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2004-05 駅伝時評エピローグ

人気衰えぬ「駅伝」よ、いったいどこへゆく?
箱根を中心に、今シーズンも熱く盛りあがったが……


駅伝ブームの到達点!
アテネを制した野口みずきの快挙! 

 アテネオリンピックで野口みずきが優勝!
 小柄な体躯でストライドを伸ばす走法からして、アップダウンの激しいアテネのコースでは不利だろうというのが大方の見方であった。ところが……。鍛え上げた強靱な筋力で彼女はあっさりと過去の常識をくつがえしてみせた。マラソンランナーとして絶頂期にある者の地力というべきだろう。

 高橋尚子につづいて日本女子はオリンピックのマラソンで2連覇を達成、女子に関するかぎりマラソン王国としての地位をまもった。今シーズンのロードは「ポスト野口」を占うといういみで日本女子にとっては注目すべきシーズンであった。
 長距離ランナーの選手生命というものは、そんなに長くはない。オリンピックが一応の到達点とみるべきだろう。高橋尚子の例をひくまでもなく、野口みずきもアテネが第一線アスリートとしてのゴールだったとみなくてはなるまい。
 そんなわけで今シーズンのロードは4年後の北京をにらんでのスタートである。新勢力の台頭があるのか、ないのか。4年後のJapanを背負うことができるスケールのデカい素材が現れてくるかどうか。そのあたりがみどころであった。
 たとえば高橋尚子がシドニーを制した年、ちょうど野口みずきは注目される新鋭として登場していたのである。女子のマラソンに関するかぎり、日本はまだかろうじで世界で戦えるレベルを保っている。高橋、野口に匹敵する潜在能力あるランナーが果たして出てくるかどうか。興味はまさにその一点にあった。
 男子の場合も同じである。男子マラソンはアテネでもふるわなかったが、昨今の駅伝ブームを背景にして、日本の長距離の底辺がひろがり、若い力が育ってきているのか。いわば4年後を占うシーズンというべきであった。


男子はコニカミノルタ、中国電力が死闘!
女子は三井住友海上が王者の貫禄!

 実業団は奇しくも男女とも2強対決となった。
 男子は昨年の覇者・中国電力と4連覇の夢やぶれて王者奪還をねらうコミカミノルタが最後まではげしくトップ争いを演じた。中国電力が4区を終わって1分33秒も遅れをとったとき、もはやコニカミノルタの勝利は動かぬものと思われたが、昨年は優勝の立役者となった佐藤敦之がまたしても快走、わずか8秒差まで迫ってきたのである。
 勝負はアンカーにもちこされ、最後はコニカミノルタが先んじたが、昨年の口惜しさが生きたというよりも、終始さしたる誤算もなく順調にレースを運んでいたリズムによるものだろう。
 優勝したコニカミノルタはエース坪田智夫を欠いていた。いまのコニカミノルタには大駒落ちで勝ってしまう選手層の分厚さがある。中国電力も選手層の厚さでは負けていない。男子駅伝はまだしばらくはコニカミノルタと中国電力の両雄を中心にして、回ってゆくことになるのだろう。
 駅伝といえば九州、たとえば「九州一周駅伝」が象徴するように九州は駅伝王国といわれてきた。だが昨今は九州勢の地盤沈下がつづいている。今回は九電工がようやく10位、かつての王者・旭化成はなんと15位に沈んでしまった。一昨年は4位にまであがってきて古豪復活の兆しがみえたが今年はなんと15位、まるで信じられない思いである。
 女子も三井住友海上と京セラ、昨年のアンカー勝負がそっくりそのまま再現された。レースの流れはまったく男子のケースと同じ、三井住友をコミカミノルタ、京セラを中国電力になぞらえればいい。4区までは三井住友の圧勝ムード、ところが5区で京セラは原裕美子の快走で13秒差までつめてきたのである。京セラは同じパターンでまたしても敗れたが、最大の敗因はやはり前半出遅れてリズムを欠いてしまったせいだろう。ミスをしたところが負ける。それが実力伯仲時代の駅伝の傾向である。
 今年の女子駅伝がいまひとつ盛りあがりを欠いたのは、福士加代子に元気がなかったからであろう。駅伝のために生まれてきた感のある「かっとび」娘も故障には勝てなかったようである。故障をかかえてのオリンピックで苦杯をなめ、秋の駅伝シーズンになっても姿をみせず、ワコールは北陸駅伝の連覇がとぎれてしまった、一走もしないまま全日本に出てきたが、やはり本調子にはほど遠い状態であった。それでもワコールは三井住友、京セラ、資生堂の3強につづいて4位に食い込んできた。福士のワンマンチームから脱して着実に力をつけつつあるようだ。


