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長距離で世界の頂点をきわめたエチオピアが今年も豪華メンバーを送り込んできた。2年連続でアベック優勝、今年は3連覇をねらってきた。とくに女子はすごい。昨年のメンバーが5人も残っており、いずれも世界に通じる実力の持ち主である。 ケニアは今年も日本の実業団所属の選手でドリームチームを編成してきた。エントリーされた顔ぶれをみると、男女ともに昨年につづいて今年もエチオピアとケニアというアフリカ勢のマッチレースという構図であった。 チャンピオンシップの大会ではないこういうレースでは、話題性のある超目玉選手が顔をみせて大会をもりあげる。昨年はラドクリフだったが、今年はエチオピアのメダリストたちというわけなのだろうが、ラドクリフほどに華がないために、そういう意味ではいまひとつ盛り上がりを欠いてしまっていた。 ベルリンマラソンで日本最高をマークした渋井陽子、さらにはアテネオリンピックのマラソン男子代表トリオ、油谷繁、諏訪利成、国近友昭が目玉のつもりかもしれないが、これではあまり新鮮味にとぼしい。 女子のメンバーをざっと見渡して、大南博美、小鳥田貴子、大島めぐみ、小崎まりなどは、もうすでにピークに達した選手たちである。せっかく世界の最速集団が来るのだから、もっと勢いのある伸び盛りの選手を出場させるべきであると思うのだが、こういう薹の立った選手をあえて出場させなければならないところに、若手が育っていない日本長距離の現在がほのみえてくるようである。 要するに男子はともかく、マラソンでオリンピックを連覇した女子でさえも、ポスト高橋、ポスト野口のビジョンが何もみえていないようである。
男子は昨年と同じくエチオピアと在日本のメンバーで編成したケニアのマッチレースになってしまった。 1区ではケニアのM・I・マサシが飛び出した。2位にはタンザニアのF・ナーシが31秒遅れ、力上位のエチオピアはA・シェーンを起用してきたが34秒差の3位。日本は最近売り出し中の大森輝和(くりしお通信)をもってきた。だが、この顔ぶれのなかにはいるといささか家賃が高すぎる。4キロすぎでケニアのマサシとタンザニアのナーシが飛び出すと、もう付いてはいけなかった。トップから55秒もおいてゆかれて、またしても世界の厚い壁を思い知ることになった。 ケニアは前半重視の布陣で1区と2区に主力を投入、逃げ込みをもくろんだようだが、2区のP・モシマで思ったほどリードが奪えなかった。逆にエチオピアのM・ゲスッテイに15秒差まで詰められてすっかり目算がくるった。エチオピアの3区はアテネの5000mで4位10000m26分台のゲブレマリアムだから勝負はみえていた。ゲブレマリアムは中間点で粘るケニアのJ・マイナを交わしてしまい両雄の勝負は決着した。 3区を終わってエチオピアとケニアは15秒差、両雄が抜け出したかたちになり、ケニアから3位のスウェーデンは2分30秒もの大差がついてしまった。 日本は4区の国近友昭が区間2位でまとめて、なんとか3位に浮上したが、2位のケニアから2分以上もおいてゆかれ、油谷繁にタスキがわたったとき、勝負はすでに決していた。
男子に比べれば女子のほうは健闘したといえる。エチオピアとケニアの一角をくずしたのは評価できるだろう。 日本の闘いぶりをふりかえると、いちばんのポイントは第1区であった。予想以上といえば失礼かもしれないが、大南博美の粘りのある走りにみるべきものがあった。大南はいつになく積極的だった。ロシアのグリゴリエワ、ケニアのワンジク、エチオピアのクマ、ルーマニアのミハエラなどにまじって前半はくらいついていた。3.8kmからじりじりとおいてゆかれたが、それでも大きく遅れることはなかった。最終的には5位に終わったが、トップのエチオピアからわずか18秒しか遅れをとらなかった。驚異的な粘りというべきだろう。 1区の先陣争いは残り2kmでケニアとエチオピアが抜け出した。力上位のE・クマがケニアのJ・ワンジクをねじ伏せて、これでレースそのものの流れも決してしまった。かくしてエチオピアは2区のM・メルカムでケニアに31秒の差をつけて独走態勢をかためてしまうのである。 日本は1区・大南のリズムにのって2区の小鳥田貴子がロシア、ルーマニアをとらえ、トップのエチオピアには36秒おいてゆかれたものの、3位に浮上してきた。2位のケニアとは5秒差に迫ってきて、3区の渋井陽子にタスキがわたった。 渋井陽子は完調ではないようだったが、さすがは駅伝育ちのマラソンランナーである。前半はもたもたしていたが、10kmぐらいなら力上位と思われるケニアのL・ワゴイを中盤から急追、中継点では1秒差まで追いあげてきた。 1区の大南とともに力走ぶりをみせたのが4区の小崎まりである。駅伝育ちの小崎はいかにもベテランらしい走りでケニアをとらえ、さらに先をゆくエチオピアを追いはじめたのである。終わってみれば区間第1位、トップからは35秒差の2位まで日本を押し上げていた。エチオピアの完全制覇をはばんだ小崎の走りによって、日本はやっと面目を保った感がるが、そこまでくるのががやっとというありさまであった。
女子もエチオピアは額面通りの走りをみせつけてくれた。5区ではM・デフォーが区間新記録の快走、6区のT・ディババで後続を突き放し、最終的に2位の日本とは2分19秒もの大差をつけて3連覇を達成した。 かくして男女ともにエチオピアは3連覇を達成、世界最速の力をみせつけられた。男子にしても女子にしても5000mから10000mのスピードでは世界に太刀打ちできないことを改めて思い知らされる結果になった。 それにしても…… 千葉国際駅伝というのは、どのように位置づけられているのだろうか。男子にしても女子にしてもチャンピオンシップの大会をひかえているから、積極的にチームの主力選手を送り出すようなことはしないだろう。テレビの視聴率を考えて、そこそこネームバリューのある選手をみつくろってくるだけに終始しているのではないか。 当初は外国選手の胸を借りるという意気込みで、その年その年のベストメンバー、文字通りJapanにふさわしいチーム編成をしていた。ところが最近では国際駅伝があるからというわけで、員数合わせ的に選手を選んでいるようで、すっかりダレてしまっている。横浜国際もそうだが、競技会そのもののコンセプトがボヤけてしまっているから、レースの緊張感もなくなっている。何のための大会なのか? そろそろ見直す時期にきているようである。(2004/11/23) 開催日:2002年11月23日(火) 千葉県総合スポーツセンター陸上競技場をスタート・フィニッシュとし、ポートタワー・千葉マリンスタジアム・幕張メッセ・幕張ベイタウンを通る日本陸連公認マラソンコース 男子5区間 女子6区間42.195km ★天候:曇り 気温18.2度 湿度45% 東の風2.0m(12時現在) ★日本チーム 男子(大森輝和、小林史和、諏訪利成、国近友昭、油谷繁る) 女子(大南博美、小鳥田貴子、渋井陽子、小崎まり、大島めぐみ、斉藤由貴)
区 間 最 高
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