第13回全国都道府県対抗男子駅伝競走大会



長野が王座を奪還! 2年ぶり4度目の制覇!

 第13回全国都道府県対抗駅伝は1月20日(日)におこなわれ、長野が前回は兵庫に奪われた王座を奪還しました。優勝タイムは2時間21分6秒、2年ぶり4度目の制覇です。本大会で優勝4度というのは最多になります。
 長野は3区の佐藤悠基でトップに立つと、4区と5区の佐久長聖高の佐々木健太、村澤明伸が連続区間賞、追ってくる愛知以下を突き放し、中盤で早々と優勝を決めてしまいました。
 2位には前半から好位につけた知が入り、2連覇を狙った兵庫は3位に終わました。候補の一角とされていた福岡は1区で出遅れて早くも圏外に去ってしまいました。


◇ 日時 1月20日(日)12時30分スタート
◇ 場所 広島市
◇ コース 広島・平和記念公園発着/中電大野研修所、7区間48Km  
◇ 天候:くもり 気温:3.5度  湿度:90%  風:北東0.8m
◇ 長野(千葉健太 臼田稔宏 佐藤悠基 佐々木健太 村澤明伸 両角駿 帯刀秀幸)



4区と5区、高校生の連続区間賞で決めた!
(2008.01.21)

最大のみどころは3区のダブル佐藤対決!

 終始、雨がふりしきっていた。気温2〜3度というから、冷たい雨である。ときおり霙がまじるという最悪のコンディションのなか、そんな過酷な条件に臆することなく、ひたすら前へ前へと躰を運んでゆく選手たちの姿が清々しかった。
 最大のみどころをあげれば、やはり3区の攻防だったろう。佐藤悠基と佐藤秀和、高校時代からライバルだった2人の顔合わせが実現したのである。
 2区を終わってトップをゆくのは福島の安西秀幸(駒澤大学)、2秒遅れで長野の佐藤悠基、悠基から遅れること1秒で兵庫の渡辺和也と愛知の佐藤秀和がつづくという願ってもない展開で3区は幕あけたのである。
 福島の安西が1q=2:40の入りで逃げるのだが、後ろからはダブル佐藤が併走しながら激しく追いあげてくる。
 1.8qで早くもダブル佐藤の2位集団がトップの安西にとりついてしまう。主導権をにぎっていたのは佐藤悠基だった。3qで前に出ると秀和はつづいたが、安西はあっさりと置いてゆかれた。
 悠基と秀和、たがいに意地がある。たがいにゆずらない。息詰まるような併走がつづいたが、主導権をにぎっていたのはやはり悠基のほうだったようだ。5.6qあたりの坂のくだりで前に出ると、秀和はついてゆけなかった。差はじりじりとひろがっていった。
 箱根駅伝で3年連続、しかも年ごとにちがった区間で新記録をつくった地力、悠基のほうに一日の長があったようである。
 だが……。3区の区間賞争いはダブル佐藤の激しいトップ争いの裏側でくりひろげられていた。2区を終わって22位だった広島の岡本直巳が16人抜き、6位までやってきた。さらに……。元旦のニューイヤー駅伝では1区で快走、コニカミノルタ優勝の立役者のひとりとなった北海道の太田崇(コニカミノルタ)が、ここでも爆走、23人抜きで31位から一気にチームを8位に押し上げてきた。
 そして佐藤悠基を加えた3人が、見えないところで区間賞をはげしく争っていた。最後は実業団で勢いのある太田が制したのは、やはり気楽に追っかける立場にあったせいもあるだろう。太田は岡本に8秒、佐藤悠基には10秒先んじて区間賞をもぎとった。
 区間賞こそとれなかったものの佐藤悠基はさすがと思わせる巧走、長野はトップに立った。佐藤の好走で4区以降は長野にとってはまさに理想的な展開になってゆくのである。


本大会ならばこその楽しみもある!

 すでにして路面に水が浮く状態ではじまった第1区、1qの入りは2:50といういくぶんスローで幕あけた。
 先頭集団をひっぱると思われた兵庫の八木勇樹は前に出てゆかない。集団の後方に位置していて2q付近ではトップからなんと4秒も遅れてしまう。
 かわって主導権をにぎったのが福島の柏原竜二(イワキ総合高)であった。かれはインタハイにも国体にも全国高校駅伝にも顔を見せていない。全国的にはほとんど無名の選手だが1区の出場メンバーのなかでは5000mのタイムがいちばんいい。いわば秋以降に急成長したひとりだが、そういう選手を観られるのも、この駅伝ならではの楽しみというものである。
 3qからは柏原がひっぱる展開、大分、長野、熊本などがつづく。兵庫の八木はまだ後方でようすをうかがっていた。4qをすぎて、柏原が抜けだした。そして後方につけていた兵庫の八木がじりじりとあがってきて、長野の千葉健太とはげしく2位争いを演じるのである。
 福島の柏原は前評判どおりの強さを発揮、兵庫が8秒遅れで2位、そこから3秒遅れで長野がつづいた。優勝を狙う両チームは好発進、前評判の高い愛知もトップから19秒遅れの6位につけた。しかし福岡はなんと53秒遅れの30位と大きく出遅れて、早くも圏外に去った。
 2区は中学生区間である。福島(近藤星一郎)が逃げるも兵庫(小川誉高)が激しく追い上げてくる。さらに長野(臼田稔宏)、そして愛知(近並郷)もやってくる。うしろからくる長野と愛知が1.7qあたりで兵庫をとらえた。2位以下の大混戦を尻目に、福島は3秒ながらトップを死守した。
 かくして最初の山場というべき3区をむかえ、レースの流れはしだいに長野にかたむいてゆくのである。