学生2冠の王者・駒澤の強さが際だつ!
女子は立命館が今シーズンも2冠達成

 日本の男子の長距離はふるわない。たとえばヘルシンキの世界陸上に長距離では1人しか派遣できないのをみても凋落のありさまは明らかであろう。
 世界では3流国でも、箱根駅伝を走れば1流の長距離選手である。そういう錯覚が男子の長距離をダメにしているといううがったみかたは、あるいは的を射ているのかもしれない……と思うようになった。
 駅伝のメインイベントというべき学生駅伝も低レベルでの実力伯仲で、なんだかヤヤコシイ様相を呈してきた。
 出雲、全日本、箱根の3大レースが脈絡をたどれなくなってきたのである。プロローグでのべたように出雲→全日本→箱根というステップで学生駅伝をとらえられなくなってきたのである。最後の箱根をめざす顔ぶれのなかで、古豪といわれる早稲田、山梨学院、大東文化という伝統校が予選会に回り、箱根シード組のなかでも、東洋と法政は全日本への出場権がなかったのである。
 今年も分厚い布陣をほこる駒沢の強さは図抜けていた。出雲では日大が昨年につづいて連勝したが、駒沢は2位に甘んじたが、全日本では終始トップをゆづることなく余裕を持っての圧勝であった。箱根もまた駒沢は独自の戦略をもってのぞんでいた。
 今年の箱根駅伝は往路で東海大があれよあれよとそのまま突っ走って、往路優勝してしまったように、うわべでだけをみれば実力伯仲、大激戦の様相であった。
 たとえば復路の時差スタートは往路で10分以内にとびこんだチームのみにみとめられるが、今回は1位の東海大から16位の明治大まで、なんと16校を数えた。繰り上げはわずか4チームである。さらに往路、復路を通じて、各区間での繰り上げスタートはいちどもなかった。
 そこだけみるとたしかに文字通り史上まれにみる大激戦である。だが、やはり駒澤の強さがきわだっていた。
 往路の前半はトップをゆく東海、山梨学院や日大の影に隠れて、駒澤はどうしたのか……。3区ではなんとトップをゆく東海から2分30秒も遅れをとっている。ところが4区から追撃を開始し、5区の山の登りではきっちりと射程距離にあがってきた。往路を終わって30秒差というならば、まさに逆転ドラマの伏線というにふさわしい展開である。
 復路はゆっくりと追いあげ、7区でやっと首位をうばった。まさに横綱相撲である。10の区間をしっかりみすえて、勝つためにいかに戦うか……という絵図をもっていたのは、駒澤だけだったのではあるまいか。
 東海大学、先行逃げ切りの往路優勝はみごとだったが、果たして10区を視野にすえて、総合優勝をめざすという戦略が果たしてあったのかどうか。往路に主力のすべてを投入して総合優勝よりも、なりふりかまわず往路優勝をねらいにいったとしか思えないのである。
 今シーズン大学3駅伝のすべてに出場したのは、駒澤大、東海大、日体大、神奈川大、日大、中央大、順天堂大、亜細亜の8校である。結果的に見てこの8校はすべて、箱根でも上位にくいこんだ。シード権をまもったのは安定勢力であることの証だろう。
 大学女子の駅伝は昨年から全日本大学女子選抜駅伝がふえて、観戦するレースとしてさらに興味深いシリーズになった。
 大学女子駅伝は、ながくつづいた筑波と城西の時代が終わって、昨年から立命館と名城の両校を主軸にしてまわっている。両校は昨年の北陸駅伝からたがいにライバル視して火花を散らしてきた。昨年は全日本、選抜ともに立命館が制したが、今年も両雄の実力は拮抗していた。名城は今年もチャレンジャーとして立命館に肉薄したが、昨年と同じように敗れ去った。実力差がそれほどあると思えないのに、またしても同じ結果をまねいたのは、選手層の厚さからくる総合力によるものだろう。


