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学生駅伝は今年もおもしろい。昨年上位の順天堂大と駒澤大が頭ひとつから首ぐらい抜けているものの、3位以降は大混戦というのが大方のみるところである。出雲駅伝は奇しくも、それを実証する結果になった。 出雲駅伝といえば、前半で勝負がきまるというのがジョーシキだったが、今年はなんと4区の半ばまで8校がトップ集団を形成するというしまつ。最後は順天堂大と駒澤大が実力で抜け出したが一瞬たりとも眼をはなせない熾烈な闘いがくりひろげられた。 今年は例年にまして各大学の実力が伯仲している。たとえば本大会にエントリーした各チームの1万Mの平均タイムをみると、29:04〜29:35までの間に、駒澤、神奈川、中央、大東文化、順天堂、山梨学院、帝京、法政が名をつらねている。31秒差のあいだに8校がひしめいている。30秒ぐらいの差なら誤差の範囲内で、実力に有意差があるとは考えられないのである。 さらに大混戦に拍車をかけたのは「コース変更」である。今年から出雲大社正面鳥居前をスタート、出雲ドームをゴールとする6区間44キロ(昨年までは43.1キロ)に変更された。とくに大きな変更があったのは1,3,6の3区間で、1区は7.2kmから8.0km、3区は5.7kmから8.5km、6区は11.5kmから10.0kmになった。 中盤の3区に8.5キロの区間が設けられたことによって、勝負のポイントはこれまでとはひと味ちがったものとなった。つまり1区、6区だけでなく、3区もエース区間となり、二番目に長い3区のデキがレースのゆくえ決定ずけることもある。さらに前半は多少遅れてたとしても、実力さえあれば、3区からもういちど「ヨーイドン」で巻き返しができるようになったというわけである。観戦するレースとして、さらに面白くなったといういみで、新しい区間編成は隠れたヒットというべきか。
3区を終わった時点でもレースのゆくへははっきりと見えてこなかった。神奈川大を筆頭にして50秒差になかに中央大、法政大、順天堂大、駒澤大、山梨学院大、日本大、京都産業大、大東文化大の8校がはいっていた。 レースが動き出したのは4区の半ばあたらからで、ようやく順天堂大、駒澤による一騎打ちの様相がくっきりとしてきたのである。両雄対決になったのは、やはりスピード力において、両校に一日の長があったからだろう。駒澤大は6人中5人までが1万=28分台、順天堂大は6人中4人が5千=13分台を記録している。出雲は1区間あたりの距離が短いだけにスピードが決め手となったようである。 それにしても順天堂と駒澤……、ともにほぼベストメンバーでレースにのぞんできた。最後は順天堂大がレース巧者ぶりを発揮したが、まさにがっぷり4つの正攻法の闘いぶりは、いかにも両雄対決にふさわしく、迫力十分であった。 1万と5千の平均タイムでゆけば、駒澤大はわずかながら順天堂大を上回っているのだが、現実のレースでは順序は逆になった。トラックとロード別物、今年もロードでは順天堂が強そうである。
健闘したのは神奈川大である。インカレ1万でトップと差のない7位にきた吉村尚悟が1区で2位と快走がひかる。完全に流れにのって2、3区ではトップを走りつづけた。区間賞こそないが各ランナーともに堅実に上位をキープ、近年の低迷を断ち切るかのような爽やかな走りであった。日本大も終わってみるといつのまにか5位にきていた。どこといってとらえどころのないチームである。中央大と帝京大がコケたせいで着をひろったにしても勢いのある法政を押さえこんだあの粘りは、いちおう評価すべきだろう。 期待を裏切ったのは中央大と帝京である。両校ともにトップにからんでも何の不思議もないチームである。帝京は1区秋山の14位で早くも沈んだ。頼みとする2区の中崎幸伸(インカレ、ハーフマラソン優勝)、3区の北島吉章も区間10位というブレーキ、京都産業大にも負けるようではどうしようもない。 6位の中央大はそれでも前半は3区花田俊輔の大健闘でトップにからんでいた。ところが4区、5区がにわかに失速して後退、それにしてもアンカーのエース藤原正和までもが区間6位と伸び悩んだのはどういうわけか。 関西勢では最終的に9位だったものの、京都産業大が上位と差のないところでレースをしていた。帝京を食い、大東文化あたりと競っていたのは、まあ、そこそこ健闘というべきだろう。
