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エチオピアが3区から独走!
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(2008.11.23) |
勝負は3区で決した!
地力の差というべきか。
終わってみれば大敗である。これといってレースのヤマ場というものがみあたらないうちにトップのランナーは後続を1分以上もびっちぎってゴールにとびこんでいた。
勝負が決したのは第3区だった。男子ランナーによる10q区間、前半のポイントになる区間である。
2区を終わってレースは早くも日本とエチオピアのマッチレースの様相を呈していた。トップをゆく日本と2位のエチオピアとの秒差はわずか2秒、ほとんど肩をならべたまま3区にはいったのである。
流れと勢いからゆけば連覇をねらう日本に分があった。
1区ではエチオピアのアブドッシュが区間賞をさらったが、日本の中尾勇生もよくねばって7秒差にくいついた。
2区では小林祐梨子がラストスパートで前をゆくエチオピアを交わしてトップでタスキをつないだのである。
小林の勢いを駆って3区のランナー岡本直己はスタートした。だがエチオピアのデブレメスケルは19歳とおもえぬ落ち着いた走りをみせた。岡本の後ろにピタとつけてはなれない。岡本をペースメーカーに見立てて、前半をゆっくりと入ったのである。
2qのラップは5:32、岡本にしては少し早いか。両者の隊形はかわらぬまま膠着状態で3q、4qとすすんでゆく。
よやくレースが動いたのは5qすぎからだった。
デブレメスケル満を持していたのか。前に出た。岡本はついてゆこうとするが、いくらか肩に力がはいっている。両者の余裕の差はもはや歴然としていた。
6qすぎになると、その差は一気にひらいた。
岡本は必死にねばっていたが、タスキ渡しでは22秒もの差がついていた。デブレメスケルの巧い走りで、勝負は一気にエチオピアにかたむいていった。4区では1:01、5区では1:10と差はひらき、おりから降り出した冷たい雨のとばりで、前はまったくみえなくなってしまったのである。
1区の後半から雨中のレース
第1区では学生選抜の柏原竜二(学生選抜=東洋大学)が元気のいいところをみせた。1q=2:49というペースながら、トップ集団にくらいつき、一時は集団の主導権をにぎるという果敢な走りをみせてくれた。3qすぎではさすがに力つきたが、その積極性は賞賛されていいだろう。
3qすぎてエチオピアのアブドッシュが集団をわって前に出れば、日本代表の中尾勇生、さらにはもいひとりイギリスがつづくという展開で5qは13:01……。中尾にしてはかなり速い展開になったが、食らいついてゆく。
残り1qになって、曇り空から雨がおちてくる。
予想通り雨中のレースになりそうな気配……。最後はやはり地力の差が出たというべきか。5000mでベストタイムの持ち主、アブドッシュが前に出す。中尾が粘りをはっきするのだが、差はじりじりとひろがってゆく。タスキ渡しでは1位のエチオピアと2位の日本との差は7秒、このぐらいの差なら、持ちタイムからみて、中尾は健闘したというべきだろう。
1区を終わって候補の一角といわれたロシアは14秒おくれの6位につけたが、アンカーに北京オリンピック・マラソン優勝のトメスクをもつルーマニアはなんと55秒おくれの11位と大ブレーキ、速くも圏外に去った。日本勢では学生選抜は16秒おくれの7位、千葉選抜は25秒おくれの8位という結果だった。
快走! 2区では小林祐梨子が奪首!
