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三つどもえの優勝争い! 富士通が制す!
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(2009.01.06) |
なんともレベルの低いアンカー勝負!
いったい、どういうことなんだ!
ようやくレースがうごきはじめたのはのこり500mにさしかかったときだった。1区から7区まで、99.5qを駈けてきて、最後の最後になって、やっとトップ集団3人の勝負駈けがはじまったのである。これじゃ、まるでジャンが鳴ってはじめて眼がさめたように動き出す競輪とおなじではないか……とおもってしまった。
レースのゆくえを残り500mのスプリント勝負に賭けたのは日清食品の大西雄三、旭化成の足立知弥、富士通の松下龍治の3人であった。
3チームによるせめぎあいは7区にはじまったわけではなかった。5区(15.9q)、6区(11.8q)から、びっしりと肩をならべて、きびすを接してきたのである。3チームが牽制し合って、秒差で前後するという展開が、なんと40q以上もつづいたのである。
なぜ、そんな退屈なレース展開になってしまったのか。
5区で3チームが抜け出す格好になって、後続とのあいだに1分の差ができてしまい、優勝争いがこの3チームにしぼられてしまったからである。
後ろからは誰もやってこない。かくして3チームによる護送船団方式ができあがってしまったのである。
とくに7区の3.4qすぎ、大西、足立、松下の3人がダンゴ状態になり、肩をならべてたがいに相手の顔色をうかがう。ペースがあまりにもおそすぎる。選手たちもわかっていたのだろう。後ろが気にかかるのか、大西が松下がさかんにふりかえる。だが、誰もやってはこない。安心したうえで成立したのが、ゴールまで仲良くゆきましょう……という護送船団方式なのだ。
12qすぎになって、さすがにたまりかねたのか。松下が様子をうかがうかのように、スパートぎみにひとたび前に出る。だが、大西がピタとついてきて、またまたひとかたまりになる。集団は容易にくずれないのである。
そして15.2qからにわかにペースアップ、最後の500mをむかえるのである。大西が猛然とスパート、足立と松下がついてゆく。
スプリント勝負! 仕掛けた大西に分があるか……と思いきや、松下がピタと背後にくっついてはなれない。追いすがる松下を大西がつきはなそうとする。凄まじいばかりのラストスパートの掛け合いである。
勝負が結着したのはゴール直前であった。それまで大西の背後についていた松下が最後の最後にするりと前に出た。そこにゴールテープがあった。観るぶんにはけっこうおもしろかったが、その戦いぶりはあまりにも消極的で、レベルの低いアンカー勝負というほかはない。
それにしても……。
どうして、そんなふうになってしまったのか? 遠因を探れば日本人ばかりで幕あけた第1区にあった。
まるでジョギングじゃないの?
1区は超スローペースで幕あけた。
4qが12:01……。解説の誰かがジョギングに近いペースだと言っていたが、観ていてもまるでスピード感がない。当然のように出場ほとんどのチームがひとかたまりのダンゴ状態になってすすむ。
北京オリンピックが終わって、いままさに新しいスターの出現を待ち望んでいるときだだというのに、これはなんということだ。誰も自分から仕掛けない。少なくとも、これから世界をめざそうとする者が、こんな消極的な姿勢ではいったいどうするのか。はっきりいって日本男子のマラソン、長距離の将来はない……。新年早々からためいきが出てしまった。
外人選手たちを特定の区間に押し込めてしまったせいもあるのだが、これではまるで逆効果としかいいようがない。
レースは日清食品の北村聡、JALグランドサービスの安西秀幸らがひっぱる展開、6qすぎて旭化成の大野龍二が先頭をうばい、北村、安西のほかにコニカミノルタの松宮隆行らがつづくというかたちになるが、いまひとつペースはあがってこない。
選手たちがようやく本気モードになったのはのこり1qあたりからである。
安西、松宮、北村、大野が抜けだしてトップ集団を形成、2連覇をねらうコニカミノルタの松宮がスパート、旭化成の大野が追ってゆく。両者のはげしくトップあらそったが、大野が競り勝って、12qの手前でトップに立って、そのまま中継所にとびこんだ。
コニカミノルタ、日清食品の順で秒差でつづき、候補の中国電力は17秒差の7位、富士通、Hondaはともに19秒差の8位、9位……とまずまずだったが、トヨタ自動車は21秒差の11位、トヨタ紡織は25秒差の15位とやや出遅れた。
2区は外人特区、なんと区間1位から19位までを占める!
