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力でライバル・立命館ををねじ伏せた!
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(2009.12.23) |
コワイもの知らずの新しいエース
3qをすぎたあたりだった。
まだ中継所まで2q以上もあるというのに佛教大の吉本ひかりがスパート、差はじりじりとひろがった。懸命にくらいついてきた立命館大の竹中理沙だが、みるみる後ろにおいてゆかれたのである。
竹中理沙と吉本ひかり……。ともに2年生である。2年まえまで吉本にとって竹中理沙は仰ぎ見る存在だった。竹中は高校駅伝の強豪・立命館宇治のエースとして知れわたっていた。吉本ひかりの熊本信愛女も高校駅伝では常連校だが、高校時代の彼女はほとんど無名だった。高校2年、3年のときインターハイ3000mに出場したが予選落ち……。高校駅伝では2年のとき1区を走ったが区間11位だった。
高校時代、竹中の戦歴にはかがやかしいものがある。立命館宇治の主将として全国高校女子駅伝では7年ぶりに母校に優勝をもたらした。3年のときには3000mで9分11秒をマーク、国体少年A1500mでは日本人トップになっている。
だが、そんな吉本と竹中が2年後には攻守ところをかえるのだから、人生というものはおもしろい。
大学生のなってから、いまひとつ伸び悩む竹中とは対照的に吉本のほうは俗にいうところの破竹の勢いである。
初制覇の全日本ではアンカー6区に登場して、区間賞の快走で優勝のテープを切った。さらに国際千葉駅伝では学生選抜の一員として登場、最終6区では、あのヌデレバを抜いて区間賞までもぎとった。乗りに乗っている伸び盛りのランナーというべきである。
エリートランナーと伸び盛りの雑草ランナーが、レースの勝敗をわける3区に出てきたのである。
2区でわずかに先んじた立命館宇治……。竹中を追う吉本はわずか0.7キロで追いついた。両者はぴったりと並走、1.5qでひとたび吉本が前に出る気配をみせたのだが、竹中にはピタとはなれない。
二人は並走のまま、後続をぶっちぎり、予想どおり両雄のマッチレースとなった。全日本につづいて佛教大がふたたび立命館を破るか。それとも立命館がリベンジを果たし、7連勝をとげるのか。
次代のエース候補同志の対決にゆだねられたのだが、結果は「時の勢い」がそのまま出てしまった。
コワイもの知らずというべきか。後半は吉本の独壇場となり、なんと立命館の竹中を35秒も引き離して、一気にレースの流れを佛教大によびこんだのである。
頼もしいキャプテンの存在!
佛教大と立命館大のせめぎあい。
第1区からはげしく火花がちっていた。
森唯我(佛教大)と沼田未知(立命館大)といえば、先の全日本では2区で顔を合わせている。あのとき沼田は30秒ぐらい先んじられてしまい、まんまと森にしてやられた。それが最終的に負けにつながった。
沼田にとってはリベンジ……というわけである。スタートから森、沼田、それに日大のキンゴリ・アン、名城大の西川生夏の4選手がはげしくトップ争いをくりひろげた。3qすぎでアンが前に出れば、3.8キロでは沼田が仕掛ける。4qすぎでは西川が落ちて、区間賞あらそいは森、沼田、アンの3人にしぼられた。
ラストの500でアンがスパートしたときに勝負合ったかと思われた。事実、立命館の沼田はここで遅をとった。だが佛教大の森はそこからがしぶとかった。アンにくらいつき、中継所では日大のアンを交わしてしまうのである。
そんなキャップテンの「勝ちたい」という思いが、タスキとともに後続のランナーにひきつがれていったといえる。
佛教大の2区は1年生の森知奈美、日大の後藤奈津子をふりきったが、立命館大の山本菜美子が追ってくる。7秒遅れでタスキをうけた山本は2.4qで森の背後に迫り、2.6q過ぎでトップを奪った。森のデキが悪かったというのではない。ここは区間新をマークした山本のデキがうわまわったのである。
わずか2秒差で勝負は3区のエース区間にひきつがれ、前述の吉本ひかりと竹中理沙の対決にゆだねられたのである。
繋ぎの区間で勝負をきめた!
3区を終わってトップ佛教大と立命館大の差は35秒、追う側にしてみればまだまだ射程圏内である。4区の3q、5区の6q、6区の7.6q区間にはエースの小島一恵を配している立命館にしてみれば、引き離されずにゆけばいいわけである。
ところが佛教大は繋ぎの区間で強かった。4区の石橋麻衣は1qを3:00というハイペースである。立命館の田中華絵が追えども追えども差はつまらない。勢いというものはコワイものである。3区・吉本の勢いに乗っかって、石橋は突っ走った。
4区は3qという短い区間だが、なんと石橋は区間新記録の爆走、追う立命館になんと1分04秒もの差をつけてしまったのである。
5区でも佛教大は竹地志帆が快走した。6qの区間で立命館はアップダウンのコースに強い岩川真知子だったが、ここでも竹地はなんと区間新記録をマーク、立命館との差を1分25秒までにひろげたのである。
最終6区は7.67q……。佛教は西原加純、立命館は小島一恵である。両校を代表するトップランナーである。だが、1分25秒もの大差がついてしまっては、すでにして勝負は終わっている。
小島一恵がいくらロードでは強いといっても、1分をこえる差をかんたんに埋められるわけもない。
だが小島は懸命に追った。駅伝では無類の強さを発揮する。大学4年間で出場した駅伝レースではすべて区間1位をとるだけでなく、区間新記録を更新し続けているのである。
レースの勝負はすでに決していたが、今回も小島は区間新記録を更新するという快走でしめくくった。大学ナンバーワンのプライドをみる思いがした。
大学女子、2強時代の到来!
初優勝の佛教大の強さはきわだっていた。6区間のうち4人が区間賞をとり、3人が区間新記録である。出場した6人がすべて5000m=15分台だというから、もはや史上最強の大学女子チームといってもいい。
15分台の選手が2区や4区といった3q見当のつなぎの区間に出てくるのだから強いのはあたりまえというものである。
1区の森唯我、3区の吉本ひかり、5区の竹地志帆、6区の西原加純、柱になる選手がきっちりと自らの役割を果たしている。だから乗じるスキというものがまるでないのである。
西原加純にくわえて、吉本ひかり、竹地志帆がエースとして成長、来年も佛教大の王座はゆるぎそうにない。
立命館大はまたしても佛教大にやぶれた。だが今回もチームのデキが悪かったというわけではない。相手の佛教大のデキが、わずかに立命館を上まわったのである。来年は建て直してくるだろう。今年以上にはげしいせめぎあいになりそうである。
走破タイムからみても、佛教大と立命館大は、ひときわ抜けた存在で、3位以降のチームを尻目に、次元の異なる戦いをくりひろげていた。
現在の実力ならば、実業団のトップになかにはいっても、たとえば三井住友海上や豊田自動織機を争っても、ほとんど互角にわたりあえるだろう。
もはや他の大学チームでは歯が立たないだけに、いちど実業団チームと同じ土俵で戦わせてみたいものだ。
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出場チーム&過去の記録 |
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関 連 サ イ ト |
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