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第32回 全日本大学駅伝対抗選手権大会


 充実したチーム力で ▼
 順天堂大学が悲願の初制覇 ▼


驚異の区間新記録!
ラストランを飾った永田宏一朗

 上位の実力が拮抗してくると、ちょっした展開のアヤがレースそのものを大きく左右してしまうことがある。勝負どころでミスはそのまま致命傷になってしまう。出場12回目で悲願の初優勝を果たした順天堂大、中盤まで鋭く肉薄しながら力つきた駒沢も、そのことを思い知ったことだろう。
 順天堂大、山梨学院大、駒沢大、神奈川大、中央大が、それぞれが覇権に向かって思い描いたプロセスを、ひとまとめにして粉砕したのは、あの鹿屋体育大・永田宏一郎の爆走である。
 東京から離れた九州の大学生である永田にとって、テレビ中継のある本大会は、ランナーとしての自己を表現するに最高の舞台というほかない。最後の大会となる今年は、誰にも破られない区間新記録を……。スタートラインに立つ前から敵はマヤカの区間新記録にしぼられていた。
 永田はスタート直後からぶっとばした。5キロ14分07秒、10キロ28分07秒と、驚異的なペースで一人旅……。大きなストライド、少し顎を突き出す独特のフォームで後続を1分半もちぎった。
 最初からトップ・ギアで走る永田についてゆくのか。それとも自重するのか……。一瞬の逡巡が自らの走りを狂わせる結果になったのではないか。たとえば15位に沈んだ山梨の尾池なんかはあきらかに迷っていたようにみえた。
 有力校は優勝という2文字がちらついているだけに、あれこれと思惑が先行するのも無理はない。そして永田のハイペースの飛び出しにペースを幻惑されたのである。順天堂大、神奈川大は約1分30秒遅れにとどまったが、駒沢は2分8秒遅れの8位、出雲で2位にきた山梨学院大は3分27秒遅れの15位に沈んで波乱の幕開けとなった。
 永田は後半もペースが衰えることなく、マヤカの記録をおよそ30秒も上回る41分56秒で最後のレースを飾った。区間新記録に加えてレースそのものを面白くしたといういみで、今大会の影のMVPにあげておこう。


区間ごとに新しい主役が登場
順位がめまぐるしく変転、5区までは前哨戦

 伊勢路の全日本は中盤でレースが落ち着くというのが一般的だったが、今年はめまぐるしく流れが変わった。ようやく勝負のゆくえがみえてきたのは6区からである。とくに前半は区間がすすむにつれて、次つぎに新しい主役が登場した。テレビ中継の反応のよさとあいまって、面白く見応えがあった。
 2区は法政の徳本一善が力走した。先の箱根予選会でのブレーキがよほど悔しかったのだろう。10位から一気に2位まで押しあげ、トップ鹿屋体育大に47秒差まで迫った。中央大の板山学も徳本に引っ張れるように11位から一気に3位まで順位をあげてきた。駒沢がのびず、順天堂が9位に失速するなかで、優勝に手が届く勢いを感じさせた。
 3区は駒沢の揖斐祐治が落ち着いたレースぶりで1分15秒遅れの8位から一気にトップに躍り出す。大東文化大の村田義広の走りも清々しいものがあった。最後は揖斐に遅れをとったものの4秒差の2位まで押しあげてきた。
 4区の主役は順手堂大の野口英盛、トップとの差を20秒つめ、5位から30秒差の2位まで持ってきて、トップをうかがえる下地をつくった。5区の主役は山梨学院大カリウキ、今回は粘りの走りを見せた。8位から3人抜きで5位、トップから1分35秒差まで詰めてきた。
 5区を終わった時点で、連覇をねらう駒沢大が首位、17秒遅れで順天堂大、39秒遅れで神奈川大、51秒遅れで大東文化大がつづき、1分35秒遅れの山梨学院大を含めて5校にしぼりこまれ、6区からがいわば決勝ラウンドという様相だった。


勝負どころで自滅した駒澤
箱根に持ち越された両雄対決

 勝負が動いたのは6区だった。先行する駒沢は期待のランナー・松村拓希、追いかける順天堂大は坂井隆則であった。持ちタイムでは松村に分があるが、坂井は先の出雲でも好走している。松村は出雲では1区に起用されたが8位と出遅れて、駒沢の出足をひっぱってしまった。勢いの差がもろに出てしまったのか。2.8キロで坂井が松村をとらえてしまった。最終的に中継所ではライバル駒沢に1分43秒もの大差をつけ、この時点で順天堂大の初優勝をほぼ決定的にしてしまった。
 駒沢の敗因をあげれば、勝負どころでの思わぬこの大ブレーキである。松村は出雲につづいて今大会も期待に応えられなかった。箱根では起用するのかどうか。2度あることは3度あっても、あえて起用してほしいと思う。もし起用してこなければ、陣営は心理的に相当追い込まれているとみるべきで、箱根の連覇もかなり危ういとみるべきだろう。
 神屋伸行と高橋謙介といえば、学生駅伝界の2枚看板だが、出雲につづいて今大会もデッドヒートは実現しなかった。7区を終わった時点で1分10秒も差があってはいかんともしがたい。
 高橋謙介は出雲の時と同じように落ち着いた走りでとうとう最後まで後ろを振り返らなかった。逆に神屋は突っ込みすぎて、大東文化大の秋山羊一郎の足もとをすくわれそうになるしまつ。両者の対決はまたしても実現せず、年明けの箱根まで持ち越された。