かくして小林祐梨子が登場する2区に突入するのである。
福士加代子が故障でひかえにまわってしまい、今回の目玉はメンバーのなかで最年少19歳、この小林祐梨子ということになってしまった。
昨年は同じ19歳の絹川愛が区間賞の走りをみせて、逆転優勝の足がかりをつくったが、今回は小林の走りに注目があつまった。北京オリンピック5000mではわずかの差で決勝進出をのがした19歳である。世界の舞台を踏んだ経験をどのように、レースに活かしてくれるのか。駅伝にはそういう楽しみもある。
7秒差でトップをゆくエチオピアのウツラは世界ジュニア5000mのチャンピオンである。いつになく小林はゆっくりしたはいりであった。駅伝ならばいつもハナからすっとんでゆくのだが、むしろ後ろからやってきたオーストラリア、イギリスにもつかまり、ひとたびは4位にまで順位をおとすというありさまである。
だが、そういうことは織り込みずみだといわんばかりに小林はあわてなかった。最初はゆっくりと入り、すこしづつあげてゆくという作戦をとった。このあたりが世界の舞台で学んだ成果というものだろう。
小林はすこしづつ追いあげてきて、3.1qでエチオピアの背中にせまる。慌てたのはエチオピアのウツラのほうだった。夢から醒めたようにスパート、差をひろげようとするのだが、心理的には慌てたぶんだけ小林に優位にたたれてしまった。中継所まえで小林はラストスパートできっちりとウツラをとらえて、堂々の区間新記録である。
小林は豊田自動織機にありながら、社内留学で岡山大学に学ぶという変わり種。そのたまに勤務実態がないという理由で実業団駅伝への出場がみとめられないでいる。駅伝で出場可能なのは本大会と全国女子駅伝、横浜国際女子駅伝ぐらいなものである。そういう鬱憤を一気にはねとばしたおちうべきだろう。
日本は小林の快走でトップをうばうのである。
ほかでは学生選抜の小島一恵(立命館)の快走がひかった。7位でタスキをもらったが、6位のアメリカ、5位のロシアをぬいて5位まであがってくる。北京五輪5000m6位のロシアのショブホワを抜き去ったのだから、これもまた、みごとというほかない。
エチオピア、若い力で圧倒!
そして冒頭の3区の展開をむかえるのだが、エチオピアはなんともはや強かった。今回のメンバーはジュニアが中心、平均年齢はなんと19.3歳だというのである。
5000m、10000mぐらいの距離ならば、このていどのランナーは掃いて捨てるほどいる。質量ともに世界一の長距離王国、その強さのほどをみせつけられたというべきだろう。
日本もこの時期はベストのメンバーが組めない。実業団は全日本やマラソンがあって、そちらのようが優先する。だからあえてトップクラスの選手は出てこないし、たとえ出場にふみきったところで、ベストの体調ではない。ようするに出てくる選手たちが中途半端なのである。だから小林祐梨子の活躍、学生選抜の活躍がいっそう際立つということになる。
それならば、いっそのこと、高校・大学もふくめて、活きのいい若手だけの選手だけでナショナルチームをつくってみればどうなのだろうか。
健闘したのは4位の学生選抜である。前回5位から、ひとつ順位をあげて4位までやってきた。とくに5区ではロシアとはげしく3位をあらそっていた。3区ではひとたび9位までおちながら、4区の後藤奈津子(日本大学)が快走、区間2位ながら区間新記録で4人抜きで一気に5位まで押しあげてきた。
さらに5区では大西智也(東洋大学)が4qすぎから、オーストラリア、ロシア、イギリスと集団になってはげしい3位争い、8qすぎではとびだして主導権をにぎり、最後までロシアとせめぎあっていた。
ロシアは女子選手だけならばナンバーワンの実力を誇るが、今回はベストの状態ではきていなかった。さらに男子選手もいまひとつなので、3位は順当なところか。
トメスクのルーマニアは男子の選手が弱すぎるようだ。女子だけならばいつも好勝負になるが混合になってからは勢いがつかないようだ。
なんとも豪華の解説陣!
千葉国際駅伝は駅伝世界一をきめる大会というふれこみで20回までやってきた。18回までは男子と女子は別のレースになっていた。だから、かたちのうえでは文字通り世界一をきめるチャンピオンシップの大会というかたちをとっていた。
ところが前回からは男女混合のレースにリニューアルされてしまった。世界で初めての男女混合の駅伝レース、たしかに面白い試みではあるが、そたためにチャンピオンシップの大会という正確はうすれてしまい、どちらかというと国際親善のお遊びになってしまった観がある。
現実に今回は出場チームも15チームから13チームにへってしまった。主宰者側とすればリニューアルで、もりあがるだろうともくろんだのだろうが、現実はその逆になってしまっている。
来シーズンはもうひとつの国際駅伝である横浜国際女子駅伝がなくなってしまう。世界的には競技としての駅伝はあまり人気がないようである。千葉国際も出場チームが減って、やがては休止あるいは打ち切りになる運命かもしれない。
今回もフジテレビの中継に高橋尚子がゲスト解説者として登場してきた。増田明美、金哲彦のレギュラー陣にくわえて、さらに瀬古利彦もくわわった。男女混合のレースだから男女のレギュラー陣が勢ぞろいしたというわけだが、なんとも豪華なかおぶれである。
ベストメンバーの解説陣にくらべて、出場選手のほうはというと、ベストメンバーとはほどとおい布陣だから、なんとも皮肉というほかない。
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出場チーム&過去の記録 |
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関 連 サ イ ト |
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