1区はインカレ5千の再戦というべきか。入船満(順天堂)、黒田将由(法政)、池上誠悟(中央)、山本功児(京産)、藤井周一(日大)、橋ノ口滝一(山梨学院)などなど。順天堂の入船満と駒澤の隠れたエース内田直将のつばぜり合いと思われたが、両者ともにたがいを意識して牽制に終始してしまったようだ。超スローになったのはこの二人の責任というべきだろう。アブドゥラ・バイ(第一工業大)がチョロチョロと集団を出たり入ったりと何やら不穏なレース展開、これもスローのせいだろう。 駒澤と順天堂は共倒れしたのとは裏腹に、快走したのは神奈川の吉村尚悟である。積極的に前に出る姿勢に好感が持てた。2位に滑りこめたのは、前半からペースをにぎろうする意欲が実を結んだといえる。同じ意味で3位にきた山梨の橋ノ口も評価できる。6キロ付近でアブドゥラ・バイがスパートしたとき、果敢に追いはじめた反応のよさが好走をもたらしたようである。 それにしても……。1万=28分台のランナーが5人も顔をならべていながら、同程度の実力のアブドゥラ・バイごときに、ぶっちぎられてどうするのか。何ともだらしがない。 2区はトップから8位までが7秒のあいだにタスキを渡すというまさに大混戦の様相であった。そんななかで、みどころは奥田真一郎(順天堂)と松村拓希(駒澤)の熱闘。1区で9位と出遅れた順天堂の奧田は2,7キロ付近でトップ集団にとりつき、同じく7位と出遅れた駒澤の松村と激しく区間賞争いを展開した。まさに大集団のなかでの息づまる神経戦というべきで、このレースの隠れた見どころのひとつであった。
新しいエース区間の3区は徳本一善(法政)と野口英盛(順天堂)の意地の張り合いというべきか。「ブロンドの超特急」といわれるあの徳本一善は2区の今津誠が途中で立ち止まるというアクシデントがあり、タスキをうけたのはトップから29秒遅れの10位であった。1,5キロ地点で29秒差を挽回して、一気にトップ集団にとりついたのは、インカレ・チャンプの意地というものか。 徳本は9人で形成すトップ集団を終始引っ張りつづけた。ど派手に自己主張しつづける徳本を追ったが、外見的にはいかにも地味な野口であった。スピードランナーらしくストライドをのばす徳本をテンポ良くピッチをきざむ野口がたんたんとした表情で追ってゆく。いかにも好対照でおもしろかった。 野口と徳本の争いは、徳本が区間賞を獲って決着がついたが、3区の順位争いは意外な結末が待っていた。徳本は29秒差を一気に詰めたのがこたえたのか、さすがにラストでは伸びを欠いた。最後のスパートで躍り出たのは、意外にも飯島智志(神奈川大)と花田俊輔(中央)であった。タイム的にはるかに劣っていても、展開によっては見せ場をつくれる。そこが駅伝のおもしろさのひとつでもある。
4区で順天堂と駒澤の一騎打ちとなったレースのゆくえは岩水嘉孝(順天堂)と神屋伸行(駒澤)のアンカー勝負にもちこされた。前半は集団によるめまぐるしい順位争い、終盤はがっぷり四つに組んでの力相撲である。演出効果満点の大会である。 スローペースの前半はたがいに腹のさぐりあい。6キロをすぎた後半はスパート合戦という展開……、最終6区は今大会の最大のみどころであった。 神屋の力感あふれたダイナミックな走り、岩水のいかにも柔らかな流れるようにリズミカルな走法……。学生界を代表するにふさわしい2人の走りにしばらくみとれてしまった。昨年は3区を区間新で制した岩水は、よほど自信があったのか。8.5キロでスパートしてからもその横顔には涼しげな笑みがもれていた。絶好調のかれは顔を左右に振ってあえぐ神屋を置き去りにして順天堂に勝利をもたらした。 インカレで1万、5千、3千障害の3本をこなすという過酷な条件を背負いながら、岩水はアンカーとしての責任をきちっと果たした。こういう骨太なランナーがいるから順天堂は強い。 スピード勝負なら順天堂というのは、あるていど予測された結果である。長いところに実績のあるランナーの多い駒澤が、いかに巻き返してくるか。復活気配の神奈川が両雄を追う1番手になりうるか。中央大、法政に上積みがあるのか。伊勢路の全日本をしっかりみまもりたい。 ☆総合成績の詳細版は ここ をクリック!
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