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第78回箱根予選会(正式には東京箱根間往復大学駅伝競走大会予選会)は34大学がエントリ、6大学の出場枠をめぐって、近年まれにみる熾烈な闘いがくりひろげられた。今大会の注目は前回30秒差に10位に泣いてシード権を失った早稲田大学と、2区で途中棄権した東海大の動向であった。東海大の場合、たしかにアクシデントにはちがいないが、あれは監督、コーチの判断ミスによるもので、同情の余地はまったくない。大ブレーキを起こした選手に責任はなく、非難されるべきは、体調の悪いランナーをあえて起用した監督とコーチ陣である。 強豪早稲田がどんなレースぶりで勝ちあがってくるのか。そして落ちるところまで落ちた東海大学が底を打ったのかどうか。きっと箱根の後遺症によるものだろう。東海は6月の全日本選手権の予選で、なんと12位という体たらくで、あっさり落選してしまった。皮肉にも今回は箱根の常連で伝統を誇るこの2大学が、次つぎに台頭する新勢力の寸法を測るモノサシの役割を担うことになったのである。
駅伝も自然相手の競技である。なぜ、いまごろ、そんなアタリマエの台詞をあえて繰り返すのか。結論から先に言おう。今回の箱根駅伝予選会の走破タイムが、あまりにも良すぎたからである。 今回1位の早稲田大学から15位の青山学院大学までが、前回6位の予選通過タイムを上回り、個人成績を見ても59分台、60分台の選手が30人もいる。昨年は60分台以下をマークしたのはわずか3人だったが、今年は30位までが60分台で走破し、そのうち10人が59分台をマークしているのである。 昨年以上に実力が伯仲、予選会箱根をめざす各大学のレベルが年ごとに底上げされているのは事実だろうが、今年の場合はなぜか額面通りには受けとれないのである。 好記録の遠因はコース変更と当日(10月20日)のい気象条件にあるのではないか。予選会のコースは前回から大井埠頭コースから立川市の昭和記念公園に移されている。前回は公園内の周回コースで行われたが、今年になってさらにスタート地点が一般道に変更された。前回は公園内のレースではスタート直後がかなり混雑した。スタート地点を立川警察署前にして、一般道をとり公園内へ……というようにコースが変更されたのは混雑緩和にねらいがあった。スタート時間も陽ざかりの時間から午前8時30分に変更された。さらに、もうひとつ……。当日10月2日は朝から秋晴れの爽やかな天候にめぐまれた。気温12度、湿度76%、北東の風0.3M……というから、長距離には絶好のコンディションである。 長距離走は距離が同じでもコースや天候、地面のコンディションによってタイムはかなりちがってくる。1人あたり30秒から1分もちがえばどういうことになるか。10人では軽く5分から10分の誤差が生じてくる。今回の記録についていえば、はっきりいってバブルの度合いがかなり濃厚だとみる。
箱根予選会といえば、このところ6年連続で外国人留学生がトップを占めている。1995年はビズネ・ヤユ・トゥーラ(亜大)、1996-98年はダニエル・ジョエンガ(流経大)、そして1999-2000年はジョン・カーニー(平成国際大)である。昨年は本戦の2区でも見せ場をつくったジョン・カーニーと同僚のムヒアが先頭をひっぱるかたちで今年のレースも始まった。 5K=14:49といえば、ややスローペースの展開である。そのせいかカーニー、ムヒア、尾田、藤原などを中心におよそ20人ぐらいがトップ集団を形成して中盤まで進んだ。全般的な印象としては、早稲田のランナーの積極性が目についた。 トップ集団の背後では、各大学の戦術が見え隠れしていた。拓殖大は前半勝負に出たのか、赤い紅いユニフォームが前のほうでちらちらのぞいていた。日本体育大学は団体走に徹していた。そして専修大勢力はスローの展開にもかかわらず前に出てこない。後半勝負という作戦が透けてみえた。5キロ通過時点ででは拓殖大、早稲田、亜細亜、関東学院、東洋、日体とつづき、専修はなんと12位という下位に甘んじていた。各校それぞれに思惑がはっきりと読みとれて面白かった。 各大学のエントリー選手の10000Mの持ちタイムからみて、トップグループは拓殖大学、早稲田大学でまずは当確、続いて専修大学、東洋大学、東海大学が有力、最後の一つを日本体育大学、国士舘大学、関東学院大学、國學院大学の4学が激しく争うだろう。昨年台頭して國學院大學と平成国際大学はかなり苦しい……。時評子のそういう予測は、おおむねではくるっていなかったが、中盤から後半にかけて意外な展開が待ち受けていた。
先頭集団は7K付近でバラけはじめ、カーニーとムヒアが抜け出し、尾田がけんめいに食いさがる。カーニーは15Kを44:03秒というペースでトップに立つと、やすやすと後続を引き離し、そのままゴールにとびこんだ。所要タイムは59:03だが、一昨年の59:22秒、昨年の59:17秒を上回り、3年連続で記録を更新した。背筋痛をかかえていたが、トップを譲ることがなかった。それは学生ナンバーワンの意地というものだろう。 総合成績では早稲田大学が断然のトップで汚名を濯いだ。個人で4位に入った原田正彦をはじめ6人が59-60分台をマーク、15キロでトップに立ってそのまま押しきった。10人の平均タイムが60:47秒というから文句のつけようがない。 2位には日体大がとびこんだ。終始団体走に徹していた同学はどのチェックポイントでも10人通過をどこよりも速くクリア、中盤から後半にかけて、まったく危なげなかった。 3位の亜細亜大学は大健闘というべきだろう。今年はかなり苦しいとみていただけに3位はみごと。5Kで3位という好スタート、10K-15Kでも3位をキープして最後まで粘りこんだ。低迷のつづく東海大学と関東学院は終始5-6位というボーダーライン上をさまよっていたが、最後は底力で圏内にとびこんできた。 全日本の予選をトップで通過した専修大は後半勝負に徹したのが成功したようである。15K地点でもまだ8位と出遅れていたが、最後の5Kで一気に5位に押しあげてきた。確実に地力のあるチームに育っている。
意外だったのは拓殖大学と東洋大学である。拓殖大は10Kまでトップに立ちながら後半失速した。15Kでは4位に落ち、最終20Kではなんと7位に沈んでしまった。かんじんかなめのところで踏ん張れなかったのである。前半から突っ込んだのが裏目に出たというよりも過信があったのではないか。今春の箱根で大きく崩れたものの実力のある同学は、6月の全日本の予選でも法政、早稲田を破って3位で通過している。復調の兆しをみせていただけに意外な結果である。箱根への道が断たれたからには、伊勢路の全日本で箱根出場組に一泡吹かせる気概をみせてほしい。 石川末広君の東洋大も悲願が果たせなかった。実力からすれば、軽く予選通過できるはずだったと思われるだかに、10位落選は番狂わせとみていいだろう。 トップで通過すると予測された拓殖が苦杯をなめ、とても当選はおぼつかないだろうと思われた亜細亜が大健闘する。各大学の実力はますます接近してきていることの証左というべきか。平成国際大が残れなかったのは、全体が底上げされてしまい、昨年のようにカーニーとムヒアでぶっちぎり、貯金をつくれなかったせいだろう。 かくして早稲田大学、日本体育大学、亜細亜大学、東海大学、専修大学、関東学院大学の6学が出場権を獲得した。それぞれの走破タイムは過去最高レベルにある。タイム=実力とはいえないが、今回の記録が「バブルだった」と揶揄されないように、本戦までに最高のコンディションをつくってもらいたい。
個 人 成 績
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