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後半逆転、高校生が活路をひらく!
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(2011.01.24) |
アンカー勝負! あと一押しで勝った栃木
トップをゆくのは宮城、アンカーは日清食品の保科光作、4秒差で栃木の宇賀地強(コニカミノルタ)が追ってゆく。優勝争いは最終区にもちこされた。今年の駅伝を象徴するかのように、優勝のゆくえは最後まで混沌としてわからず、もつれにもつれ、とうとうアンカー決着にゆだねられたのである。
6区をおわってトップ宮城、2位は栃木、そして30秒おくれて長野、兵庫、長崎、京都、鹿児島……8位までがトップから40秒差におさまっていた。アンカーで出来ひとつで、上位はどのように順位が変転とするかわからないという情勢であった。
そんななかで宮城と栃木が頭ひとつぬけたかたちで、優勝争いは、ひとまず両チームのマッチアップというのが順当なところで、30秒差で追ってくる長野の上野裕一郎がどこまで迫ってくるかというのが最大の焦点であった。
最長13qの最終区7区は学生・社会人の区間で各チームともにエースを配しているが、学生も社会人も日程的にかなりきびしいものがある。ここにエースとして登場してくる社会人ランナーはみんな元旦のニューイヤー駅伝をはしってから3週間あまり、学生も箱根駅伝から20日しかたっていない。
同じ全国駅伝でも女子にくらべ男子のほうは、かなり日程的にムリがある。だから女子にくらべ男子のほうはバリバリの第一線があまり出てこない。たとえば男子なら竹澤健介、柏原竜二あたりが出てきてほしいところだが、今年はふたりとも逃げた。それゆえに女子にくらべ、いまひとつ盛り上がりを欠くケースが多いのである。
そんなこんなで新年のレースで燃えつきてヨレヨレになって学生・一般のランナーは、あと一押しがきくかどうかがレースのゆくえを占ううえで大きなポイントになるのである。
あと一押し……となれば、ベテランよりも若さと勢いがモノをいう。宮城・保科と追う栃木の宇賀地とのトップ争いは、まさにそれを象徴するかのようであった。
勝ちたいという意欲、若さと勢い、保科は宇賀地の比ではなかった。宇賀地はタスキをもらってすぐに保科に追いついてしまったのである。
2qでは宇賀地と保科がトップを並走。およそ160m遅れて3位に長野の上野がつづき、鹿児島・入船敏、京都・三岡大樹、千葉・阿久津尚二、兵庫・北村聡らが4位グループをなすという形勢となった。
トップを並走する保科と宇賀地だが、こらえきれなかったのが保科のほうであった。3.8qあたりで差がじりじりと開きはじめたのである。宇賀地がスパートしたわけではない。保科のほうがついてゆけなかった。地滑り的というべきか、自ら落ちていった。かくして宇賀地の独り旅となり、あっけなく勝敗は決したのである。
かわって長野の上野がけんめいに追ってはきたが、20秒差までくるのがやっとというありさま、この長野と栃木の勝負は第6中継点ですでにして決していたというべきだろう。
箱根のスターたちの競演!
本大会のレースのポイントは3つにわけて考えられる。第1ステージは1区〜3区、第2ステージは4区〜6区、第3ステージが7区である。
節目となる3区、6区を終わった時点で、通常なら主導権をにぎるチームが判明するのだが、今回は史上まれにみる乱戦模様というべきか、容易に流れがみえてこなかった。
高校駅伝のもうひとつの花の1区というべき第1区(7q)、暮れの高校駅伝に出場機械のなかった有力ランナーが手ぐすねをひいてまちかまえているという伏線もあり、そういう意味でみどころ十分であった。
レースは1q=2:50〜2:54というペースで幕あけ、横長の大集団を形成、高校駅伝1区区間賞の兵庫・西池和人、岐阜の浅岡満憲らがひっぱり、王座奪還をねらう長野の臼田稔宏、栃木の八木沢元樹、鹿児島の市田孝らが集団のなかで機をうかがうという展開でたんたんとすすんだ。
集団がタテ長になりはじめたのは6qあたりから、兵庫・西池、栃木・八木沢、秋田・浪岡健吾らをふくめ10人ほどになり、このあたりで鹿児島・市田孝、長野・臼田らは先頭集団から脱落していった。
最初に仕掛けたのは宮城の村山紘太、だが中継所を目前にして栃木の八木沢がスパート、一気に村山をかわして、そのまま中継所にとびこんでいった。
栃木、宮城、長崎、兵庫、秋田、山口、青森、京都と10秒内でつづき、前評判高い鹿児島は21秒おくれの15位、長野は31秒遅れの22位でつづいた。
2区では好位置につけていた兵庫が2.5qでトップに立った。2位は栃木、3位長崎、そして4位には11抜きの鹿児島があがってきて、トップとは10秒差、だが長野は40秒差の26位といぜん低空飛行がつづいていた。
兵庫が主導権をにぎれるかどうか。ひとえにポイントとなる3区・八木勇樹のデキにかかっていた。だが、このレースでも八木はいまひとつピリッとしたところがなかった。
1.5qで長崎の宮原卓と栃木の的場亮太に追いつかれてしまう。眼をシロクロさせて喘ぐ姿がなんともやるせなかった。後ろからは同じ大学生の長野・村澤明伸(東海大)がごぼう抜きで猛追してくる。
兵庫の八木は6qでひとたびが先頭集団から遅れるが、後ろからやってきた福島の星創太とともに、もりかえしてきて、7.7qあたりでは再びトップに出る。後ろからは長野の村沢がやってきて3位、新潟の長谷川裕介(上武大)も順位をあげてくる。さらに8qすぎになって、後ろから追い上げてきた神奈川の矢沢曜(早稲田大)がトップ争いに加わってくる。
村澤は24人抜き、矢澤は17人抜き、そして長谷川は11人抜き、奇しくも箱根駅伝のスターたちの競演となった。
最後は兵庫の八木がスパート、なんとか長野の村澤をふりきってトップをまもったが、2位以降はいぜん秒差でつづくという大混戦、トップの兵庫から10位の大阪まで、わずか13秒、16位の福岡までもわずか25秒というありさまであった。
かくして第1ステージでは兵庫がトップにたったものの、主導権をにぎるまでにはいたらず、第2ステージに突入していったのである。
明暗を分けた中盤の攻防!
