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その差は3秒、だが力の差は歴然!
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(2008.12.27) |
息づまるアンカー勝負に見ごたえあり!
逃げる立命館大、追う佛教大……。
前回、そして今年の全日本とおなじように京都対決となった。
逃げる立命館にアンカーは1年生の沼田未知、そして追いかける佛教は2年生エースの西原加純である。
5区を終わってトップの立命館と2位の佛教までは20秒であった。
19秒差だった前回とはほぼおなじ秒差だが、今回はおっかける相手がちがっている。前回、トップをゆく立命館は2枚看板にひとり樋口紀子だったが、今回は1年生の沼田未知である。
1年生ながら日本インカレ10000mチャンプながら、西原は2年生の意地にかけても負けられないところだ。事実、西原にしてみれば、昨年の樋口よりも組みしやすいとおもっただろう。
西原は昨年とおなじようにけんめいに追った。走ると色白の顔がポッと赤らんでくる。沼田は我関せず……とばかり無表情で逃げる。ロードを弾む手鞠のように軽快なピッチである。
だが、差はみるみるつまった。3.3qで10秒、もはや背中がおおきくみえてくる距離である。
中間点では9秒……。だが沼田にあせりの色はない。1年生ながら、すべては予定通りといわんばかりに、素知らぬ顔をしている。
最後の1q、差は4秒差までつまった。結着はトラック勝負にもちこもあれるのか?
西原は最後の力をふりしぼる。顔をいっそう紅潮、眼を見ひらいて……。鬼気せまる風貌というべきか。ポーカーフェイスで逃げてきた沼田もさすがに表情がゆがんでくる。だが後ろをふりむかない。
沼田、そして西原……。まさに死力をつくしたせめぎ合いというべきか。
だが……。西原はまたしても主役をうばえなかった。
わずか3秒……。立命館大が先んじて6連覇のテープをきった。
苦しげにゆがんでいた沼田の顔にいかにも1年生らしい無邪気な笑みがはじけた。
前半で抜けだした主力3強!
6連覇をもくろむ立命館大に、佛教大、名城大あたりがいかに肉薄するか? 興味はまさにその一点にあった。相手をみくびっていたというわけでもないだろうが、立命館陣営は前回優勝メンバーの上級生3人をごっそりはずして、6人のうち5人まで1年生を起用してきた。
佛教、名城にしても、つけいる余地は十分にあり……とかんがえるのがふつうだろう。 佛教はだいたいいつも1区で遅れをとるという失敗をくりかえして、チャンスをふいにしてきたチームである。今回、うまく滑り出せば、衆目をあっといわせるシーンは十分あるだろうとみて、とくに1区を注目していた。
立命館の1区は1年生ながらエース候補の竹中理彩、佛教は石橋麻衣、ともに5000mは15:50前後の選手で力の差はほとんどないにひとしい。
1q=3:15、2q=6:30……。スローの展開ではじまり、城西国際、名城、佛教、立命館、京産などがいれかわりたちかわり先頭に顔を出してくる。城西国際の中村萌乃あたりが主導権をにぎろとしたが、集団のまま4qを13:01で通過する。
先頭集団は4q手前で7チームぐらいになり、そのあたりからようなくペースがあがり、満を持していた立命館の竹中がスパート、だが追ってきたのは佛教の石橋ではなかった。京都産業大の伊藤恵だった。
4,8qで竹中は2段スパートをかけるが、伊藤はくらいつき、逆に中継所ではわずか1秒先んじた。伊藤がいかにも伏兵ぶりを発揮して快走、京都産業大は1区で思わぬトップに立つのである。
主力どころでは名城が4秒遅れで3位につけ、佛教大は9秒おくれの5位と絶好の好位置につけた。区間構成が全日本の場合とはちがうだけに、かなりきわどい勝負になることがほのみえてきた。
エース小島が本領発揮!
