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資生堂の弘山晴美といえば先のアテネオリンピックの10000mにも出場、日本女子の長距離をひっぱってきた代表的なランナーである。年齢的にみてオリンピックでかなりダメージを受けているのではないかと思われたが、女子駅伝の幕開けというべき本大会に元気な姿をみせてくれた。 アテネを最後に引退するのではないかとみていただけに、あえて出場に踏み切った勇気に喝采をおくりたい。 その弘山晴美が若い二人、三井住友の大山美樹、第一生命の斉藤由貴をしたがえるかのように突っ走った3区は、今大会になかで最大のみどころであった。 関東の3強いえば三井住友、第一生命、資生堂だが、第1区で早くも抜けだし、2区を終わってもトップ資生堂から3位の三井住友まではわずか5秒で激しく競り合っていた。そしてエース区間の3区にたすきが渡ったのである。 王者・三井住友は例年は渋井陽子が出てくるのだが、日本最高記録をマークしたあのベルリンマラソンからのインターバルの関係か今回はアンカーにまわり、長い距離でも力をつけている大山美樹が出てきた。第一生命もいまやエース格に成長した斉藤由貴である。 トップでたすきを受けた弘山、1秒差で斉藤が追い、5秒遅れの大山は猛然と追っかけてたちまちダンゴ状態になってしまう。 弘山を中心にして両側から挟み撃つかのように大山と斉藤が追ってゆく。弘山は若い二人を引っ張るかのように先頭をゆずらない。胸を借りる2人と受けて立つ弘山の闘いが、新旧交代を象徴するかのようで興味がつきなかった。 レースが動いたのは8kmすぎだった。仕掛けたのは弘山を挟んでいた若い大山と斉藤である。ペースがあがった。軽快なピッチをきざむ斉藤、大山の柔らかいフォーム、弘山の動きはにわかに堅くなった。勝負はこれまでか……。顔をゆがめて懸命の形相で食らいつく弘山、そこからの粘りはさすがベテランというべきか。 残り500mで斉藤が出る。追ってきた大山が中継の寸前で突き抜ける。そして大山につけていった弘山も中継点ではほとんど同体でたすき渡したのである。 弘山にひっぱられて大山と斉藤は快走、4位の日立に52秒mの大差をつけて3強は一気に抜け出したのである。
いつもなら3区で渋井が独走態勢をつくって、レースそのものは決着がついてしまうのだが、今回は4区までは3強が競り合い、中盤までは観るレースとしてなかなかおもしろかった。 三井生命の4区は大平美樹、4kmと短い距離だからハナからトップスピードに乗ったようである。資生堂は前回は最終区で1位をとった嶋原清子、第一生命は羽鳥智子と骨のある相手だが、持ち前の大きなストライドと力強い腕の振りで、ずんずん躯を前に運ぶかのようにすっ飛ばした。 2位の第一生命の先んじることわずか6秒だったが、大平の区間新記録の快走で、三住住友は一気に流れに乗った。5区はアテネでマラソン5位の土佐礼子、駅伝は久しぶりで不安がないわけではなかったが、走り出したらもう誰もとめられなかった。10kmは31分36秒というハイペース、折り返し地点で三井住友の独走態勢をつくりあげてしまった。不安視されていながら、安定した走りで区間賞、駅伝女・坂下奈穂美のアナをきっちり埋めた働きぶりはさすがである。 5区では土佐とならんで注目されたのは千葉真子であった。今回初出場の豊田自動織機のメンバーとして5区に登場した千葉は区間3位ながら、8位から3人抜きで5位まで順位を押し上げ、チームの予選通過を確実なものにした。 かくして5区の土佐礼子でトップに立ち、後続に1分14秒もの大差をつけた三井住友、アンカーの渋井湯子も区間1位の走りでやすやすとトップでゴールした。大会新記録というオマケまでつけての5連覇である。
終わってみれば今年も三井住友は強かった。メンバー6人のうち5人までが区間第1位である。1区の石山しおりもトップから9秒遅れの区間3位でまとめているから、まったく危なげがなかった。3区のエース区間に大山美樹を配し、渋井陽子をアンカーに回すあたりは余裕というべきだろう。ほとんど死角がみあたらない。岐阜の全日本でも大本命である。 2位の第一生命、3位の資生堂も新戦力が育ち、着実に地力強化されているとみた。 健闘したのは第1にホクレンである。前回は10位以下に沈んで全日本への出場権を失っているが、今回は3区で一気に5位に浮上、以降も順位をおとすことなく5位でフィニッシュした。 豊田自動織機は今回初参加、ヤマダ電機も初参加だが、これは「みずほ銀行」をひきついでの出場である。小出義雄グループのひとつというべき豊田自動織機は1区の宮井仁美、千葉真子など力のあるランナーが額面通りの力を発揮して6位、ヤマダ電機も7位に「とびこんで全日本への出場をきめた。 期待を裏切ったのは皮肉にも大会のスポンサーである「しまむら」である。エースの田中みぐみの調子があがらなかった。アテネのダメージからいまだ回復していないようである。1区で14位と出遅れ、3区の田中めぐみでなんとか11位まで押しあげてきたが、最終的には13位に沈んでしまった。かくして埼玉銀行時代からの全日本出場がとぎれてしまった。
女子実業団の全日本予選である本大会、シーズン最初の女子駅伝であもある。とくに今年は北京オリンピックをにらんで女子長距離のゆくえを占うという意味で、注目すべきシーズンになる。 そういう意味で本大会をふりかえると、何かいなひとつ食い足りないように思われてならない。弘山晴美、渋井陽子、土佐礼子、千葉真子……、このようにならべてきると、「昔の名前で出ている」選手ばかりなのである。弘山はもはや使命を終えたランナーである。渋井陽子や土佐礼子、千葉真子にしても今がピークのランナーである。 4年前はポスト高橋尚子の候補として、すでにして渋井湯子や土佐礼子が頭角を現していた。 ところが今年はかつての渋井や土佐のようにスケールのデカイ新鋭がみあたらないのである。実業団システムで強くなった女子長距離もいよいよバブルの遺産をくいつぶしたというべきなのか? 今冬の駅伝レースでは、北京を視野に入れたスケールのでかい新鋭がとびだしてくることを祈りたいと思う。(11/03) ★開催日:2004年11月3日(祝・水) さいたま市。埼玉県庁前から上尾市・上尾運動公園陸上競技場まで。49.195K ★天候:出発時 曇り 気温13.0度 湿度83% 無風 ★三井住友海上(石山しおり、橋本歩、大山美樹、大平美樹、土佐礼子、渋井陽子)
区 間 最 高
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