予選会あがりの大東文化大、法政大が健闘

 順天堂大の勝因は前半は遅れをとったが、層の厚い3年生たちがあわてずに自分の走りに徹したこと。チームのまとまりという点で長じていた。箱根で逆転優勝した一昨年よりむしろチーム力は上回っているとみた。
 出雲のときもそうだったが、駒沢は何かチグナグな感じがあって実力が発揮できていなかった。山梨学院大は1区で大きく出遅れながら、粘って最終4位まで順位をあげてきた。今年は底力がありそうだ。神奈川大は最終的に6位に落ちたが、終始2位から4位をキープしていた堅実性は買える。中央大は板山学ひとりが奮闘したが、中盤からがいまひとつ。2〜3年生がいまひとつ伸び悩んでいるようである。
 大健闘したのは大東文化大と法政大である。ともに箱根予選会を戦ってきたばかりだが、上位にからんで特徴ある戦いをくりひろげていた。とくに大東は3区ではトップに肉薄するなど終始上位から落ちていない。法政も2区の徳本で2位まできて見せ場をつくった。例年なら後は大きく順位を落とすのだが今回は粘っていた。シード権こそ逃したが、昨年までの法政とはちがって、地力強化されているとみた。
 ほかでは最終区で6位まであげてきた日大、地味で目立たなかったが健闘の部類、1区では11位だったが終わってみれば、いつのまにか6位にきていた。出雲につづいて今大会もいいところなく下位に甘んじた東海大、早稲田大と好対照である。


駒澤大と順天堂大、因縁の対決がいよいよ……

 本大会は箱根につながるレースである。2年前の例があるから、本大会の結果をもって箱根を占うのは早計だろう。あのとき出雲と全日本の2冠を制した駒澤が8位だった順天堂大にまさかの復路逆転負けを喫したからである。今回は奇しくも順天堂大が駒澤大と同じ立場にある。だが、今年の順天堂大は隙がないチームにできあがっている。駒澤に活路はあるだろうか? カギは2年前の貴重な経験を生かせるかどうかにかかっている。
 学生駅伝3冠を今一歩のところで阻止された2年前の悔しさを、駒澤陣営はどのように昇華しているのか。昨年、箱根を制したことで、悔しさは帳消しにしてしまったのか。もし、そうだとしたら今年の順天堂大には勝てないだろう。
 駒澤が箱根を連覇する道はただ一つ、2年前の悔しさを、しっかりと意識化することである。2年前の自分たちと同じように、今回3冠を目前にしている順天堂大を倒すことで、初めて借りを返したと考えること。監督はもちろん選手一人ひとりが、そこから出発するしか爆発力は生まれてこないだろう。


☆順天堂大学
 (岩水嘉孝、宮井将治、入船満、野口英盛、奥田真一郎、坂井隆則、宮崎展仁、高橋謙介)


総 合 成 績
順位
チーム名
記 録
1 順天堂大学 5:20:16
2 駒澤大学 5:21:42
3 大東文化大学 5:21:47
4 山梨学院大学 5:25:22
5 日本大学 5:26:35
6 神奈川大学 5:26:49
7 中央大学 5:27:38
8 法政大学 5:28:59
9 東海大学 5:29:15
10 京都産業大学 5:29:43
11 早稲田大学 5:30:53
12 鹿屋体育大学 5:31:04
13 第一工業大学 5:31:22
14 拓殖大学 5:33:58
15 四日市大学 5:41:18
16 広島経済大学 5:44:13
17 徳山大学 5:44:31
18 名古屋商科大学 5:46:40
19 関西大学 5:46:41
20 愛知工業大学 5:48:19
21 近畿大学 5:49:20
22 仙台大学 5:53:59
23 福岡大学 5:54:00
24 札幌学院大学 5:58:49
25 金沢経済大学 6:00:02


区 間 第 1 位
区間 距離 チーム名 選手名 記録
第1区 15.6 鹿屋体育大学 永田宏一郎 0:41:56
第2区 13.2 法政大学 徳本 一善 0:38:36
第3区 09.5 駒澤大学 揖斐 祐治 0:27:30
第4区 14.0 順天堂大学 野口 英盛 0:41:16
第5区 11.6 山梨学院大学 カリウキ 0:34:44
第6区 12.3 順天堂大学 坂井 隆則 0:36:08
第7区 11.9 大東文化大学 金子 宣隆 0:35:44
第8区 19.7 順天堂大学 高橋 謙介 0:59:56
      

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