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5区から6区にたすきがわたる第5中継点……。 トップでやってきたのは王者・駒澤の大坪祐樹である。3区の塩川雄也でトップに立った駒澤は4区・本宮隆良が追ってくる日大に22秒とリードをひろげ、5区の大坪につないだのである。 観戦する側の立場からいえば、もっぱらの興味は第5中継点での駒澤と日大の秒差であった。それは今大会の勝負のゆくえを占い、最終区逆転…といういかにも出雲駅伝らしい結末の予兆につながるからであった。 6区を走る駒澤の佐藤慎吾はインカレーのハーフを制したほどのランナーで、いまや駒澤の主力ランナーだが、日大のD・サイモンとは、10000mの持ちタイムで約40秒もの差をつけられている。両者が額面通りの力を発揮すると仮定すれば勝負のゆくえは明らかである。したがって5区はおのずと40秒をめぐっての攻防になるというわけなのである。 大坪からタスキを受けた佐藤慎吾は、きっと後ろからひたひたと追ってくるであろう日大の足音を背中にピリピリと感じながらスタートをきったことだろう。 追ってくる日大の5区のランナーは一年生の阿久津尚二だったが、駒澤の思惑を打ち砕くかのように、大坪に遅れること18秒でやってきた。そして駅伝は初めてというケニアからの留学生・サイモンにつないだのである。 わずか18秒ならば、理屈のうえでは、もはや勝負は目に見えている。だが、計算通りゆかないのが駅伝である。駅伝では経験豊富な佐藤と初めてだというサイモン、あるいは思いがけない紛れが生じるやもしれない。あれや、これや……と、テレビの前で寝転がっている気楽トンボの観戦者は、私だけでなくみんなそれぞれ自由気ままなドラマを思い描いたことであろう。 だが、スーパールーキーというべきD・サイモンは3キロのゆかないうちに、あっさりとドラマを完結させてしまった。 搭載しているエンジンのパワーがまるでちがうというべきか。 サイモンは1.6kmで早くも佐藤をとらえてしまう。その後およそ1kmあまりは併走していたが、2.8kmでじりじりと前に出ていった。佐藤も懸命に食らいつくとしていた。なんどか秒差をつめてきたが、背中であざ笑うかのように突っ放されてしまう。追いきれなかったのはまさにエンジンパワーの差というほかない。 アンカーのサイモンが活きる展開にもちこんだ日大は、かくしてまんまと大学3駅伝の緒戦をわがものにした。昨年につづいて2連覇である。
44kmという短い距離を6区間に分ける駅伝である。順位がめまぐるしく変わり、勝負のゆくえが最後までみえてこない。最終区の最後の最後まで競り合う大混戦! そして逆転のドラマでしめくくる。今大会もそういう出雲駅伝のおもしろさがすべて盛り込まれていた。 日大をめぐって駒澤、日本体育大、東海、順天堂あたりがどういう戦いを挑むかがひとつのポイントであったが、今回も勝負の道筋がほのみえてくるのはやはり3区以降で、序盤は例年にまして大乱戦であった。 1区はスローの展開ではなかったものの、横に広がって集団でゆくかたち、中央のルーキー・上野裕一郎、立命館の田子康宏、駒澤の田中宏樹がかわるがわるトップをうかがう。中盤をすぎても立命館、中央、駒澤、大東文化、日大、東海、法政がダンゴ状態でしのぎをけずる。レースが動き出したのは残り2キロ、立命館の田子、大東文化の佐々木誠がスパート、東海の丸山敬三、中央の上野裕一郎らが絡んでいった。 最後に乱戦を制したのは立命館の田子康宏であった。昨年の徳山大・白濱三徳につづいて今年も関西のランナーが1区を奪った。田子はそれだけの力のあるランナーだが優勝を争う関東勢にひと泡吹かせたのはみごと。関西の大学ゆえにあまり檜舞台には縁がないだけに、数少ないチャンスを活かした。執念の走りというべきか。そういういみで本人も満足しているだろう。風がなかったとはいえ、25度というこの季節にしては異常ともいべき高温になかでの区間新記録更新は評価される。
1区を終わって、東海が2位、週末に箱根予選会をひかえている大東文化が健闘して3位、4位には中央、駒澤は5位……。ここまでがトップから13秒、6位の日大は14秒遅れ、日体大は8位で26秒遅れ、順天堂は9位で32秒遅れという形勢で2区に突入する。 駅伝として最も見応えがあったのは2区であった。トップ集団を形成する大東(野宮章弘)、東海(鈴木聡)立命館(池田泰仁)を中央(家高晋吾)、駒澤(鈴木俊祐)、日大(蔭谷将良)の第2集団がひたひたと追い迫る。2km地点では、第2集団が猛追して集団がひとつになってしまう。さらに後ろからは順天堂(村上康則)日体(鷲見知彦)、法政(圓井彰彦)らが追ってくる。 順位がめまぐるしく変わり、そういういみではいかにもテレビで観る駅伝のおもしろさが凝縮されたかたちでくりひろげられた。 大混戦の2区でトップに立ったのは日大であった。