8.3qの2区は1区と最長距離の4区から閉め出された外国人選手の特区である。19人もの外国人選手が、この2区に勢ぞろいするかたちになった。
3位でタスキをうけた日清食品のG・ゲディオンがすぐにトップをうばってしまう。1qのはいりが2:36というから、1区のスプリットとはわけがちがう。黒人選手たちがどんどんと前に出てくる。1区で遅れたチームも2区の助っ人で上位進出をはかろうとする。 たとえば小森コーポレーションのJ・ダビリは13位から一気に追い上げてきて、HondaのJ・ジョルソとともに並走しながらトップをうかがう位置までおしあげてくる。
区間の中盤をすぎると、上位はすべて黒人選手たちが占めている。観ていてなんとも異様な光景であった。
そのあおりをくって、日本人選手を起用したチームは、この2区でおおきく順位を落とす結果になる。たとえば1区でトップに立った旭化成なんぞは1分46秒おくれの11位、中国電力は18位まで落ちてしまう。
終わってみれば、なんと区間19位まではすべて外国人選手という信じられない結果になってしまった。もはや日本人選手たちは外国人選手と戦う意思がまるでないようである。主催者側にしても、外国人特区をつくること自体、ハナから外国人と競わせることを放擲してしまったというしかない。
なんとも肝っ玉がちいさく姑息な手段というべきで、これでは世界はますます遠くなる。
めまぐるしい首位の変転ぶり!
2区で大幅に躍進したのは小森コーポレーションでJ・ダビリ快走でトップから12秒おくれの2位までやってきた。Hondaもジョルソで16秒差の3位まであがってくる。さらに日立電線、JFEも4位、5位と順位をあげた。だが、コニカミノルタは頼みのムワンギは調子があがらなかった。逆にトップから1分あまりもはなされてしまったのは誤算だったろう。
かくして1区、2区をおわって、3区から再びヨードン……である。
1区と2区はお遊びで、ここからが本番……というわけで、各チームは3区に主力クラスの選手を配している。
2区でトップに立った日清食品は徳本一善だが、いまひとつピリッとしない。はるか後ろからは中国電力の佐藤敦史が順位をあげてくる。1q=2:39ではいり、3qではすでに5人ぬきの13位まで……。
テレビに映るアリアではトップの徳本を追ってHondaの石川末廣がじりじりと追ってくる。コニカミノルタの太田崇、さらには富士通の福井誠、旭化成の岩井勇輝樹が上位にやってくる。
Hondaの石川が徳本を猛追、7.7qでとうとう背後に追いついてしまう。徳本は苦しくなり、もうついてゆけない。8qでとうとうトップの座をあけわたした。
後続は9qすぎでコニカミノルタの太田が3位にあがり、富士通の福井、旭化成の岩井とつづいた。中国電力の佐藤だが終盤になってペースダウン、11位まで順位をあげるのがやっとだった。
中盤になっても大混戦! 見えない勝負のゆくえ
今回のコース変更で4区(22.3q)が最長区間となった。
3区でHondaが奪首に成功したが、10秒差でつづいていた日清食品の保科光作がすぐにHndaの堀口貴史の背後にピタとつけた。2qすぎで保科がやすやすとトップを奪ったが、そこからの順位あらそいはめまぐるしかった。
コニカミノルタ(山田紘之)、富士通(藤田敦史)、旭化成(佐藤智之)がはげしく3位争いを展開したが、後ろからトヨタ自動車の浜野健がおってきて、3.6qでは4人が3位集団を形成する。さらに後方では中国電力の伊達秀晃が9位集団をひっぱってあがってくる。
11qすぎになって、小森コーポレーションの秋葉啓太があがってきて3位集団に追いついてくる。
トップの日清を追う3位集団の動きが勢いづくなかで、15qすぎになって、2位をゆくHondaの堀口の左足に異変が発生、15.5qでは3位集団にとらえられ、ずるずると交替してゆく。