含蓄ある宗茂の言!

 「同じような力の選手がヨーイドンでスタートすれば、あまり差がつくことはない。ところが駅伝のようにバラバラにタスキをもらってスタートすると、思いがけない差がついてしまうことがある。それが駅伝というものだ」
 解説の宗茂の言だが、実に興味深いものがあった。
 4区と5区は、事実そういう展開になっていったのである。
 4区は高校生区間である。逃げる長野は佐々木健太(佐久長聖)、2位の愛知は早川 智浩、3位の兵庫は中山卓也である。実績では兵庫の中山に分があると思われたが、意外や意外……、中山がいがいに伸びなかったのである。
 長野の佐々木健太はトップ効果のせいか、好リズムで逃げた。タスキをもらったとき、2位の愛知とは7秒、3位の兵庫とは24秒だったが、みるみる後ろがはなれていった。昨年はこの区間で区間賞をとっている中山卓也も追い切れないどころか、逆に差をひろげられてしまったのである。
 かくして中継所ではなんと2位愛知との差は20秒、3位の兵庫とは33秒にひらいてしまったのである。
 5区でも長野の村澤明伸が快走した。追う愛知は三田祐介、兵庫は昨年7月の世界ユース(チェコ)3000mで6位になった近藤洋平であった。三田ならばあるいは追い切れるか……と思いきや、意外にも伸びなかった。宗茂がいうように駅伝の奥の深さというべきか。トップの村澤がリズムよく突っ走るのにくらべて、愛知も兵庫もリズムに乗れなくて、じりじりと遅れて、遠ざかっていったのである。
 兵庫にいたっては後ろからきた秋田の伊藤正樹に追いあげられるしまつ、7.1qではとうとうとらえられてしまうのである。


後半の興味はもっぱら入賞争い!

 5区を終わってトップをゆく長野と2位の愛知との差は1分03秒、3位の秋田とは1分42秒、そして最大のライバル兵庫とは1分48秒とひらいてしまい、長野の優勝はほぼ確定的となってしまった。
 優勝は長野と愛知にしぼられたが、3位以降は大激戦であった。3位の秋田から1分以内に、兵庫、神奈川、大分、埼玉、佐賀、岐阜、熊本、千葉、福島、東京、栃木と11チームがひしめいていて、3位争いはおろか、入賞争いも熾烈をきわけていたのである。
 6区を終わってもその傾向に変化はなかった。トップの長野と2位の愛知との差は1分09秒……。3位の秋田から40秒以内に兵庫、埼玉、岐阜、大分、神奈川、佐賀、熊本、千葉、福島の10チームがはいっていた。
 長野のアンカーは帯刀秀幸、ベテランらしく1q=2:55というゆっくりした入りであった。1分以上の貯金があるから、勝負はすでに決している。とにかくトップでゴールすればいいと考えていたのだろう。
 2位の愛知・山本芳弘はそれでも懸命に追っかけていた。興味はむしろ3位争いと入賞争いにしぼられた。
 兵庫の北村聡を中心に大分、佐賀、埼玉、千葉、熊本が4位集団を形成、3位の秋田をとらえて3位集団となってしまう。秋田は3位に踏ん張っていたが、頼みの松宮祐行が前を追うどころか、後続にとらえられてしまってはどうしようもない。兵庫の北村聡、熊本の河添俊司、埼玉の外丸和輝らにさえも遅れをとって入賞さえものがしてしまった。秋田陣営にしてみれば大きな誤算だったろう。
 最終10区の区間賞争いは後方からやってくる福岡の三津谷祐が台風の目と思われたが、相手が見えない戦いに終始したからだろう。3位を激しく争っていた兵庫の北村聡と熊本の河添俊司の争いになり、最後は北村が押しきった。実業団勢の調子がいまひとつとはいえ、北村の粘走は見るべきものがあった。
 レースは終盤になって愛知が猛追、終わってみれば長野におくれることわずか13秒……。だが逃げ切った帯刀にしてみればそんなことは織り込みずみ、あくまで想定内の走りだったのだろう。


両雄対決はいつまでつづくのか?

