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京都が本気で勝ちにきていた。 小崎まり、早狩実紀、吉野恵、阿蘇品照美……。豪華な顔ぶれである。そのままJAPANのユニフォームを着せて、国際駅伝に出場させてもおかしくない。額面通りに力を発揮すれば、全日本を制した三井住友海上と互角以上にわたりあえるだろう。高校生は立命館宇治のメンバー、中学生もまずまず……。ならば、どこからみても負けるはずのない布陣である。 ふるさと選手のシステムが浸透したせいか。各県の実力差は接近しているとはいうものの、ざっとオーダーをひとあたり見渡しても、京都を脅かすであろうチームはまったく見あたらなかった。 事実、下馬評にあがった上位候補も、いまひとつ決め手というもを欠いていた。9区にたとえば福士加代子や渋井陽子のようなスーパーエースをもつチームが見あたらす、要するに帯に短し、タスキに流しのどんぐりの背比べ状態であった。 全国女子駅伝の呼び物といえば、最長区間の9区における逆転劇だが、もはや今は昔の話となってしまったようである。とくに今年は顔ぶれが手薄であったせいで、観るレースとしては、いまひとつ盛り上がりを欠いてしまった。アテネ帰りの坂本直子(岡山・天満屋)、土佐礼子(愛媛・三井住友海上)が役者不足というわけではないが、二人とも優勝をきわどく争う檜舞台にはお呼びがなかったこともたぶんに影響したようである。 もっぱらの興味はなりふりかまわず勝ちにきた京都が、どういう勝ち方をするのか。その一点につきた。
顔ぶれからみて、最大のみどころとなったのは第1区であった。 小崎まり(京都・ノーリツ)、小川清美(佐賀・京セラ)、佐藤由美(山形・資生堂)という主力に復活してきた山中美和子(大阪・ダイハツ)、藤永佳子(長崎・資生堂)、大平美樹(三井住友海上)らの実業団の主力どころがどんな走りをみせてくれるのか。そして先の高校駅伝で区間新の快走で衆目をうならせた新谷仁美(岡山・興譲館)、鈴木悠里(群馬・常磐)、野原優子(福岡・筑紫)らの高校生の勢いが、果たしてどこまで通用するのか。 高校生が実業団選手を喰ってしまったケースがあるだけに眼がはなせなかった。 レースは予想通りに新谷仁美がひっぱる展開ではじまった。だが3km=9:29秒というスローの展開、これならば実業団の有力選手はみんなついてくる。中盤をすぎても横ひろがりの集団で進んだ。 高校生の新谷が勝つにはぶっちぎりの展開にもちこむほかないのだが、そこまでの勇気がなかったのか。それとも……。力の差というものなのか。後ろについている実業団勢はいかにも余裕がありそうな雰囲気、どこかで誰かが飛び出して、にわかにペースがあがるだろう。そこで力のない者は1人2人と振りきられる。 4キロすぎであった。 テレビの画面もとらえきれないタイミングで、京都の小崎まりがスパートしていた。第一中継所までまだ2kmもあるというのに、集団を割ってするするととびだしたのである。 4km過ぎの坂を待っていたかのようなスパート、さすがはベテランの勝負勘というべきか。いかにも老獪な駆け引きをくりひろげる。まるで虚をつかれたかのようで、新谷仁美をはじめ高校生は対応できなかった。たちまち差はひろがり、ここで一気においてゆかれた。 大阪の山中美和子、佐賀の小川清美がくらいついてきたが、意表をついた小崎の仕掛けでレースの流れは一気に京都にかたむいたのである。
早狩実紀といえば、全国女子駅伝の優勝請負人というべきか。昨年は兵庫の一員として区間賞の走りで優勝に大きく貢献している。今年は古巣の京都のメンバーとして登場、いかにもベテランらしい走りで、優勝への道筋をしっかりときりひらいた。 5秒差でタスキをもらったが憎らしいほど落ち着きはらっていた。佐賀が急追してきて1秒差までつめよってくるが、まったく振り向きもしない。中距離ランナーらしい大きな走りで自分のペースを堅実にまもり、後半はふたたび突っ放してしまう。 2位は後ろから追ってきた山形に入れかわったが、2区を終わって、ここで10秒差と首位かためをしてしまう。計算のできるランナーとは早狩のようなランナーを差すのだろう。その早狩に誤算があったとすれば、わずか4秒足らずに区間賞をとれなかったことだろう。 