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大八木弘明のスーツ姿は意外とよく似合っていた。いままでジャージ姿のイメージしかなかっただけに、おやっ……と眼を奪われた。新鮮な感じがした。 それにしても……。もともと几帳面な性格なのだろうが、レース中にもかかわらず、なんどもかインタービューに応じていたのは、あとから思うと.、あれは余裕の裏返しだったのかもしれない。 大八木弘明といえば高校(福島・会津工)卒業後、ひとたびは実業団(小森印刷?)で走っていたが、どうしても箱根駅伝を走りたいという思いが募り、川崎市役所に移って、働きながら駒大の2部に入学している。長距離ランナーとしてめきめきと頭角を現したのは夢が手の届くところにあったからだろう。 箱根駅伝には3回出場している。箱根で優勝したい……と強く思った。1年のときは山登りの5区で区間賞、2年からは華の2区に起用されるようになり、その年は区間5位におわったが、翌年には区間賞、駒澤大総合4位躍進に立役者になった。4年のときはすでに28歳になっていた。年齢制限(27歳が上限だった)のため大会には出場できなかった。優勝には手がとどかないままに卒業している。 箱根にかける思い入れになみなみならぬものがあるのは、きっとそのせいだろう。監督に就任した今回、大八木の眼中にあるのは「箱根駅伝4連覇」だろうが、それだけに意気込みはハンパではない。 箱根の前哨戦ともいうべき今大会も、盤石の体勢で本気で勝ちにきている。例年とは比べものにならないそのテンションの高さは、齋藤弘幸や本宮隆良のボウズ頭にも現れている。 スーツ姿でテレビに登場した八木弘明、落ち着いたそぶりで応答していたが、まるで笑いをけんめいにかみころしているかのようだあった。おそらくレース前からよほどの手応えがあったのだろう。
1区がすべてであった。 今年は各チームともに前半重視の布陣でのぞんできたが、レースの大勢は早くも1区でみえてしまった。観戦するレースとしてはものたりなさを否めないのだが、それはテレビの前にいる私たちの勝手な理屈だろう。 駒澤をめぐる攻防がどのようなかたちで進展するのか。出雲を制した日大、3位の中央、昨年の覇者・東海大あたり、さらには日本体育大、順天堂大、大東文化大などが、どのように駒澤を包囲するのか。興味はもっぱらそのあたりにあった。 日体の鷲見知彦、山梨の森本直人、順天の1年生・松岡佑起らがひっぱる展開でレースは幕開け、1キロ=2:45といういつもよりはハイペースで進んだ。3キロすぎで立命館の田子康宏が出てきて、トップはめまぐるしく入れ替わる。そして5キロをすぎて駒澤の佐藤慎悟が先頭にならびかけてきた。リズミカルな走り、みるからになかなか調子が良さそうである。 意外だったのは大東である。出雲の3区では区間2位と好走した古川茂は7キロ付近で先頭集団から脱落、中央学院とともに早くも圏外に去った。 候補の一角にあった中央の山本亮、10km手前でじりじりと遅れはじめたのも意外であった。中央陣営にとっても1区の遅れは予想外だっただろう。 レースが動いたのはその10km手前であった。駒澤の佐藤慎悟が集団を割ってするすると飛び出した。虚をつかれたのか誰も追いかけようとはしない。差は一気にひろがった。かくしてレースの主導権は1区で駒澤の手に落ちたのである。出雲でモカンバにおいてゆかれて屈辱を味わった佐藤、勝負への執念をみる思いがした。 佐藤にくらいついたのが京都産業大の井川重史である。スピードランナーがずらりと居並ぶ1区で、6秒遅れの2位は大健闘といえるだろう。
1区を終わって東海は遅れること11秒、山梨、順天も25〜26秒のところにいた。ところが2区にエースのサイモンを配してトップをねらっていた日大は、なんと1区で48秒遅れの9位、中央も1分以上遅れて15位に沈んでしまった。かくしてサイモン、上野裕一郎というエースを配して奪首をもくろんでいたであろう両校は、流れにのりそこない、圏内に順位を押し上げてくるのがやっとというありさまであった。 サイモンは3.5km地点で山梨、日本体育大、順天堂を一気に抜き去り、6.4キロでは京産、東海もまとめてとらえ、2位まであがってきた。 上野裕一郎もハイペースで追いあげ、まさにごぼう抜きで15位から5位に順位を押しあげてきた。 だが……。駒澤は1区の佐藤慎悟の快走で、2区のボウズ頭の齋藤弘幸までもがすっかり流れにのってしまった。サイモンで追いかけてきた日大をも29秒差でしのぎきったのである。 エースでトップを奪えなかったところに日大がいまひとつ流れに乗りきれない要因があった。それでも日大は3区の武者由幸が好走して19秒差まで迫ってきた。だが駒澤はあわてない。4区にはエース格の田中宏樹を配していた。田中は追いすがる日大を一気に突っ放して、中継点では55秒という大差をつけてしまったのである。かくして勝負は決し、5区以降は駒澤のビクトリーランになってしまったのである。
後半の興味はむしろシード権争いにしぼられてしまった。7区を終わったところで4位の日本体育大と7位の神奈川大まで35秒、8位の山梨学院までは約1分、5校が3つの椅子を争っていた。 8位の山梨はややおいてゆかれているが、モカンバならば1分ぐらいならば十分にとどく。4位の日本体育大学、5位の東海大学、6位の順天堂大学、7位の神奈川大学、8位の山梨学院大学、優勝争いとは無縁のシード権争いが注目にあつまった。箱根の本戦を占いという意味でも見どころ十分……。 混戦の主役はやはり山梨、モカンバが台風の目になった。2.9kmではやくも神奈川をあっさりとらまえてしまう。4km地点では4位争いをしている東海の一井祐介、日体の保科光作、順天堂の今井正人をまとめてとらえ、一気に4位まで押しあげてきた。まず当確は1校当確である。5位には後半しぶとくねばった順天堂がとびこんだ。最後の6位には日体がようやく粘りきった。東海はここで2つ順位を落として8位、前回の覇者ながら、あっさりとシード権を失った。 駒澤の優勝はライバルの自滅に助けられたという側面もないわけではないが、布陣にまったくアナというものがない。7人のランナー全員が区間4位以内をキープしているのである。勝つべくして勝った。大八木監督が笑いをかみ殺していたようにみえたのは、きっとそのせいなのだろう。 本大会をみるかぎり、箱根4連覇に向かう駒澤には死角なし。選手層が分厚く、戦力も充実、なによりも勝とうとする意欲が他校を圧している。 駒澤を追うのはさしずめ日大、中央、東海あたりだろうが、現状ではちょっとおいてゆかれたかんじがする。いずれもチームとしてのまとまりがいまひとつで、なにかちぐはぐなのである。あと2ヶ月でどのように立て直してくるのだろうか。なんとか箱根をおもしろくしてもらいたいと思う。(2004/11/08) ★開催日:2004年11月07日(日) 熱田神宮西門前→伊勢神宮内宮宇治橋前 8区間 106.8キロ ★天候:出発時 晴 気温17.6度 湿度62% 北東の風1.0m ★駒澤大学(佐藤慎悟、齋藤弘幸、本宮隆良、田中宏樹、柴田尚輝、村上和春、糟谷悟、塩川雄也)
区 間 最 高
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