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大山美樹(三井住友)と小川清美(京セラ)…… まさか昨年のアンカー勝負がそっくり再現されようとは夢にも思わなかった。前回は京セラの小川を大山が2秒差で追う展開で最終区が幕あけた。今回は大山が先行、小川が13秒差で追っかける。レースの流れとしては5区から急追してきた京セラに勢いを感じる雰囲気であった。 関西と関東の覇者が、がっぷり四つの組んだマッチレースの伏線は5区にあった。 4区までの展開からいえば、昨年の覇者・三井住友海上の強さがきわだってみえた。2位の資生堂に32秒、ライバルというべき京セラには51秒という大差をつけてしまっていた。もうひとつのエース区間というべき5区は土佐礼子、6区は大山美樹という布陣からすれば万全の体勢である。もはや三井住友の圧勝ムード濃厚、今年は観戦するレースとしては、いささか盛りあがりを欠くレースだったなあ……と、生あくびを噛み殺していた。 ところがである。 5区の中盤をすぎてレースはにわかに緊迫してきた。京セラは原裕美子が2.8Kmで資生堂の加納由理をとらえ、三井住友の土佐礼子をひたひたと追い始めたのである。タスキをもらって3:06ではいった土佐、後続をちぎって連覇を確かなものにするだろうと思われたのだが、5Kmをすぎて1k=3:30……と、信じられないほどのペースダウン。流れは一変した。 口を半開きにしてあえぐような吐息をもらす土佐、ピッチはイメージ通りにはあがらない。追ってくる原裕美子も口をひらいて苦しそうな面立ちだが、足どりはしっかりしている。6km通過の地点で30秒差、9kmでは20秒……、ここまで差が詰まれば追っかけるほうは勢いづく。京セラ陣営はにわかに色めき立った。 中継点ではついにその差はは13秒……。かくしてひとたび三井住友海上にかたむいていた勝負の流れは呼びもどされ、最終6区のアンカー対決にゆだねられたのである。
今年の女子駅伝はいまひとつ盛りあがりを欠いていた。 なぜか? かっとび娘の福士加代子に元気がないからである。故障をかかえていてオリンピックも苦杯をなめたが、秋の駅伝シーズンになってもいまだ一走もしていない。本大会も出るには出てきたが本調子には10ほど遠い状態である。 見どころといえば三井住友に昨年惜敗した京セラがどのようにチャレンジするか。その一点にしぼられていた。ところがチャレジャーの京セラが後手を踏んだ。 1区〜2区の攻防はレースのゆくえを方向づけるのだが、 早くもここで三井住友と京セラは明暗を分けた。 第1区は大平美樹(三井住友)と佐藤由美(資生堂)がひっぱる展開、1km=3:26というゆったりした入りだったが、ペースは少しづつあがって、京セラの期待の星・吉野恵は5Kmで振りきられた。 最後は資生堂、三井住友の争いになるかと思いきや、積水化学とスズキが割りこんできた。おやおや……と眼を見張ったが、積水の上野理恵、スズキの松岡範子といえばもともとトップクラスのランナーである。いかにも実力派のベテランの走りというべきか。 問題は2区である。 1区で10秒差の4位につけていた三井海上の石山しおりが快走、一気にトップを奪って2位の資生堂に逆に10秒の差をつけてしまった。終わってみればなんと区間新記録の更新というオマケつきである。1区のヘコミを2区でたちまちリカバーしてしまうところはさすがというべきだろう。逆に京セラはここで29秒もおいてゆかれ、前半はすっかりリズムにのりそこなってしまった。
