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女子の最終5区……。 勝負の流れが動いたのは残り1kmの地点だった。西大路通りから五条通りにさしかかった時、まるでタイミングを測るかのように諫早の高田鮎実がするするとに前に出た。 須磨学園の隅田優美、興譲館の山本未中里、必死の形相で追うが、足色はもういっぱいいっぱいでお釣りがない。 須磨の隅田はたちまち苦しくなった。じりじりと遅れてゆく。前のめりになってなんとか食らいつこうとする興譲館の山本、それは1区からトップをまもってきた矜持というものだったろう。だが、勢いがちがう。いちど奪われた勝負の流れはもはやもとにもどってはこない。諫早の高田はどんどんと遠ざかっていった。…… 昨年は須磨学園が2区であっさりとトップを奪い、そのまま最後まで突っ走ってしまったが、今年は観戦する者にとって興味つきないアンカー勝負になった。上位チームが最後まで競り合うというかたちになった。 4区を終わって興譲館、諫早、須磨学園の上位3チームが11秒の間にひしめき、4位の常磐を1分以上の差をつけて、まさに、ともえ戦の様相という形勢であった。第1区からトップに立ってきた興譲館、3区ではひとたび30秒の貯金をつくったが、4区では後続の諫早と須磨に10秒差まで追いあげられ、勝負の形勢は一気に流動化しはじめたのである。 逃げる興譲館、10秒差で追っかける2位の諫早はここにエースの高田鮎実を残していた。アンカー3人のうちでは持ちタイムがぬきんでている。11秒差でつづく3位の須磨は2区、3区、4区と連続区間1位で上げ潮ムードに乗って、にわかに連覇のゴールが見えてきていた。 興譲館を諫早と須磨が並んで追いかけるという展開で最終区は幕あけたが、諫早の高田は冷静沈着だった。ゆっくりと差を詰め、3.3kmで追いついたが一気には行かない。しばらくは併走して、勝負どころをがくるのをゆっくりと待っていた。だから残り1kmでスパートをかけると、粘走していた興譲館の山本はもう追っかけることはできなかった。
女子のレースでもうひとつの見どころをあげれば、最長区間の1区であった。 このところ男子もそうだが女子の場合も第1区はケニア人留学生の指定席になっている。トラックで力上位のケニア人同士がぶっちぎってトップを激しく争うという展開が定番となっている。 ところが……。 女子の場合は昨年から変化が生じてきている。前回は興譲館の1年生ランナー・新谷仁美がJ・モンビ(青森山田)、M・カリウキ(仙台育英)、O・モラーフィレス(山梨学院)らをねじ伏せてしまった。 今年も新谷仁美が先頭をひっぱった。トラックの実績では上位のO・モラーフィレス(山梨学院)とともに終始レースの主導権をにぎっていた。レースはこの両者が引っ張るかたちで進み、1k=3:05、1km〜2km=3:06、中間点では9:17と区間記録(藤永佳子)を6秒も上回るハイペース、両者が競り合ってゆけば区間記録の更新がみえてきた。 自信とは怖いものである。2年生ランナーの新谷は終始積極的だった。先に動いたのは新谷だった。4.7kmでスパートをかけた。モラーフィレスは遅れた。あっさり勝負は決したかに思われたが、モラーフィレスにはトラック上位のプライドがある。5kmでは追いついてふたたび併走、残り500mでは逆にスパートして前に出た。ふつうなら、ここで勝負あり……になるのだが、新谷はしぶとかった。中継点を目前にして猛然とスパート、モラーフィレスを一気に抜き去り、逆に9秒も先にいってしまった。 まさに息づまるような競り合い。たがいにライバルにめぐまれて2人ともが藤永佳子の区間記録を更新した。
女子で連覇を狙った須磨学園は1区で出遅れた。脇田茜がなんとトップの興譲館からなんと1分遅れの12位である。優勝した諫早は35秒遅れの6位と出遅れたが、2区ではトップから24秒差までやってきている。後半に主力をならべ、前半でのマイナスを最小限にとどめたのが勝因だろう。 須磨は3区でようやく32秒差の3位まであがってくるのだが、スタートでの1分のハンディは大きすぎたようである。2区〜4区まで区間賞を独占しているだけに、出鼻の遅れが最後までたたったようである。 興譲館はいま一歩で優勝がこぼれおちていったが、最終区の残り1キロまでトップに立っていた。1区・新谷の区間新の快走によって中盤では勝負の流れをつかんだかにみえたが、最後は地力の差が出てしまった。新谷が万全なら来年は要注意のチームになるだろう。 今回は上位3校がやや抜けた存在、まずまず順当は結果といえそうである。 健闘したのは常磐(群馬)である。やはり1区で好位置につけたのが最大の要因だろう。1区の勢いと流れにのって4位にとびこんだ。区間新が出た1区で鈴木悠里の29秒遅れの4位は大健闘である。 筑紫女学園も昨年はブレーキになった野原優子が今年は新谷、モラーフィレスにつづく3位、額面通りの走りをみせてくれた。だがチームとしては中盤から後半にかけて伸びを欠いてしまった。 地元の立命館宇治は前半勝負に出たが、頼みとする1区の小島一恵がなんとトップから1分13秒遅れの16位と出遅れた。これでは戦いようがない。かくし早くも入賞圏外に去ってしまった。
