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21世紀の幕あけを飾るニューイヤー駅伝は、文字通り「新しい時代」のパラダイムを探るといういみで節目のレースとなった。 2000年代に突入した昨年、富士通の初制覇によって、長くつづいてきた〈旭化成・ヱスビー・鐘紡〉の3強構造に風穴が開いたが、今年のみどころは昨年から新しく育ってきた勢力が、果たして旧3強時代にとどめを刺せるかどうかにあった。富士通を頂点に昨年台頭したNEC,コニカという新勢力がほんとうに新世紀の旗頭になれるのか。それとも旭化成、鐘紡など旧勢力が盛り返してくるのか。今大会は「駅伝の新世紀」のゆくえを占うといういみで、きわめて重要なレースだったのである。 女子駅伝の勢力図も今シーズンになって大幅に塗り替えられた。東日本の予選を圧倒的な強さで突破した三井海上が余勢を駆って全日本も圧勝した。女子の場合と同じように男子もコニカが今年になってにわかに台頭してきた。東日本の予選で昨年の覇者・富士通を4分も後ろに置いていったが、三井海上と同じように勢いに乗じて一気に頂点までのぼりつめるか。コニカの動向がいわば台風の目になっていた。 もうひとつ。今回から総距離は86.4キロから100キロに延長され、各区間の構成も大幅に変更された。たとえば第2区は最長の22キロとなり、勝負どころが前半に配されるというかたちになった。ハーフマラソンにひとしい距離の区間が新設されて、それが各チームにどのような得失をもたらすのかも興味あるところであった。
群馬といえば名物の「空っ風」だが、今年は例年にないほどの強風が吹き荒れていた。快晴にめぐまれたものの、選手たちはそれぞれ近年では体験したことのない「風」というもうひとつの「敵」を相手に苦闘していた。 吹きすさぶ強風のせいというわけではないだろうが、レースはハナから荒れ模様ではじまった。巻き返しをねらう旭化成は1区でなんと約1分遅れの19位に沈んで、あっけなく圏外に去ってしまった。新興勢力と向かって立つ旗頭として正念場を迎えているにもかかわらず、かんじんかねめで踏ん張りきれなかったために、レースは一方的な流れに傾き、3区を終わった時点でコニカ、富士通のマッチレースになってしまった。 鐘紡も同じである。1区で17秒差の8位と富士通よりも上位に付けながら、2区のエース高岡をもってしてもトップに肉薄できず、むしろ1分30秒近くも置いていかれた。これでは勢いのある新興勢力にストップをかけることはできるがずはない。 かくして駅伝新世紀の潮流を占うと節目の大レースといいながら、観戦者の側からみれば、大味できわめて単調なレースになつてしまったのである。
コースが変更になって、各陣営ともに1〜3区に主力を投入してきた。たとえば外国人選手の有力どころはすべて1区と3区にエントリーされた。1区ではトヨタのS・マイナが区間賞をとり、3区でもD・ジェンガ(ヤクルト)、Z・ガソ(コニカ)、S・ワチーラ(NEC)、J・ギタヒ(日清食品)と1位から4位までを外国人が占めた。 前半の3区間で少なくとも1分以内の好位につけられるかどうかがレースのポイントであった。好スタートをきったのはコニカであった。1区でベテランの磯松大輔ががっちりと4位につけたのが勝因のひとつである。 富士通の藤本季也は25秒の13位、これは、ちょっと誤算だったのではあるまいか。それでも2区ではエースの高橋健一が12人抜きの快走で一気にトップに立った。高橋を追ってコニカの松宮隆行が2位に上がってきた。ここまでは両陣営ともに筋書き通りだっただろう。 1区で19位に落ちた旭化成は、2区で12位まで順位を上げてくるのだが、タイム的には2分48秒差とトップからはだんだん離れてゆく。3区を終わった時点でさらにトップは遠くなり、3分34秒差、こうなると戦犯は1区の渡辺共だけでなく、2区、3区のランナーも同罪だろう。もはやチーム力自体が沈下しているとみなければならない。 勝負が決したのは3区(11.8K)だった。富士通の三代直樹が富士通のガソに1分18秒ももっていかれた。10キロ過ぎでケイレンというアクシデントにみまわれたせいもあるが、富士通にとっては大きな誤算だったろう。もしかしたら、三代はハナから走れる状態でなかったのかもしれない。ガソが5キロ=13分14秒という驚異的なペースで入ったとはいえ、1,5Kで18秒差を一気に詰められ、あとは差が開く一方だった。万全でなかったとはいえ、あまりにも精彩を欠いていた。 最終的に3区を終わった時点で富士通は18秒の貯金を吐き出し、逆に1分もの大差をつけられてしまった。せめて30〜40秒差におさまっていたら、4区、5区のランナーが健闘していただけに勝負はどうなっていたかわからない。あるいは5区の藤田敦史が逆転して、勝負は最後まできわどくもつれていたかもしれない。