驚いたのは2位に追いあげてきた山形の熊坂香織である。早狩の4秒先んじてなんと区間新記録である。 区間賞、しかも区間記録の更新というオマケまでついた快走ぶり、インタビューで涙をみせた姿がいかにも彼女のランナーとしての足どりをものがたっているようで好感が持てた。熊坂といえばたしか第一生命のメンバーだったと記憶いている。かつては実業団駅伝でも活躍していた。現在は退社して地元のもどっている。環境にめぐまれた実業団チームから離れ、地元で孤独なトレーニングを重ねてきたランナーにもスポットライトが当たった。そういえば早狩も社会人ながらも現在は実業団チームに属しているわけではない。都道府県対抗駅伝はそういう舞台でもある。それだけでも本大会の存在価値があるだろう。
京都には穴らしい穴はなかった。 3区の中学生も区間6位でまとめ、2位の山形との差を約30秒にひろげてしまう。そして4区は吉野恵が区間1位、2位にあがってきた長崎に57秒もの大差をつけ、大会記録を大きく上回るペース、勢いはとまらなかった。 9区の阿蘇品照美を配している京都に勝つには、最終区までに1分以上の差をつけておかなければならないのに、逆に1分も先んじられたしまった。結果的にみて今回は4区で勝負がきまってしまったのである。 前半4区間に主力の実業団選手を3枚投入して、優勝への流れをつくってしまった。若干紛れが出そうな高校生トリオが登場するまでに勝負を決める作戦がみごとに当たったというべきだろう。 6区で長崎に18秒差まで詰め寄られたのは愛嬌というものだろう。7区では小島一恵が区間賞の走りをみせて再び突っ放すと、8区の中学生も区間4位の走りで1分13秒まで差をひろげてしまうのである。 そしてアンカーの阿蘇品にたすきがわたるのである。追ってくるのが長崎ならば、もうタスキをゴールまではこんでゆくだけでいい。かくして後続が2位争いに終始しているあいだに、京都はいちどもトップを譲ることなく、やすやすと逃げきってしまってしまったのである。 大会新記録の更新のこそ逃したが、いかにも強い勝ちたで3年ぶり9度目の制覇を果たした。
健闘したのは2位の兵庫、3位の山形、4位の長崎である。 兵庫は3連覇をねらっていただけに2位という結果を健闘として称えるのは、どうかと思うが、今回は実業団選手はたったひとり、主力は須磨学園のメンバーでチーム構成されていた。実業団の主力がひしめく1区で19位と出遅れたのはしかたのないところ。そこから順次に追い上げてきた。2区では12位、4区では6位、5区で5位、6区で3位、8区で4位と後退したが、最終の9区では加納由理が区間1位の走りでといとう2位までやっえきたのである。優勝争いに絡まなかったものの、チームとしてのまとまりはみごとというべきである。 山形は前回よりさらにひとつ順位をあげての3位、これは文字通り大健闘である。1区で5位につけ、2区〜3区にかけては京都にかなりのところまで肉薄、首位のとどくところにいた。その後も4位から落ちることがなく、ベスト3にもぐりこんだのはみごとな戦いぶりだったといえる。 4位の長崎は高校駅伝を制した諫早高校の勢いをそのまま持ち込んだかのようであった。4区から2位にあがり、6区では大会新記録を上回るペースで先をゆく京都を、なんと18秒差に追いつめているのである。最終区に決め手のあるエースが一枚ひかえておれば、あるいは、あッといわせる展開も夢ではなかっただろう。 ベスト10の顔ぶれをみると、京都、兵庫、大阪、埼玉のような主要府県ほかでは山形、長崎、岡山、群馬、熊本、広島が顔を出している。その反面、東京、神奈川、愛知、千葉など首都圏チームの凋落が目立つ。あるいみで全国の地域格差がなくなっきた。ふるさと選手制度が定着したのもその要因のひとつだろう。(2005/01/16) ★開催日:2004年01月16日(日) 京都市・西京極競技場発着 宝ヶ池国際会議場前折り返し9区間49.195Km ★天候:正午 晴 気温11.0度 湿度67% 北東の風1.5m ★京都チーム (小崎まり、早狩実紀、藤野結衣、 吉野恵、立花三沙子、長谷川結子、小島一恵、池本かいり、阿蘇品照美)
区 間 最 高
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