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プロローグ 今 年 の 展 望


20世紀から21世紀へと橋架ける
レニアム駅伝が、いよいよスタート!


高橋尚子の金メダルが女子駅伝を活性化!

 シドニーで高橋尚子が世界の頂点に立った。陸上日本女子はもちろん、オリンピックのマラソン競技において、史上初の金メダル獲得である。追いすがるシモンを振りきってゴールしたあとも、高橋はそれほど昂ぶることもなく、静かに喜びをかみしめていた。いつもながらの謙虚なものごし、さわやかな笑顔をふりまく姿は、いかにも高橋らしくて清々しかった。マラソン・駅伝ファンのひとりとして素直に喜びたい。
 高橋の優勝そのものについてとくに驚きはない。高橋は2年前からすでにして世界一の潜在能力をたくわえていた。持てる力を余すところなく発揮して見せただけなのである。それをオリンピックという大舞台でやってのけるところに、高橋というランナーの凄さがある。
 高橋を追ってくる者はみんな跳ね飛ばされた。あの大阪女子マラソンで、驚異の粘りをみせて弘山を抜き返したシモンでさえも例外ではなかった。高橋は終始レースの流れを自分でつくっていた。誰かの流れにうまく乗って、最後に漁夫の利を占めたというのではなくて、スタートからゴールまでつねにレースそのものを支配していた。シモンとマッチ・レースになった後半、彼女は当面のライバルを決して前に出さなかった。併走しながらも常に一歩先んじている。主導権を相手に渡さないという頑なさに、凄まじい勝負根性、ケタ外れの強さを感じた。
 駅伝出身の高橋尚子にオリンピック制覇によって、20世紀から21世紀へと橋かける今年の駅伝が、いっそう盛りあがることを期待したい。ながらく冬眠していた時評子も高橋の快走に勢いを得て、さっそく「2000-2001駅伝時評」の筆を執りたいと思う。


駒澤大、順大が本命
追うのは中央大、東海大、帝京大……大学駅伝

 今年の箱根(駅伝)は、面白かったですねえ……。
 「西暦2000年問題」とやらで、奇妙な緊迫感が漂うなかで明けた今年、知り合いのほとんどが、顔を合わせるなり、そのように声をかけてきた。「箱根駅伝」の話題が新年のあいさつ替わりになるほどだったのである。法政、東海、帝京、駒澤……。めまぐるしく順位が変動した往路の熾烈な戦いぶりは、初めて駅伝を観戦する者でも魅了してしまったようである。
 駅伝シーズンの幕開けを間近にして、ざっと今年の形勢を展望してみたいと思うが、出場チームや選手の顔もみえてこないまま、予想するというのは、素人が先物相場に手を出すようで無謀というほかはない。けれども、現時点での予測が、実際の結果と較べて、どれほどギャップがあるものなのか。それを知ることも意味のあることではないか……と開き直ることにした。
 予想は逆から読めば「うそよ」となるが、新設の「駅伝ひとくちメモ」で「直前の展望」でも書くことにして、「うそよ」にともなう危険を随時にヘッジさせてもらうことにして、先ずは「大学駅伝」から始めたいと思う。
 「出雲」から始まり、伊勢の「全日本」、正月の「箱根」とつづく大学駅伝で、前回は駒澤が二冠を制したが、今回も駒澤の中心は揺るがないだろう。なによりも昨年のレギュラー8人がそのまま残っている。中心になるのは神屋伸行、揖斐祐治らの3年生だが、島村、布施、松下の2年生トリオも力をつけている。神屋は日本インカレでハーフマラソンを大会新で制覇、いまやすっかりスーパーエースとなった。揖斐祐治、松村拓希、島村清孝も1000Mで28分台に突入して、戦力は昨年以上に充実している。
 駒澤につづくのは順天大と中央大だろう。駒澤と同じように順大も4年生が2人で抜けただけで、前回のレギュラーがそっくり残っている。駒澤は3年生が中心だが、順天は前々回の優勝メンバーである高橋謙介、宮崎展二、宮井将治の4年生が健在で、さらに入船、奥田、岩永、野口……と3年生の層が厚い。さらに有望な新入生にもめぐまれ、駒澤の連覇に待ったをかける一番手は、この「順大」だろう。
 中央大は前回の箱根を1〜3年生中心で戦って総合3位を確保した。レギュラーのほとんどが健在である。4年の板山学をチームリーダーにして、関東インカレハーフで優勝した永井順明と関東インカレ10000M4位の藤原正和らが中心になるが、ほかにも杉山智基、池田圭介、野村佳史、山口勢一郎などが急成長、層の厚くなった戦力はあなどれないものがある。さしずめ距離の短い「出雲」ならば、駒澤、順天と互角の戦いにもちこむかもしれない。
 3強につづくのが、東海、帝京あたりだろうか。前回の箱根で往路優勝の目もあった東海は柴田真一につづくエースの台頭こそないが、その柴田ぬきで全日本の出場権を獲得するなど、地味ながら不思議な底力がある。逆に帝京は全日本の予選で落選するなど、やや順調さを欠いているが、中崎、北島、谷川の主力が残っており、不気味さがただよっている。
 前回まで4強の一角であった山梨学院大は古田ら4年生の卒業で、にわかに選手層が薄くなった。カリウキだけでは苦しいだろう。神奈川大は勝間や相馬など主力が伸び悩み、いまひとつ勢いがない。あるいは早稲田や日大よりも下位に低迷するかもしれない。
 女子は今回も前回優勝の筑波大中心に展開するだろう。山中美和子、菅野勝子、さらには藤永佳子が加わって、前回以上に戦力が充実している。相手としては常連の城西大、京産大に加えて、今回はとくに立命館大に注目したい。10000Mでは学生ナンバーワンの加納由理のほか5位の中村望が健在、さらに有望な長・中距離ランナーが育ち、筑波の足もとをすくう一番手になりつつある。