3区10kmといえばエース区間である。勝負の流れを決定づけるという意味では11.6kmの5区よりも重要なポイントになる区間である。 ところが今回はなんとここにケニア人が大挙して出てきた。ワゴイやワンジル、ワンジク……。日本人で目ぼしいところといえば渋井陽子、坂本直子、阿蘇品照美、弘山晴美、小鳥田貴子、小崎まり、山中美和子……と名前をあげれば、そこそこの顔ぶれがそろっているが、半分はもはやピークをすぎた選手、さらに故障上がりも多く、みんな本調子を欠いていた。渋井陽子にしても調子はいまひとつ、本来の活きの良さが影をひそめていた。 それにしても……。 ケニア人が7人もいた。エース区間を助っ人外人にゆだねるというのは、いったいどういうことなのだろう。そのケニア人にあっさり区間賞をもってゆかれるようでは日本女子の長距離も底の浅さがみえってしまった。 渋井は区間4位の凡走に終わったものの、トップをまもり自分の役割だけはちゃんと果たしたのはさすがというべきだろう。京セラの阿蘇品は渋井と同タイムにおわり、秒差の29秒は持ち越しになる。 4区は4.1キロと2区とともに短い区間だが、今年の三井住友はこういう繋ぎの区間で無類の強さを発揮した。岩元千明が快走、ここで2位以下に大差を付けてしまった。 3区や5区の長丁場よりも繋ぎの区間に力のあるランナーを配することのできるチームは強い。三井住友連覇の殊勲者としては、まずアンカー・大山美樹の勝負強さをあげなければなるまいが、小生はむしろ繋ぎの区間をしっかり走った石山と岩元を押す。
4区まで後塵を拝していた京セラは前述のように5区の原裕美子の激走で13秒差まで追いあげ、大山美樹と小川清美の因縁の対決になるのだが、観戦者の側からすれば最後まで眼の離せない展開、なかなか心憎い演出である。 京セラの小川にしてみれば昨年の汚名を濯ぐ絶好のチャンスである。懸命に大山を追っかけ3.4kmでついに捕まえた。 だがそこから大山は味のある走りを見せてくれた。小川にしてみれば一気に行きたいところだが、大山はいちどたりと抜かせなかった。きびしく併走しながらも相手を先にゆかせない。そこに大山の勝負師根性がみなぎっていた。 そして……。 長良川をわたったところで大山はスパート! 差はじりじりとひろがった。さすがの小川も、いっぱいいっぱいでもう追いきれなかった。大山の勝機を見る眼のたしかさ、それはもって生まれたものなのだろう。 アンカー勝負を制して2度も三井住友に優勝をもたらした大山美樹、トラックでも最近は力をつけているが駅伝ではめっぽう強い。その勝負強さは昨年第一線から退いた坂下奈穂子に通じるものがある。彼女にとって今回は新「駅伝娘」の襲名披露のレースになったようである。
京セラの敗因をあげれば、すでにのべたが、やはり前半リズムに乗れなかったせいだろう。2年つづけてアンカー勝負に敗れた。同じ選手が同じパターンで敗れたあたり、チームとしてどのように考えるのだろうか。 健闘したのは4位のワコールか。3区に福士を使わないで4区を終わった時点で7位につけていたのは上出来である。福士加代子は5区に登場、本調子にはほど遠い走りだったが、順位を2つあげて5位までおしあげてきた。後方から追い上げて一気に抜き去る走りは健在である。悪いながらも区間5位でまとめるあたりはさすがというべきだろう。あの屈託のない笑顔もよみがえった。復調の兆しはみえた。次回は完全復活の走りを期待したいものである。 ほかではホクレンの12位は大健闘の部類ではないだろうか。 期待を裏ぎったのは第一生命か。故障者の出現などで万全の体勢でのぞめなかったのならまあしかたがないだろう。 期待のスズキも前半は好ポジションにつけていたが、後半は息切れしてしまった。コマが2枚ほど不足しているようである。 三井住友海上の強さはきわだっている。選手層の厚さもぬきんでている。三井住友時代は当分ゆるぎそうにはない。対抗馬をあげれば、やはり大森国夫監督のひきいる京セラか。2度あることは3度ある……という警句をのりこえて、果敢にチャレンジしてほしいものである。(2004/12/12) ★開催日:2002年12月12日(日) 岐阜県/長良川競技場発・着 6区間42.195km ★天候:晴れ 気温13.3度 湿度40% 北東の風0.7m(12時現在) ★三井住友海上チーム (大平美樹、石山しおり、渋井陽子、岩元千明、土佐礼子、大山美樹)
区 間 最 高
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