そして2位以下は立命館、駒澤、東海、中央、順天堂、日体、大東、法政の順になったが、乱戦を象徴するかのように。ここまでトップからわずか28秒差だった。 8.5kmの3区は6区とともにエース区間といわれるだけあって、各チームともに有力選手を配している。2区を終わってもういちどヨーイドンではじまった観のあるレースに流れを引き寄せたのは、駒澤、日大、東海である。まず抜け出したのは駒澤の塩川雄也、東海の越川秀宣、日大の下重正樹であった。5kmをすぎて3チームがするすると抜けだしたが、常に集団のイニシャティブを握っていたのは塩川雄也であった。6.2kmでスパートしてトップをうばった勝負勘はさすが駒澤のエースである。 3区を終わった段階で、1位駒澤、2位は7秒遅れで日大、3位東海は10秒遅れ、上位3校と4位以下には少し秒差がひらいて、ここで駒澤と日大のマッチレースの様相がみえてきたのである。そこからはたがいに最終6区をにらんで、もっぱら自軍の勝利の方程式にもちこもうと両校は4区、5区と激しくしにぎを削ったのである。 ほかでは候補とみられていた日体大は17秒遅れの5位、順天堂は1分20秒差の9位とここで大きく後れをとって優勝圏外に去った。
日大の勝利は最終6区のスーパーエース・サイモンが活きる展開のもちこんだことであろう。終わってみれはなんと区間新記録更新…である。サイモンをのぞくとずばぬけたエースは見あたらないのだが、5人のランナーはいずれも区間6位以内をキープ、堅実な走りでつないだことが最大の勝因だと思われる。スピード力には定評がある日大の特徴がいかんなく発揮されたといえそうである。 2位の駒澤も敗れはしたが、さすがは王者にふさわしい戦いぶりであった。勝負どころの3区で予定どおりに先頭に立ち、4区、5区とトップを突っ走った。選手層が厚いだけに、距離がのびる全日本では、やはり大本命にあげなくてはならないだろう。 大健闘したのは中央大ではないか。前半は5位〜6位にところにいたが、終わってみれば、いつのまにか3位まであがってきていた。派手さはないが各選手とも堅実で大きく崩れることはない。距離がのびると、こういうチームは怖い。 4位の東海も中井祥太、伊達秀晃というエースを2枚も欠きながら、中盤まではトップをうかがえるところにいた。2人ともおそらく全日本では出てくるだろう。両エースが万全なら今年も好勝負になるだろう。 優勝候補とまでいわれた順天堂は一時は9位まで順位を落とし、後半は追い上げて6まであがってきた。3区のブレーキがなければトップにきわどくからんでいただろうが、それは逆にいえば距離の短い駅伝ゆえに、ほんの些細なもミスでも致命傷になることの証左でもある。けれども明るい材料もある。優勝争いに絡めず6位に終わったものの、6区間のうち3つの区で区間賞を獲得しているのである。今年の順天堂は恐るべしである。 日体大は5位におわったが、このチームにしては距離が短すぎた。距離が伸びれば持ち前の地力が活きてくるだろう。順天堂と同じく、1年生、2年生中心のチームだが、ともに今年は台風の目になるだろう。 箱根シード組では法政が9位、神奈川が12位、東洋が16位と低迷した。いずれも戦力的にはそれほどダウンしているわけではないので、きっちりと立て直してくるだろう。 特筆すべきは5日後に箱根駅伝予選会に出場する大東文化大がほぼベストの顔ぶれで出場してきたことである。最終的には8位に終わったものの、前半はトップを争っていた。あえて出場に踏み切ったのは、予選会など目先にコセコセしないで、もっと先をみすえての布石なのか。もし、それが思いつきではなく意図的なものだとしたら、このチームもまたあなどれない。 出雲の大会は各大学が、今年の新しい戦力を試す大会でもある。日大のD・サイモンは1年生だが、すでにしてスーパーエースでこれは別格だろう。そのほかにも将来有望なランナーが今大会でデビューしている。 中央大の1区には上野裕一郎(区間4位)、駒澤大の2区には鈴木俊治(区間3位)、日体大の3区には北村聡(区間5位)、順天堂の4区では松岡祐起(区間1位)、日大の5区には阿久津尚二(区間5位)……など、いずれも底知れぬ潜在能力を秘めたランナーである。きっと箱根の新しい貌になるだろう。 それにしても……。 山梨学院と早稲田が出場しない大会というのは、なんとしてもさびしいかぎりである。日大のサイモンに山梨のモカンバが絡んでアンカー勝負になれば、大会史上初の留学生対決になっていただろう。テレビの前の気ままな時評子はそんな無いものねだりをする。(2004/10/11) ★開催日:2004年10月11日(祝・月) 島根県大社町出雲大社正面鳥居前〜出雲ドーム前 ★天候:出発時 晴 気温25.4度 湿度60% 東南東の風1.3m ★日本大学(岩井勇樹、蔭谷将良、下重正樹、土橋啓太、阿久津尚二、D・サイモン)
区 間 最 高
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