2区にはいると1qすぎで、トップの京産(賀元あすか)を追ってきた立命(駒井直美)、佛教(平井恵)、名城(浦川有梨奈)が集団になっておそいかかり4校がひとかたまりになる。
1.5qで京産がおくれ、3強のトップ争いとなるが、2.3qすぎて駒井と浦川がぬけだした。両校のはげしい先頭争いがつづいたが、最後は名城の浦川がぬけだした。区間新記録の快走で名城はトップをうばうのである。
トップの名城と2位の立命館との差はわずか秒、佛教大は3位で12秒遅れ……という形成でエース区間の3区が幕あけるのである。
立命館は昨年とおなじようにこの3区にエースの小島一恵を起用してきた。3区で貯金をしこたまつくって、そのまま逃げ込もうとおう思惑である。
名城は西川生夏、追う小島一恵である。小島は今回もまた眼をみひらき、髪をふりみだして阿修羅になった。1qは3:04と速い。後続は京産、佛教、城西国際が集団をなしている。
小島は2qで西川をとらえて並走、2,3qでひとたび小島はゆさぶりをかけるのだが、西川ははなれない。2人のはげしいトップ争いで後続はとんとんとはなれてゆく。
トップ争いに結着がついたのは3qすぎだった。小島がぬけだすと、もはや西川には追いすがる余力はなかった。
立命館大は予定どおりというべきか。3区で今回もやすやすとトップに立って、後続との差をどんどんとひろげていった。
うしろの3位争いを制したのは佛教の森唯我、だが名城との差をつめてきたが、首位の立命館との差は32秒にひらいてしまう。
それにしても、3区の区間新記録が続出である。
区間1位の小島一恵、2位の後藤奈津子(日大)、森唯我、4位の西川生夏、5位の岡部有香里(城西国際)と5人もが区間新記録を出している。トップの小島一恵はなんと40秒も自身の区間記録を更新しているのである。
佛教大はここで32秒と立命館に差をひろげられ、結果的にそれが最後までひびいたのだが、森唯我も区間新記録をはじきだしているのだから、悪い出来ではなかった。小島が速すぎたということだろう。
3区でトップをうばった立命館の4区は田中華絵、追う佛教大は出田千鶴だが、ともに区間新記録で同タイム、差はつまらない。5区にはいって佛教大は吉本ひかりが区間1位で追い上げ、ようやく立命館を20秒差までに追ってくるのである。
かくしてアンカー結着にゆだねられるのだが、20秒というのは微妙な差だけに観るレースとしては最高の演出というべきであった。
3強時代とはいえ、1強がぬけた存在に……。
立命館大は6連覇……。6回大会で6連覇だから、いまだいちども負けていないということになる。小島一恵という絶対的なエースがいるうえに、いかにも選手層が厚い。昨年の優勝メンバーをはずして、あえて1年生を5人もつかってきた。
本来ならば全日本制覇しているのだから、卒業する4年生をはじめ上級生をつかってくるのがふつうだが、昨年のメンバー3人をごっそりとはずしてしまう。それで、負ければ言い訳がたたないところだが、勝ってしまうところに、このチームの底力のすざまじさがある。アンカーの沼田の調子はいまひとつにみえたが、そでれも区間記録を大幅に苦心してしまう。当分は立命館時代がつづきそうである。
2位の佛教大、今回にかんしていえば、失敗はなかった。わずか3秒……、先んじられてしまった。現状にかんしていえば力を出しきって負けたといえる。後半の3区間は連続して1位をうばい追い上げたがおよばなかった。それだけに、逆に3秒といえども、それ以上の力の差があるような印象も否めない。
3位の名城大もアンカーの川井美佳の区間5位、3区の西川生夏は区間4位だが区間新記録を出している、それいがはみんあ3位以内に名を連ねている。それぞれ好走、ほとんど実力通りの走り、相手が強すぎたというべきか。
健闘したのは日本大学だろう。今回も全日本ほどのことはなかったが2人の留学生がまり動かなかった。けれども後藤奈津子が快走、最終区で4位まであがってきた。
5位の城西国際も全日本のときより2つ順位をあげてきた。1区の中村萌乃の飛び出しで流れにのったようである。
逆に順位をおとしたのは東京農業大と玉川大の2校である。前半の遅れを最後まで挽回できなかった。
そえにしても……。
立命館大は強すぎる。勝負はきわどかったが、立命館に強さがひときわきわだち、底知れぬ力をみせつけられた大会であった。
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出場チーム&過去の記録 |
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関 連 サ イ ト |
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