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立命館大学の池田恵美といえば、高校時代から駅伝のスターであった。大学女子長距離界でも1,2を争う素材である。 だが、駅伝には万全の体調でエースに出てきたことはほとんどない。たとえば高校3年のときには1区に出てきたが、なんと区間20位に沈んでいる。大学生になって1年のときは復活の気配がみられたが2年のときは、いまひとつ精彩を欠いていた。駅伝の戦いかたを知っているという点でレース巧者ぶりを発揮するが、彼女の力から考えれば、はっきりいって凡走である。 先の大学選手権でも、最長の2区に登場、丸毛静香の奪った首位をがっちりとまもり、さすがは池田というレース巧者ぶりを見せたが、区間1位は堀岡智子に奪われた。いまひとつピリッとしたところがないのである。 今回のエントリーはアンカーである。果たしてアンカー勝負になるのを見越しての起用だったのか。それとも、池田がいまひとつなので、アンカーで楽をっせてやろうという底意によるものだったのか。真意のほどは定かではないが、どうも積極的にアンカーに起用したのではなく、結果的にみて、調子に不安をかけていた……というのが真相だろう。 頼みの池田が追われた。 5区を終わって2位に上がってきた城西との差は36秒、ここで池田ならば、立命館としては左うちわ、右手に扇風機……の展開なのだが、勝負のゆくえは混沌としてきた。 3.4kmでは20秒、池田のペースはあがらない。追い上げる城西の田川典子は4.2kmで、なんと15秒まで迫ってくる。 池田がここまで追われる展開は初めてのケースである。だが、そこから踏ん張るのが駅伝巧者の池田である。ひとたび城西に傾きかけたレースの流れを、残り1.8kmで、ふたたび呼びもどすあたりは、さすがは池田というべきだろう。 先の大学選手権では名城、今回は城西、ともにアンカー勝負ながら、最後は相手をねじふせた立命館、やはり分厚い戦力がモノをいったというべきか。
観戦していて圧巻だったのは、やはり第1区のツバ競り合い……を、挙げるべきだろう。 立命館は大学選手権で1区を制した2枚看板の1枚・丸毛静香を投入してきた。先手必勝のかまえである。立命館を追う名城は田中真知を起用できなかったのが誤算だったろう。チャレンジャーゆえに1区から先手を取らなければ勝ち目などはない。ところが田中は調子落ちで使えなかった。清水里衣子をもってこなければならなかったところにこのチームの誤算があったというべきだろう。 レースは丸毛静香と関東学連桑城香苗(筑波大)というスピードランナーが引っ張る展開で幕明けた。 ところが3kmをすぎるあたりから、がぜんレースは波乱模様を呈してくる。丸毛が遅れはじめ、かわって東農大の木津麻梨子と白鴎大の馬目綾が飛び出してくる。伏兵というべき両者が併走してトップをうかがうという思いもよらない展開になった。さらに玉川大の五十嵐綾もトップ争いに加わってきた。 最後は木津と馬目の叩き合いになったが、最後は白鴎の馬目が競り勝った。3強のうちでは粘ったのがやはり立命館の丸毛だった。馬目と木津にあおられながらも、しぶとく食らいつき、トップから遅れること8秒に収めたところはさすが……。立命館連覇の足がかりはここでできあがった。 立命館を追う立場にある名城はここで22秒遅れの7位と出遅れた。チャレンジャーとして流れに乗れなかったのは、やはり1位で好位をキープ出来なかったせいであろう。今回は1区で後手を踏んで、最後まで優勝争いには参戦できなかった。
