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2004-2005 駅伝時評 プロローグ

実力格差なく、大乱戦必至!
やはり主役は箱根と女子駅伝!


野口みずきと渋井陽子

 マラソンの延長に駅伝はある。駅伝の延長にマラソンがあるのではない。最初にマラソンありき……である。第一線級の長距離ランナーなでら、誰でもマラソンを走りたいと思っているらしい。駅伝はあくまでそのワンステップにほかならない。
 アテネオリンピックでは野口みずきが圧勝した。それから一ヶ月後、アテネの有力候補といわれながら、予選レースで惨敗した渋井陽子がベルリンマラソンで、高橋尚子の日本最高記録を更新した。
 オリンピックのマラソンは気温35度という炎熱の猛暑なかでのレースであった。レースというとりもガマン比べという様相、スピード勝負にならなかったことが幸いしたというみかたもできなくはない。
 だが、野口はそんな悪条件をものともしなかった。前回の高橋尚子と同じように、自分から積極的に仕掛けても勝利をもぎとった。アップダウンの激しいあのコースをストライド走法で押しきってしまった。マラソンの常識をみごとに突破、革命的な走り……といってもいいだろう。25キロから果敢に飛び出したチャレンジ精神に、野口みずきというランナーの執念をみる思いがした。
 渋井陽子の復活もみごとだった。もともとアテネ候補の大本命といわれていただけに、これくらいの結果は驚くにあたらないが、あらためてその潜在能力の高さをみせつけてくれた。


新勢力の台頭はあるのか?

 野口も渋井も本サイトにはなんどの登場している。時間があれば試しに「駅伝時評」のトップにある『サイト内検索』で「野口みずき」あるいは「渋井陽子」と、たたいていただきたい。
 「野口みずき」は8件、渋井陽子は26件も出てくる。あらためて過去の時評を読みかけしてみると、野口も渋井も第1線の表舞台に登場したのは2000年の冬であったことがわかる。
 渋井陽子は2000年1月の「全国女子駅伝」の最終10区(10km)に栃木から出場、大南博美や大越一恵などを押さえて区間1位に輝いている。全国的にほとんど無名だった彼女はこれをきっかけに快進撃がはじまるのである。
 野口は渋井も出場した2月の「横浜国際女子駅伝」でナショナルチームの一員として1区(5km)に出場、 ロシア、ルーマニア、ケニアのランナーを蹴飛ばして、区間1位と快走している。ちなみに渋井陽子は第4区(6.195)に登場、区間1位こそロシアのパンティオコーワにもっていかれたが、区間新記録で走りきっている。
 今は世界的なマラソンランナーになった野口と渋井、ともに世界のトップに勇躍するきっかけは、4年前の春の駅伝レースだったのである。
 4年前といえば、8月にシドニーオリンピックが開催され、あの高橋尚子が日本人女子陸上で初の金メダルに輝いた。あのとき高橋は26歳であった。現在の野口と奇しくも同年齢、そして渋井も25歳である。もしかしたら、25〜26歳というのは女子のマラソン選手として最も力の出る年齢なのかもしれない。
 4年前、高橋尚子のオリンピック制覇の影で、すでにして野口や渋井など時代を担う新勢力の萌芽があった。現在はどうなのか? 春の時点ではいまだ何もみえていないというのが現実だろう。
 野口、渋井につづくのは……。不安材料もある。それはオリンピックの10000mの結果が象徴的にものがたっている。福士加代子、田中めぐみ、弘山晴美、ともに周回遅れの惨敗をきっしている。10000mのスピードでは世界レベルから遠くおいてゆかれている。ますますスピード勝負になるであろう新世紀のマラソン、このままでは男子と同じ道をあゆむことになりかねないのである。
 それはともかく……。
 野口の金メダル、渋井の日本最高記録で、若い選手たちには格好の目標ができたといえる。そのかぎりにおいて女子駅伝はもりあがるだろう。野口、渋井につづく新勢力の台頭があるかどうか……今シーズンの焦点はその1点である。


低迷・男子長距離を救う道はある!
学生陸上の底上げが急務!

 女子にくらべて男子のマラソン・長距離はいまひとつパッとしない。予想されたこととはいえ、アテネでは惨敗に終わった。世界のスピードについてゆけない。搭載しているエンジンのパワーがちがうという感じである。
 男子のレベルに底上げがないのは、学生が弱いからだろう。マラソン、長距離に関するかぎり、実業団と学生では歴然としたレベルの差がある。落差が大きすぎるのである。実業団選手と学生選手がオリンピック代表をめぐって激しく争うような状況にならないと男子長距離は世界で戦えるレベルにはならないだろう。
 学生のレベルがなぜ、こんなに低いのか?
 箱根駅伝があるから……といううがったみかたもある。
 あるいは、そうかもしれない。箱根駅伝は正月の国民的行事になった。そのために男子は中学・高校生のころから箱根で走る自分の姿を描いている。箱根こそ檜舞台であり、箱根に出たいがために関東の大学をめざし、ひたすら箱根駅伝への出場に向かってトレーニングにも全力をあげる。箱根で実績をあげることだけを考えるようになるのである。
 箱根が目標になれば、もうそこが到達点になってしまう。駅伝、たかが学生駅伝ぐらいでスターになって、それで満足しているようではどうにもならない。箱根に出場できるほどのランナーは相応の素質にもめぐまれているのだから、本人はもちろん周囲の関係者も、世界というものをしっかりみつめ、ランナーとしてビジョンをしっかり持たないと、モッタイナイではないか。
 箱根のスターと騒がれても、実業団にゆくと、総じてごく平凡な選手になりさがってしまう。どこか歯車がくるっていると思うのだが、いかがなものだろうか?


今回も大乱戦の予感!
箱根駅伝は下克上の時代に突入

 アテネで惨敗したといっても、箱根を頂点とした学生駅伝だけは今シーズンも例年にましてもりあがるだろう。
 学生駅伝はまれにみる大激戦時代である。昨年も同じ台詞を口にしていながら、終わってみれば駒澤の連覇に終わったのだが、昨年あたりから勢力分布の構造そのものに地殻変動が起きている。
 早稲田、山梨学院、大東文化……といえば、箱根の頂点をきわめたこともある学生駅伝の強豪チームだが、今シーズンは予選会から立ちあがってこなくてはならない。これら3チームのうち、出雲と全日本に出場するのは大東文化のみ、山梨学院は全日本には出場するが出雲には出てこない。早稲田にいたっては出雲、全日本ともに欠場である。
 さらに箱根シード組のなかでも、東洋と法政は全日本への出場権がない。そういう関係もあって、出雲→全日本→箱根というステップで学生駅伝をとらえられなくなっているのである。
 出雲、全日本を経て箱根に向かう。いわば学生駅伝の王道をゆくチームは、駒澤大、東海大、日本体育大、神奈川大、日大、中央大、順天堂大 亜細亜大の8チームのみ…ということになっている。だからといってこの8チームが安泰というわけでもない。
 総合力では今年も駒澤に呼び声が高いが、あとは横一線というありさま。箱根駅伝では予選会あがりでも、十分に上位をうかがえるだろう。何が起こってもいっこうに不思議はない。まさに下克上の時代に突入したといってもいい。実力格差は紙一重、当日のコンディションや細かなミスが順位変動をもたらすという実に世知辛い駅伝になるだろうるだろうと観ている。(2004/10/2)



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