トップの保科もペースダウン、2位集団がトップに肉薄、19qで11秒差となって、にわかに緊迫してくる。秋葉がペースをあげ、富士通の藤田がつづいて2人が集団を割った。 そして21qでとうとう保科をつかまえてしまうのである。小森コーポレーションの秋葉啓太はさらにラストスパートで藤田をふりきった。
5区からは3チームによる護送船団方式
4区を終わってトップが小森コーポレーション、1秒遅れで富士通、10秒遅れで日清食品、21秒遅れで旭化成……とつづき、5位以降とは55秒以上の差がついてしまう。3区でトップに立ったHondaは堀口のアクシデントでトップから1分12秒遅れの8位まで落ちていった。中国電力も1分32秒おくれの9位と伸び悩み、もはや圏外におちていった。
5区にはいって、小森、富士通、日清が集団になったが、さらに4位の旭化成が肉薄、トップ集団はダンゴになったが、6.8qで小森が脱落、富士通、日清、旭化成が最後まではげしいつばぜり合いがつづいた。
15qすぎで日清の座間紅弥がスパーとしたが、富士通の太田貴之が15.6qで先頭に立ち、ここで富士通がはじめてトップを奪う。
それにしても……。
1区から5区まで、トップはめまぐるしく変転した。1区が旭化成、2区は日清食品、3区はHonda、4区は小森コーポレーション、5区は富士通……というありさまである。
だが5区を終わって、トップ富士通から3位の旭化成まではわずか4秒、4位以降は1分30秒も遅れてしまい、3強対決の構図ができあがってしまう。コニカミノルタも中国電力ももはやこない……というなかで、6区以降の護送船団方式ができあがるのである。
事実6区をおわっても3強はトップから7秒差のなかにおさまっていた。コニカミノルタが坪田智夫の区間賞でやってくるのだが、もはや遅すぎた。11.8qの区間距離で51秒もの差があってはいかんともしがたい。
かくして冒頭でのべたアンカー勝負が幕あけるのである。
キーワードは新旧交代
富士通は前半はがまんをかさね、中盤いこうに勝負をかけた。藤田敦史の執念というべきか。太田貴之、座間紅弥、阿久津尚二、松下龍治……という箱根出身の若いメンバーが力をフルに発揮した。区間賞は誰ひとりとれなかったが、誰ひとりとしてミスはなかったのが勝因というべきか。9年ぶり2度目の優勝である。新しい力が着実にそだちつつあるとみた。
日清食品はまたしても2位に甘んじた。毎回のように優勝候補にあげられながら、今回もあと一歩に肉薄しながら、わずかにおよばなかった。だが優勝した富士通よりも底力がありそうである。勝敗はまさに時の運、今回は運がなかったというべきか。
健闘したのは3位の旭化成である。
1区の大野龍二、3区の岩井勇輝、5区の佐々木悟の3人が区間賞、2区の瀬戸口をのぞいて全員が区間4位以内につけている。惜しくも優勝をのがしたが、富士通、日清との実力差はない。新旧交代が成功して、古豪復活なったとみておこう。
2連覇をねらったコニカミノルタは4位におわったが、こちらのほうは新旧交代にすこし苦しんでいるようだ。
中国電力はベストの布陣が組めなかったようだが、やはり新しい力の台頭がいまひとつの感じがいなめない。とくに前半の大きな出遅れが致命傷となった。
東日本の予選を制覇して、今回こそは……と期待感も高かったHondaはひとたびトップをうばったものの、今回もカンジンカナメの中盤でブレーキー、8位に沈んでしまった。最近の駅伝は実力伯仲時代だから、ミスがあれば勝てない。潜在能力を秘めたチームだけに惜しまれる。
北京五輪が終わって、新しい局面をむかえるなかでの初めての駅伝、今回は奇しくも「新旧交代」がキーワードになったようである。
だが……。
外国人選手と競わない、競わせない仕組みをあえてつくっているようでは、世界で戦える選手など出てくるはずがない。そんな姑息な駅伝をやって何の意味があるのか。新年そうそうから、なんともはや後味のわるかった。
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