2区は1区で好位につけた立命館にとって、おあつらえむきの展開になった。昨年も酷区間で区間賞をとった才上裕紀恵が一気に突っ走った。2.1kmでトップをゆく白鴎の野口美穂をとらえ首位に立ったのは、立命館陣営にとっては予定通りの展開だったろう。 1区で健闘した白鴎、東農、だが総合力では優勝を争える戦力はない。名城、城西のゆくえが気になるところだが、2区で優勝戦線に押し上げてきたのは1区で28秒遅れの8位と出遅れていた城西である。 酒井直子がハイピッチで追い上げ、名城の加来美咲をとらえると勢いに乗った。東農、玉川もとらえ、一気に17秒差の3位まで上がってきて、31秒差と逆に遅れをとった名城のかわって、優勝をうかがえるところまであがってきたのである。 2区は短い区間ながらハイレベルの戦いが展開され、才上、酒井ともに区間新記録をマークしている。 1区につづいて見どころがあったのは3区だろう。 レースの勝敗がほぼみえてきたのはこの3区だった。さすがと思わせたのは立命館の樋口紀子である。前半をセーブして中盤以降にペースをあげるという1年生らしからぬ戦いぶりで追ってくる城西の大谷木霞をあっさり突き放して、35秒もの大差をつけてしまったのである。名城の追撃の勢いを断ち切り、優勝への道のりをここでしっかりつくってしまったのである。 後続のなかでは、今回も昨年の失敗を繰り返して出遅れていた仏教大が木崎良子の6人抜きという快走で9位まで押し上げてきたのが光っていた。 名城はここでも伸びなかった。トップの立命館に逆に1分19秒もの大差をつけられ、この段階で優勝戦線から脱落した。 4区、5区の立命館は後藤麻衣、河岸南て手堅く繋ぎ、34~36秒差をキープ、2位~4にかけては玉川、城西に加えて名城が加わってくるという展開であった。
立命館の勝因はやはり分厚い戦力である。エースの池田がいまひとつでも総合力では一日の長があった。たとえ池田を欠いても勝てるだけの戦力があるとみた。 名城は今回こそという期待感があったが、エース田中真知の調子がいまひとつで、優勝ああ粗衣にも絡んでこれなかった。戦力という点で立命館にはかなわなかったろいうべきだろう。 大健闘したのは関東勢である。2位の城西大、4位の玉川大、5位の東農大、6位の白鴎大、いずれも大健闘というべきである。 とくに城西はアンカー勝負では、あわや……というところまで立命館を追いつめた。エースの育ち着実に力はついている。 4位の玉川大も終始4位以内をキープ、4区では関本巳知世が快走した。区間3位ながら区間新記録の走りでチームを2位まで押し上げてきている。 7位の東農大も1区の木津が2位と激走、以降も好リズムに乗っのだろう。大きく崩れることはなかった。8位の白鴎大は1区の馬目が奪首、前半は3位をキープしていた。 逆に期待を裏切ったのは京都産業大と仏教大の関西勢だろう。全日本4位の京産は1区で10位と出遅れ、5区を終わっても12位に沈んでいた。最終区の伊藤舞の区間1位の快走があって、ようやく6位まであがってきた。 仏教大は今回も1区のつまずきがすべてだろう。力がありながらいつも後手を踏んで実力が出せない。さらに今回はエースを欠いての出場である。だが10位という結果は不本意だろう。 2回目にあたる今回は4位までが区間新記録、区間成績をみても4区間で新記録が飛び出した。だが、これをもって大学女子のレベルは確実に上昇しているといえるかどうか。否……である。全般的なレベルがたしかに上がったといえる。だから、レースとしての駅伝は面白くなった。それぞれチーム力が向上して、実力格差がなくなってきた。大学女子の駅伝は戦国時代に突入したという観がある。 ただし、選手個々の力がそこそこのレベルで平均化されただけで、全般に小粒になってしまった。スケールの大きさを感じさせる図抜けたスーパーエースがいない。ということは日本の長距離界を背負えるような器のデカイ素材がみつからないということである。 本大会のように大学女子の駅伝レースが増えるのはいいことである。だが選手育成そのものがが駅伝中心なってもらっては困る。駅伝で勝つことのみに眼をうばわれて、トラックや、マラソンまでを視野において、大きく育てるという観点が失われていくようでは本末顚倒というべきであろう。 ★開催日:2004年02月20日(日) スタート・埼玉県庁前→ゴール・上尾運動公園陸上競技場 6区間30Km ★天候:曇 気温9.0.5度 湿度45% 北西の風5.9m ★立命館大学(丸毛静香、才所裕紀奈、樋口紀子、後藤麻友、河岸南、池田恵美)
区 間 最 高
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