IT時代の反映か? 男子は富士通、NEC
女子は沖電気宮崎が主力!

 実業団は前回から男女とも新しい潮流が兆しつつある。世紀越えにふさわしく今回は、新世紀の王座をめぐってポジション争い熾烈になるだろう。男子の前回は富士通の初優勝して、長くつづいた旭化成・ヱスビーの2強時代は終わった。
 富士通は高橋健一や藤田敦之など、中堅、若手の勢いのあるランナーが育ち、層の厚い布陣で優勝候補の一番手だろう。相手はやはり王座奪還をねらう旭化成、選手層の厚さにかけてはナンバーワンで、巻き返しも十分にありうるだろう。新・旧の王者によるマッチレースの様相が色濃いが、富士通にとっては真価が問われるレースになりそうだ。
 前回はベストでなかったヱスビーの動向も注目されるが、総体的に見てチーム力に凋落傾向が見受けられ、多くを期待するのはムリかもしれない。むしろ前回3位のNECにさらなる上り目があるかもしれない。富士通ならんでNECはともにIT産業の旗頭である。所属企業の産業界におけるポジションがチーム力を左右するというのは、それほどうがった見方でもないだろう。
 女子は今回も勢力地図は混沌としている。高橋尚子の金メダルで女子駅伝は、さらに活性化して、戦いはますます熾烈になることはまちがいない。沖電気宮崎、東海銀行、スズキ、積水化学が昨年の4強だが、今年は渋井陽子や土佐礼子の三井海上あたりも上位をねらってくるだろう。前回よりもさらに混戦になるだろう、中心はやはり沖電気宮崎ではないか。あえて沖電気宮崎を推すのは男子と同じようにIT関連産業のチームであるがゆえに、不況業種の金融や損保のチームよりも、物心ともに分厚いバックアップが期待できると判断したからある。


立命館宇治と須磨学園のマッチレースか?
高校女子

 高校駅伝の男子は前回、ノーマークにした仙台育英があれよあれよとゴールまで突っ走ってしまった。そういう意味で3カ月前の現時点で予測することはむずかしい。とくに今年の男子は地区予選の結果をみるまで、勢力地図がさっぱり見えてこない。無謀を承知のうえで、あえて挙げれば大牟田、西脇工、佐久長聖と昨年優勝の仙台育英あたりだろうか。大牟田は5000Mの高校ベストテンに谷合紘季、村上孝一、大津聖と3人も名を連ねていて、〈今年こそ……〉の期待がかかる。
 女子は今年こそ立命館宇治ではないか。昨年は期待されながらケガで涙をのんだ阪田直子と成長著しい池田恵美が3000Mの高校ランキングで2〜3位を占めるほか、ほかにも有力ランナーがそろっている。立命館宇治に肉迫するのが須磨学園である。8月の全国高校長距離の5000Mでは、藤岡里奈と田顔朋美が、立命館宇治の2枚看板である阪田と池田を押さえて、1、2位を占めた。おそらく立命館宇治と須磨学園のマッチレースになるだろう。
 〈ナオコ〉つながりで言うわけではないが、阪田直子は第2の高橋尚子になりうる素材である。とくにトラックよりロードで強く、高校生では頭ひとつ抜けた存在である。セビリアで走れなかった無念さをシドニーで晴らした高橋直子のように、阪田もケガで泣いた昨年の悔しさをバネにして、きっと快走してくれるはずだ。
 20世紀から21世紀に橋かける「ミレミアム」駅伝、今回は4年後のオリンピックを視野におさめて、第2、第3の高橋尚子に大化けしそうな有望な素材の出現に期待したいと思う。(2000/09/25)


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