男子のみどころは第3区であった。 2区を終わったところでは、例によって1区にケニア人留学生(J・カリウキ)を配した滋賀学園がトップ、21秒差で同じく留学生効果に浴する山梨学院がつづき、3位に大本命の仙台育英がトップから49秒差でつづくという形勢であった。 昨年は1、2年生主力で区間新記録で圧勝して仙台育英は余裕というべきか。あえてケニア人留学生のサムエル・ワンジルを今年は3区にエントリーしてきた。 1区では2人の留学生に1分14秒差の3位につけ、2区では49秒差まで詰めてきたのは筋書き通りというべきか。それにしても仙台育英の地力はすさまじいものがある。そしていよいよ3区にスーパーエースの登場である。 あるいは1区で3位につけた段階で、今回の勝負の目鼻はみえてしまっていたというべきかもしれない。王座返り咲きをもくろんだ西脇工業は1区でなんと2分以上も遅れをとっての21位、佐久長聖もトップから1分52秒も遅れている。当面のライバルである佐久長聖に1区ですでにして38秒もの大差がつけてしまった。そうなればもはや余裕の戦い……である。 3区のワンジルはタスキをもらって一気に追いあげ、2km手前でまず山梨学院大付をとらえ2位に浮上、さらに3.1kmで並ぶまもなく滋賀学園を抜き去った。あとはもう独走のワンマンショー、区間新記録の快走で2位に1分29秒もの大差をつけてしまった。 後続は鹿児島実業が14人抜きで3位に浮上、あとは報徳学園、東農大二、豊川工とつづき西脇工が12人抜きで7位まであがってきて大混戦の様相、佐久長聖はここで10まで順位を落としてしまった。
男子の4区以降は仙台育英が独走、興味はもっぱら昨年つくった大会記録の更新、さらには1分台に突入できるかどうかに移ってしまった。 トップに立っても仙台育英の各ランナーのモーティべーションは落ちなかった。4区の伊藤一行、5区の釜石慶太、6区の佐藤昭太、アンカーの梁瀬隆史……いずれも区間賞の走りである。2位以降のめまぐるしい順位争いを尻目に、仙台育英1チームが抜けた存在で、どんどんどんどんと遠ざかっていった。 6区までに3分の大差をつけ、終わってみれば2分を大きく切って、夢の1分台に突入していた。2位の豊川工の4分48秒も悪いタイムではないが、なにせ仙台育英に額面通りの力を発揮されては、どうしようもない……というありさまであった。 王座奪還をねらった西脇工は1区の出遅れがすべてだったようである。後手を踏んでリズムを失い、蟻地獄から這いあがれなかった。 仙台育英の快走はたしかに眼を見張るものがあったが、あまりにも強すぎて観るレースとしてはいささか単調に終始したが、まあ、これも駅伝である。 それにしても…… 男子の場合、第1区は今年もケニア人留学生の争いに終始した。滋賀学園のカリウキ、山梨学院大付のモグスが競技場を出ると早くも抜け出していた。1km=2:41 1km〜2km=2:37といえばたしかに速い。日本人ランナーでは佐藤祐基(佐久長聖)と佐藤秀和(仙台育英)が追っかけたが、かんたんに振りきられた。 中間点では13:53というから、たしかに力がまるでちがう。たが……。力ちがうといって、しかたがない……と、かんたんに容認してしまっていいのか。女子の場合は2年生の新谷がトラックでは無敵のモラーフィエスに競り勝っている。男子の場合も留学生と実力拮抗するような選手が出てこないかぎり、日本男子の長距離は世界レベルにならないだろう。 余談ながら…… 55回目にあたる男子は記念大会として地域選抜を加えて、58チームが覇を競う予定だったのだが、前代未聞の珍事で実質的には56チームの争いになった。 神奈川代表の藤沢翔陵はスタート直前に第1区のランナーが体の不調を訴えた。そのときすでに補欠の選手たちは沿道の持ち場に散ってしまっていて。欠場あつかいでああるだが……、いまひとつ理由が通らないように思う。それではいったい何のために控え選手をエントリーしているのか。選手ではなく、これは指導者のほうに問題ががありそうである。 もう一校、佐賀代表の白石は1区のランナーがレース途中で体調不全を訴えた。こえはスタートしてからの不測の事故だからしかたがないところか。(2004/12/27) ★開催日:2002年12月26日(日) 京都市・西京極競技場発着 男子:宝ヶ池国際会議場前折り返し7区間49.195Km 女子:烏丸鞍馬口折り返し5区間 21.975Km ★天候:午前10時(女子) 晴 気温12.4度 湿度56% 南の風2.2m 正午(男子) 曇 気温11.0度 湿度54% 北東の風2.5m ★女子:諫早チーム (太田有希、金子麗、松本由香里、松永明希、高田鮎実) ★男子:仙台育英チーム (佐藤秀和、我妻伸洋、S・ワンジル、伊藤一行、釜石慶太、佐藤昭太、梁瀬隆史)
区 間 最 高
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