 長野が2年ぶり4度目の優勝である。このところ長野と兵庫がかわるがわる制覇しているが、いずれも高校生が強いだけに、しばらくは両雄の対決がつづくとみた。
 長野の勝因は佐藤悠基を最終区ではなくて3区に起用したこと。3区で弾みがついて4区、5区の高校生が勢いづいた。とにかく高校生の発憤がみごとであった。高校駅伝で同タイムで優勝を逃した悔しさののせいというものか。佐久長聖高のメンバーはいずれも眼の色がちがっていた。4区から連続2つの区間賞が勝負を決めたといっていい。
 2位の愛知は健闘したといえる。長野、兵庫につづいて福岡とともに両雄を追いかける存在とみられていたが、兵庫にかわって優勝争いを演じていた。1区で好位置につけたことで好リズムをつかんだようである。
 3位に終わった兵庫はいまひとつ勢いがなかった。原因は高校生が流れに乗れなかったことだろうか。
 4位の熊本、5位の埼玉、6位の大分は大健闘、惜しかったのは秋田である。8区までは3位につけながら、最終区で10位に失速してしまった。頼みの松宮祐行が本調子を欠いていただけにしかたなないというべきか。
 期待はずれは15位の福岡である。1区で30位と遅れたのがすべてというべきか。アンカーの三津谷祐をもってにしても25位から15位まで持ってくるのが精一杯だったようである。
 今大会は中学生、高校生にとって大いなる刺激となるレースである。そういう背景もあって、今回から「ふるさと選手」制度も制限枠が取っ払われた。トップクラスの実業団選手や大学のトップも出場しやすくなったといえる。
 だが、男子でいえば最後の駅伝レースである。秋からレースつづきの実業団選手たちは正月の全日本で目一杯のレースをしてきている。本大会はかならずしもベストの状態で出てきておらず、要するにあと一押しが効くかどうか……といったところ。
 そういう意味でたとえば松宮祐行だけでなく、今井正人なんかにしても、いまひとつの出来であったが、それはしかたがないところだろう。むしろ、大会の趣旨をふまえて、あえて出場にふみきった姿勢こそを讃えておきたい。


出場チーム&過去の記録

出場チーム






関 連 サ イ ト

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広島男子駅伝(中国放送)
広島男子駅伝(中国新聞)


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最 終 成 績
<順位 チーム名 記  録
長  野 2時間21分06秒
愛  知 2時間21分18秒
兵  庫 2時間21分34秒
熊  本 2時間22分04秒
埼  玉 2時間22分06秒
大  分 2時間22分16秒
千  葉 2時間22分20秒
佐  賀 2時間22分30秒
福  島 2時間22分36秒
10 秋  田 2時間22分42秒
11 栃  木 2時間23分06秒
12 三  重 2時間23分07秒
13 東  京 2時間23分09秒
14 宮  城 2時間23分38秒
15 福  岡 2時間23分43秒
16 長  崎 2時間23分59秒
17 鹿 児 島 2時間24分01秒
18 宮  崎 2時間24分13秒
19 福  井 2時間24分14秒
20 岐  阜 2時間24分21秒
21 山  口 2時間24分21秒
22 神 奈 川 2時間24分28秒
23 茨  城 2時間24分46秒
24 広  島 2時間24分47秒
25 山  形 2時間25分01秒
26 静  岡 2時間25分07秒
27 大  阪 2時間25分09秒
28 島  根 2時間25分17秒
29 富  山 2時間25分18秒
30 北 海 道 2時間25分22秒
31 和 歌 山 2時間25分26秒
32 岩  手 2時間25分42秒
33 京  都 2時間25分42秒
34 石  川 2時間25分46秒
35 奈  良  2時間26分02秒
36 群  馬 2時間26分04秒
37 鳥  取 2時間26分35秒
38 香  川 2時間26分41秒
39 滋  賀 2時間26分42秒
40 高  知 2時間26分46秒
41 青  森 2時間26分57秒
42 沖  縄 2時間27分06秒
43 岡  山 2時間27分47秒
44 徳  島 2時間27分52秒
45 新  潟 2時間27分53秒
46 愛  媛 2時間27分57秒
47 山  梨 2時間28分04秒



区 間 最 高
区間 距離 選手名 所属 タイム
07.0 柏原 竜二 福 島(イワキ総合高)  20:00
03.0 林  慎吾 長 崎(福江中)  08:44
08.5 太田  崇 北海道(コニカミノルタ)  23:43
05.0 佐々木健太 長 野(佐久長聖高)  14:37
08.5 村澤 明伸 宮 城(佐久長聖高)  24:41
03.0 市田  宏 鹿児島(吉野中)  08:53
13.0 北村  聡 兵 庫(日本体育大)  38:09




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