コニカの勝因は全員それぞれが自分の走りに徹したことであろうか。そのなかで殊勲選手あえて1人あげれば、7区の酒井俊幸だろう。5区を終わった時点で25秒差を引継ぎ、一時は20秒差まで追われながら、最終的には48秒差にひろげてアンカーにタスキを渡した。それが坪田智夫に余裕を持たせることになり、勝利を決定づける区間賞の走りにむすびついた。 前回大崩れした中国電力の3位は健闘の部類にはいるだろう。上位2強を脅かす存在にはなれなかったが、2区から最終区まで3位をキープして安定した力を見せつけた。もともとこれぐらいの力はあるから、当然といえば当然だが……。 4位の日清食品、5位のアラコも大健闘である。6位NEC、7位本田技研、8位旭化成をふくめての4位争いは最後までもつれた。最終区での熾烈な順位争いは旭化成の寸法を測るという意味で面白かった。旭化成はここでも復活した秋吉が4位をねらえる位置まで追いあげながら、最後は置いてゆかれている。 考えてみれば旭化成の8位は信じがたい結果である。監督の宗茂は「マラソンのほうにに軸足をおきすぎたせい……」というようなことを言っていたが、果たしてそうなのだろうか? 旭化成が連覇しているとき、同じ本人が「マラソンの延長に駅伝がある」といっていたのである。もし先の言が本音だというのなら、自分たちが信じて進めてきた路線が誤りだったと認めたことになってしまう。要するに陣容の新旧交代がうまくゆかず、チームに勢いがなくなっているということなのだろう。
個人的に気分をスカッとさせてくれたのは高橋健一である。今回もいつもながらの積極的な走り、みごとというほかない。旭化成の川嶋にかわって、いまや「ミスター・駅伝」というふさわしくなりつつある。 外国人の助っ人のうちでは3キロ=7分45秒というとほうもないペースで突っ走ったコニカのガソに目をみはったが、最終的なタイムはジェンガのほうが上回った。まさに2度びっくりであった。 コニカのアンカーをつとめた坪田智夫は昨年の箱根でみせた快走ぶりが脳裏に焼き付いているだけに成長を楽しむ親のような気持ちで見ていた。トップでゴールしただけでなく区間賞というオマケまでついた。着実に個性豊かなランナーに育っているようである。 そのほか区間賞はとれなかったが、コニカの松宮隆行、松宮祐行の粘り強い堅実な走り、2区で9人抜きを演じて中国電力躍進の原動力となった尾方剛のさわやかな走りなども強く印象に残った。 それにしても三代直樹のアクシデントは思いがけなかった。苦痛に顔をゆがめ、なんども脚をたたくいたいけな姿、脚をひきずるようにそれでも前へ前へと躰を運んでゆく。観戦している私たちも胸をつかれた。
21世紀は国際化の時代である。わが国はそのために政治・経済あらゆる側面で規制緩和をもとめられているが、いまだ島国根性から抜けきれていないで世界から非難をあびている。規制するというのは自信がないことの裏返しである。 政治や経済の世界だけでなくスポーツの世界も国際化はすすんでいる。最近は駅伝でも外国選手が増えている。ところがこの世界でも規制緩和がテーマになりつつある。たとえば本大会でも2区の最長区で外国選手を閉め出している。その真意が分からない。あまりにも姑息すぎはしないか。差別だといわれてもしかたがない。男子の長距離は世界では3流の下、もはや落ちるところまで落ちている。規制してまで守らなければならないものなんて、いったい、どこのあるのだろうか。 世紀の移りとともに、過去4位が最高だったコニカがこともあろうに初制覇を果たした。男子駅伝は確実に新しい時代に突入した。当分は富士通、コニカが軸になるだろうと思われるが、今後はチーム盛衰のサイクルは短くなるだろう。たとえばコニカのように短期間でチーム力が飛躍的に向上するケースもめずらしくはなくなるだろう。もちろんその逆のケースもある。もはや旭化成のように4連覇というようなケースは遠い昔の夢物語になるように思う ☆コニカ(磯松大輔、松宮隆行、ガソ、迎忠一、松宮祐行、酒井俊幸、坪田智夫) ☆天候 快晴 気温7.1度 湿度29% 北北東の風 5.7メートル
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