4区・5区は高校生の区間である。
大混戦の様相になか、最初に仕掛けたのが長野・上倉利也であった。0.3qでトップの兵庫・後藤雅晴をとらえて待望の奪首に成功するも、オーバーペースぎみ、順位をあげてきた栃木の塩谷桂大に2.8qでつかまってしまった。3位以降も大混戦の様相で長崎の林慎吾が浮上してきた。
好リズムで快走したのは栃木の塩谷で、3.5qで長野・上倉をふりきり、トップでタスキリレー、2区、3区でおくれた栃木がふたたび台頭してきた。2位には宮城の加藤光我浮上して12秒差、長野は3位で14秒差、以降は長崎、青森、京都とつづき、ここまでがトップから22秒差であったが、兵庫はここで大きく遅れをとりトップから55秒遅れの19位、鹿児島も20位でトップから1分も遅れて、ともに優勝戦線から脱落した。
5区は栃木・横手健がトップ、2位には宮城・村山謙太がつづき、長崎・井上大仁、青森・大下稔樹、長野・福澤潤一の3人が2位グループをなし、6位には京都・小山陽平がつづくという展開ではじまった。
宮城・村山がトップをゆく栃木・横手との差を詰め、3,6qでは村山が横手に追いついて並走にもちこんだ、4qでは村山が横手を引き離したが、横手も粘ってゆずらなかった。5qでは横手が追いついてふたたび並走状態となる。
村山は腹痛で苦しげな表情、だが5,5qでふたたびスパート、単独トップに立つも腹痛のせいか決定的な差をつけられなかった。
かくして宮城がトップに立つも、2位の栃木との差はわずか6秒、3位には大健闘の京都がやってきて39秒差、兵庫は7位、長野は8位で、トップからはおよそ50秒差と、いまひとつ調子があがってこないという状況であった。
8区の中学生区間では、トップをゆく宮城に栃木が迫ったものの4秒差、3位以降は34秒遅れで千葉、およそ40秒ほどで候補の長野、兵庫がつづいた。この時点でアンカーの顔ぶれかれみて、まず栃木の優位は動かぬところだったが、なんとも微妙な位置関係というべきで、いぜんとして優勝への道筋が混沌としたまま、第3ステージのアンカー勝負に突入していったのである。
ここでも高校生の活躍が光る!
優勝した栃木は勢いがあった。
高校生区間三つのうち二つの区間賞をもぎとった。2区から3区にかけては、ややリズムを欠いたが、4区、5区の高校生区間で競り勝ち、最終区も、今季好調の宇賀地強がうまいレース運びで押しきった。宇賀地の「あと一押し」を引き出す舞台をつくった高校生の活躍が初優勝をもたらしたといっていい。
2位の長野は最終的に2位までやってきたが、優勝争いに絡んでの結果ではないから、あまり評価はできない。前半のもたつきで流れに乗れなかったようである。3区では村澤の快走で2位までやってきたが、栃木とは対照的に4区、5区で致命的な遅れをとってしまった。
広島は最終的に3位までやってきた。鎧坂哲哉の14人抜きの快走がもたらしたものとはいえ、さすがと思わせられた。
4位の京都は大健闘というべきだろう。前半から終始、上位にくらいつき、後半もよく粘った。顔ぶれからみて4位なら実力以上の結果を出したといえる。
5位の三重も大健闘、アンカー高林祐介の16人抜きで、ここまでやってきた。6位の長崎もつねに上位から落ちなかった。総合力が活きた結果といえそうだ。
前回優勝の兵庫は2区〜3区でトップに立ったが最終的に7位、5区〜6区でトップに立った宮城は最終的に8位にとどまった。しかし、ともに優勝争いを演じての結果だから長野や広島よりも讃えられるべきだろう。
冒頭でものべたが、男子駅伝の場合、日本のトップクラスの顔がそろわない。混戦になるのは、ひとえに傑出した選手が出てこないからであろう。最後まで眼がはなせなかったという点で、観るレースとしてはたしかに面白かったが、何かいまひとつ喰い足りなさがのこった。
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