男子は仙台育英がひとり旅!
女子は諫早、須磨学園、興譲館を中心に大激戦

 高校駅伝は男子は仙台育英の強さが際だっていたが、女子のほうは今回も大激戦であった。
 男子の4区以降は仙台育英が独走、興味はもっぱら昨年つくった大会記録の更新、さらには1分台に突入できるかどうかに移ってしまった。
 トップに立っても仙台育英の各ランナーの走りは圧巻、4区から最終7区まで、いずれも区間第1位、2位以降のめまぐるしい順位争いを尻目に、どんどんどんどんと遠ざかっていった。
 6区までに3分の大差をつけ、終わってみれば2分を大きく切って、夢の1分台に突入していた。1チームだけが図抜けていた。
 女子は連覇を狙う須磨学園と興譲館、諫早の3校が最終区でダンゴ状態となり、激しくトップを争った。
 逃げる興譲館、10秒差で追っかける2位の諫早、11秒差で須磨学園がつづく。興譲館を諫早と須磨が並んで追いかけるという展開、だが最後は諫早・高田鮎実の勝負強さがまっさった。昨年の筑紫女学園と同じように須磨学園もあと一歩に肉薄しながらもとどかなかった。実力伯仲の流れのなかで連覇は至難の業というわけか。


それにしても、新鮮味のない顔ぶれ!
それは現在の日本長距離のありようを象徴!

 4年後の北京をにらんでの第一歩ともいうべきヘルシンキ世界陸上の代表がきまった。駅伝でもおなじみの顔である。
 男子マラソンは尾方剛(32)、高岡寿成(34)、細川(29)、奥谷亘(30)、入船敏(29)。女子マラソンは小崎まり(30),原裕美子(23)、大島めぐみ(29)、江田良子(29)、弘山晴美(36)。10000mのほうは男子が三津谷祐、女子のほうは福士加代子、大南博美、宮井仁美の3人である。
2005ヘルシンキ世界陸上がそのまま北京につながるとは思わないが、マラソンに関するかぎり、なんとも新鮮味のない顔ぶれではないか。男子マラソンにいたっては最年少が29歳、30歳代がなんと3人を占めている。女子も原裕美をのぞいて陸上選手としては高齢者ばかりである。そういう彼や彼女に、もう上積みはのぞめそうにない。女子の原裕美子をのぞいて多くを期待するのは酷というものである。逆にいうならば、そういう昔の名前で出ているベテランに頼らなければならないほど、人材が不足している。それが現状だとみとめねばなるまい。
 さらに男子10000mの代表選考をめぐって、陸連は大もめにもめている。先に日本選手権1位の三津谷祐が選ばれ、標準記録Aを突破していて、日本選手権2位になった大森輝和がもれてしまった。順序からいけば大森上位のはずである。それをあえて覆すには、周囲が納得するに足る説明がなされなければならないのだが、陸連の態度は今回もはっきりしない。選考はやりなおしとなったようだが、どちらにころんでも後味が悪い。はっきりしていることは、どちらが選べれても、本戦ではたいした活躍もできないということだけ……というところか。


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