2009年4月9日

Perfume-ワンルーム・ディスコ

会社の帰りにWalkmanでMassive Attackを聞きながら、週刊文春を読んでいた。近田春夫の「考えるヒット」がPerfumeの新曲「ワンルーム・ディスコ」を取り上げていたのだ。まるで近田春夫は2ちゃんねらーの様に「そろそろ作戦が必要なとき」「つくりはかなり普通のポップスより」などと変化を求めているのはいかがなものか。俺のこの曲への印象はどんどん変わっている。これはPerfumeの楽曲の多くに言えることであるが、音の重なりが凄くてちょっと聞いたぐらいでは分からないのである。それが「スルメ曲」と言われるゆえんであり、聞くたびに発見があるのだ。また音の重なりのため、なるべく良いオーディオ機器で聞くことが推奨だ。分離の良い装置で聞かないと細かい作り込みが聞けない。もちろん団子状の音でも鑑賞は可能であるが、その場合の曲の印象は表層的になる。近田春夫の連載のように。ひょっとして近田先生、老化で細かい音が聞こえなくなってる?

また中田ヤスタカの歌詞は、相変わらずはっきり語らないことにより想像力を働かせやすくなっている。俺の解釈はTEKUNOTTE774さんとほぼ同じだ。尤も後段の深読みは同意しないけど。田舎で彼氏と同棲していた(結婚していた?)女の子が都会(たぶん東京?)に出てきて一人暮らしを始める歌なのだろう。ディテールを聞けば決して新社会人や新入生への応援歌ではないのだが、聞き流せばそう取れないこともないのがうまい造りになっている。軽く聞き流せば楽しそうなJPOPなのだが、裏には不安と痛みが満ちている。この辺もTEKUNOTTE774さんが「音の裏側に隠された痛み」として書いてらっしゃる。聞けば聞くほど単純なJPOPからは遠いことが分かるだろう。中田ヤスタカの歌詞は古今集の和歌のように、ベールを被っている歌詞だ。はっきり言及しないことでシルエットの様に浮かび上がらせる手法は日本的なんだろう。

さて、近田春夫の見方が浅く見えるのは、カップリング曲によってPerfumeはどんどん幅を広げている事実があるからだ。アルバムGAME以後のシングルに入ってるカップリング曲である、「edge」「願い」「23:30」だが、見事にPerfumeの幅を広げていないだろうか。こう並べてみると「edge」がある意味GAMEの延長線上にあり、分かりやすいのだが「願い」や「23:30」はどうだろうか。俺の予想ではパキパキのテクノは一年前にやったし、edgeも武道館でやった。代々木のキー曲はこの二曲なんじゃないか。ライブでどう料理するのかが見物である。どちらもダウナー系というか、けだるい曲である。特に「23:30」はトリップホップというか、Tracey ThornがMassive Attackとやった「Protection」みたいな感じかなあ、と思ったのだがそこまでダウナーじゃないね。Tracey Thornのアルトボイスとは違って、Perfumeの三人の声はキラキラ感があるし、テンポもそこまでゆっくりではない。ただし明らかに彼女たちにとっては新境地であろう。

これもまたTEKUNOTTE774さんの受け売りになってしまうが、Perfumeのシングルはカップリングで一つの世界、と考えた方が味わいが増す。「23:30」でけだるく「そうねえ、愛して」と言っていた彼女の後日談が「ワンルーム・ディスコ」なんだろう。空元気も宜なるかな、ってところか。こういうバラードはJPOPの文法からは外れているんじゃないのかなあ。「願い」も「23:30」もPerfumeが驚くような曲調であったようで、それってきっと良いことなんだろう。ファンが過去の記憶をなぞって満足するような曲じゃないことは良いことだ。

Massive AttackやEverything but the girlのブリストルは20年以上前に仕事で行った場所だ。お客さんの喋ってることの半分も聞こえずしょんぼりしていたのを覚えている。今回のシングルは半分ぐらい聞けただろうか。

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