10月10日の「出雲」が注目されるが、スピードが生きるこのレースに関するかぎり、今年も駒澤が中心になるだろう。各区間が短いだけにアンカー勝負になる可能性もあるが、そうなれば山梨学院のカリウキがまとめてねじふせるやましれない。
「全日本」と「箱根」のゆくえはあくまで「出雲」を観てからでないと判断できないが、現状ではやはり決め手のある順天堂、駒澤が一歩リード、山梨、神奈川がこれを追うという形勢ではないだろうか。
同じ大学駅伝でも女子の場合は、いまひとつ影が薄いが、今年はかなりの激戦が予測される。昨年の覇者・城西大が2連覇に挑むが、京産大も奪還をねらっている。今年は筑波あたりも戦力が強化されており、あるいは2強対決といわせないかもしれない。
旭化成の優位不動、興味は2位いに……実業団男子
中心不在、横一線の戦国駅伝の様相……実業団女子
全日本実業団(男子)は今年も旭化成を中心に展開するだろう。マラソンでは佐藤、真内、小島の3人、長距離では高尾を世界選手権に送り出すという層の厚さ、旭化成のユニフォームを着て出てくれば、誰でもがそれなりの走りをするところが強みである。昨年と同様に花田、平塚、櫛部と5000M
では3人もトップテンに名を連ねるヱスビー食品とのマッチレースの様相だが、今年は富士通と中国電力もからんでくるやもしれない。三代直樹、藤田敦史など大学駅伝のスターを採った富士通はヱスビーに肉迫する勢いであるとみる。今年は優勝争いというよりも2位争いのほうが熾烈になりそうである。
実業団女子は大混戦の様相である。昨年はめまぐるしく先頭入れ替わる熾烈なレースだったが4強の一角・東海銀行が制した。今年は各チームの実力が昨年以上に接近しているようである。さらに今年はシドニーオリンピックのマラソン選考レースとのからみで現状では、たとえば高橋尚子など主力選手の去就がいまひとつはっきりしない。東海銀行、沖電気宮崎、京セラ、積水化学、ノーリツ、天満屋、NECなどが横一線、当日のオーダーを観たうえでないと、なんともいえない情勢である。
西脇工、大牟田、2強に迫る佐久長聖……高校男子
立命館宇治に初制覇のチャンス到来!……高校女子
高校駅伝の男子は今年もやはり西脇工業と大牟田が中心になるだろう。西脇工には藤井周一(インターハイ5000M
日本人1位、全国高校選手権10000M優勝)をはじめ、中谷圭介、森口祐介など粒ぞろいである。大牟田も及川賢人(ジュニア選手権5000M
優勝)、吉橋彗、谷中紘季など各大会での上位入賞者がそろっている。さらに今年はあの佐藤清治のいる佐久長聖が2強に割ってはいる勢いである。佐藤のほかにも高見沢勝(全国高校選手権10000M
2位)矢嶋信、小出徹などが確実に力をつけている。総合力では西脇が有利だろうが、2年続きで完敗した大牟田の悔しさが生きるかどうか。そして2強と戦えるところまできた佐久長聖のチャレンジに注目してみまもりたい。
女子は長距離ビッグ3の藤永佳子、阪田直子、長尾育子など切り札をもつ諫早、筑紫女学園、立命館宇治、そのほかでは須磨学園あたりが有力候補ではないだろうか。なかでも今年は立命館宇治にとってまさに千載一遇のチャンスである。ビッグ3のうちでは2年生・阪田直子の勝負強さが光る。インターハイ3000M
では世界選手権代表の藤永、高校新を出したばかりの長尾をあっさり退け、8月の高校選手権(
5000M)、9月のジュニア選手権(3000M)と2度にわたって長尾を破って優勝している。さらにトラックよりもロード向きだから、駅伝での優位は動かないだろう。立命館宇治には阪田だけでなく、ほかにも池田恵美、桝本絵美など全国レベルの有力選手の顔がそろっている。だが、その立命館宇治にしても今年は予選で桂に苦めしめられそうな気配である。今年の桂高には800M
、3000M、5000M の3種目にわたって高校トップ10入りしている中村奈美を中心に丸毛静香、越智純子などがひかえており、ひとつまちがえば宇治といえども足もとをすくわれる可能性も十分にある。
ともかく地区予選の結果が出そろわないことには優勝のゆくえを予測できないが、今年も高校駅伝は男女ともにみどころいっぱい、熱気をはらんだ眼をはなせないレースになりそうである。
駅伝はバブルに咲いた徒花ではない!
駅伝といえばながく冬の人気スポーツだったが、バブル崩壊後の長期不況の影がひたひたとしのびよりつつある。不景気のせいで現実に協賛企業が激減しているらしい。その結果、大会運営や待遇面などに少しづつ影響があらわれはじめている。たとえば国際駅伝大会としてスタートした「全日本大学女子駅伝」は、予算不足で今年から海外招待が中止になった。8月現在では協賛会社の見通しも不透明のままだという。駅伝はバブル景気の上に咲いた徒花ではない。バブル人気などと言わせないために、ぜひとも選手たちの力強い感動の走りで、それを実証してほしいと思う。(1999/09/22)
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