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まさか……。最終区、それも後半になってから最大のヤマ場がやってくるとは信じがたいものがあった。19.7キロある最終の8区では過去にいくどか逆転劇があった。逃げる山梨、追う駒澤……。10キロ付近までは7区終了時のタイム差(50秒)がほとんど詰まらなかっただけに、今回に関するかぎりそのままゴールまで平穏に流れてゆくようにみえた。 だが……、膠着状態にあったレースが動きはじめたのは10キロすぎからだった。前半は死んだフリをしていたというのか……。駒澤・神屋伸行の表情がにわかに一変、眼つきが尖り、口もとがひきしまった。渡会橋付近では一気に23秒差、13キロ付近では15秒差……。そして15キロをすぎて逃げる山梨・尾崎輝人の背後に迫った。口もとをゆがめ、顔を左右に振り、阿修羅のごとくに追う神屋、並ばれても表情を変えることもなく、冷静沈着に精確なペースを刻む尾崎……。二人の表情はいかにも対照的でおもしろかった。15キロから18キロまで、たがいに相手のようすをうかがいながらの心理的バトルも見ごたえがあった。 なんで、こうなったの? 50秒差を一気につめられて山梨の関係者は、誰しもがそう思っただろう。けれども……、2区の古田でトップに立ったときから、すでにして思わぬ結末にいたる道筋がしかれていた。3区から7区にいたる両校の息づまるせめぎあいこそが、最終逆転の伏線となったのである。
熱田神宮から伊勢神宮まで……。106.8キロを8区間で競う全日本大学駅伝は11月7日に行われ、全国の地区代表25チームが大学日本一をめざして、秋晴れの伊勢路をひた走った。今年から出場する大学はオリジナルのタスキを使用できるようになったが、2区で早くも1校、3区で1校。4区では7校、7区では11校……と繰り上げスタートが例年より多かった。各大学ともに趣向をこらしたせっかくのタスキもゴールまで届かなかったのは、いかにも皮肉である。 今年のレースを終始支配していたのは山梨学院である。1区の西川哲生は鹿屋体大の永田宏一郎に遅れること30秒で6位だったが、ライバル順天(2位)には18秒遅れ、駒澤には50秒も先んじて、首位を窺うに絶好のポジションを占めた。そして2区はあの古田哲弘の登場である。出雲で復調のきっかけをつかんだ古田は、3年まえの古田にもどりつつある。まるで禿げ鷹が獲物をねらうような精悍な眼ざしがよみがえった。走りもリズミカルで力強い。2キロ付近でトップ集団に追いつき、6.4キロあたりでスパートする。5人抜きでトップに立ち、2位の第一工業大に40秒、ライバル順天には42秒、駒澤には1分37秒、神奈川には2分17秒もの大差をつけてしまった。
古田哲弘の快走によって、過去7度も2位に甘んじている山梨に、〈七転び八起き〉というわけではないが、初優勝のチャンスがめぐってきた。3区以降の各ランナーも堅実に走って、トップの座はゆるぎなかったが、3区から7区の結果こそが、最後にもつれる火種を育てていたのである。駒澤は3区の揖斐祐治が6人抜きで2位まで上がってくる。ここでトップをゆく山梨とは1分10秒差まで詰めたことが、結果的に最後に生きてくる。この差は4区から6区まではほとんど動いていない。前田、島村、大西が好走して駒澤は粘りに粘ったのである。山梨にしてみれば、期待のD・カリウキを使いながら突っ放せなかったのが、最終的には致命傷になったとみる。さらに駒澤は7区で一年生の松下龍治が区間1位の走りで、50秒差という微妙なところまで追いあげてきた。タイム差が1分を1秒でも越えていたら、山梨・尾崎はきっと逃げきっていただろう。1分を切ったということで追うほうは勢いづき、追われるほうには緊張感が生じたとみる。 駒澤の勝因は各ランナーがきっちりと役割を果たしたところにあるだろう。3区から7区の選手たちが逆転の舞台をつくり、神屋が総仕上げをしたのである。前半は力を蓄えて、後半にすべてをぶつけた。勝負強いランナである。17.8キロ付近だったろうか。登りにさしかかったところでスパート、併走していた尾崎を一気に突っ放した。強かな勝負根性と強靱な走りに思わず驚嘆してしまった。
山梨学院は2位に甘んじたがミスがあったわけではない。1区と7区をのぞいて、いずれのランナーも区間1〜2位で走っているから、むしろ実力を出し切っている。その山梨にあっさり勝ってしまう駒澤には、昨年までとはひと味ちがう強さというものを感じる。あえて1年生を3人も使うという冒険に出られるのは、余裕というべきだろう。 出雲を制した順天大はいまひとつ精彩を欠いていた。1区で2位と絶好のポジションにつけながら伸びきれなかった。勝負どころで決め手を欠いたのが敗因。神奈川大はまたしても出遅れた。1区で10位と出遅れ、2区でも順位をあげられず、その時点で圏外に去った。最後は6位まで押しあげてきたたが、中央大や京都産業大にも負けるようでは、かなり重症というべきだろう。 健闘したのは東海大である。最終的には7位だが、1区で3位につけて終始4位以内をキープしていた。終わってみればいつの間にか4位に来ていた中央大とともに、確実に地力強化されているとみた。昨年3位の拓殖大は、出雲につづいて今大会も流れに乗りきれていない。箱根ショックの長いトンネルから、いまだ脱しきれていないようである。
駒澤大の連覇によって、久しぶりに画面を通じて、あの愛すべきキャラクターの森本葵監督にめぐり会うことができた。昨年の本大会を制したとき、高らかに学生駅伝3冠獲りを宣言した森本さんの眼をひんむいた面立ちは、まさに駅伝監督界の団十郎というべき役者ぶりだった。氏はその後もいたるところで「箱根制覇」の約束手形を連発していたという。ところが……である。今年はまるでヒトが変わったように口ごもり、妙に歯ぎれが悪いのである。言葉を選びながらポツリポツリと慎重な物言い、それはやはり箱根の復路で順天大にまさかの逆転を許した後遺症というものだろう。 口は災いのもと……というわけなのだろうか。それでも「あと一つ大きいのが残ってますから……」とか、1年生を3人つかったのは、「(箱根をひかえて)どのていど使えるか試した」などと、衣の下の鎧をちらと垣間見せてくれるあたり、やはり団十郎の役者魂を忘れてはいない。森本監督の「口の重さ」は秘めたる自信の表れとみた。来年の正月三日、読売新聞社前のゴールで、森本監督はどんな顔をしているか。結果はいかにあれ、どんな言葉がとびだしてくるか。今から楽しみである。 本大会を終わった時点で箱根を占えば、駒澤大がアタマひとつリード、それを山梨学院大と順天堂大が追うという形勢だろう。決め手を生かす展開になれば山梨が浮上、総合力が生きる展開になれば順天堂ということになる。〈J・Y・K・K〉のうち、今年に関するかぎり神奈川大はやはり苦しいだろう。全日本6位から箱根を制した昨年の順天堂の例があるから、もちろん神奈川にもチャンスがないわけではないが、総合力という点でも一歩足りないように思う。 総合成績
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