|
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|
|||
|
|
全日本実業団女子駅伝の行われた12月18日(日)は日本列島に寒波が襲来、日本海側だけでなく中部地方以西は、この時期にしてはめずらしい雪が来た。岐阜・名古屋地方は38年ぶりの豪雪となり、名古屋城は雪に埋まっているかのようだった。本大会の行われた岐阜も例外ではなく、スタート前から激しい吹雪……。何やら波乱含み予感させる空模様であった。 レース中も雪は断続的に降りつづき、トップのランナーが競技場にやってくる直前になって、また、にわかに激しい吹雪となった。テレビ画面が吹雪で白くかすむなか、最初に競技場に現れたのは三井住友海上の大山美樹であった。渋井陽子をはじめ出迎えたメンバーが歓喜の声、大山はゆうぜんとグラウンドを一周、ゴール瞬間に微笑んだ口もとから、白い歯がこぼれていた。バンザイするかっこうでかざした両手、指を3本、雪空に向かって突き立てていた。 3連覇、5度目の全国制覇! かくして三井住友は全盛期だったあのワコールの記録とならんだのである。 出場選手の顔ぶれをみるかぎり、今年は小粒の観はまぬがれず、目玉になりそうな注目選手をあげれば三井住友の渋井陽子、ワコールの福士加代子ぐらいなものであった。 3連覇をねらう三井住友に2年連続で肉薄している京セラの3度目の正直なるかどうか。ほかでは上げ潮傾向の第一生命、ホクレン、資生堂、ワコール、天満屋あたりに一角崩しがあるかどうか。見どころをあげれば、ざっとそのあたりであった。
雪がふりしきるなかでのスタート……。 結果的にみて、レースは1区の出足の良し悪しで決してしまったようである。 大方の予想どおりにスタートからレースをひっぱったのはホクレンのO・フィレスであった。上昇ホクレンの牽引車の役割を果たしてきたこの19才の新戦力は、東日本大会と同じようにスタートからトップに立ち、たちまち後続をぶっちぎってしまった。 追っかけてゆくのは九電工のワルグルだけで、あとは後方集団を形成、そのなかに候補といわれる主力はすべてふくまれていた。 4qの通過は12分あまり、早い。区間新ペースである。雪中のハイペースのせいか、4qすぎで遅れはじめたのは、なんと京セラの小川美智子、かんじんの勝負どころで置いてゆかれゆかれてしまった。 予想通りというべきかフィレスがすっ飛ばして、2位を27秒ぶっちぎった。後につづく集団は三井住友の高山典子がひっぱっていたが、残り1qで天満屋の中村友梨奈がスパート、乱戦を制して2位でとびこんだ。 1区における主力チームの位置どりをみると、三井住友は32秒遅れの7位とまずまず。ところがライバルの京セラはトップから1分11秒遅れ、三井住友からは40秒遅れの19位と大きく出遅れてしまった。そのほか資生堂はその三井住友から21秒遅れの11位、第一生命は同じく1分02秒遅れの13位、ワコールは15位と、そろいもそろって後手を踏んでしまう。これではまったく勝負にならない。 ライバルたちがそろってスッコケてしまい、こうなると三井住友にとっては、まさにおあつらえ向きの展開である。前をみつめてじっくり攻めてゆけばいい。 結果的に出遅れた京セラ、第一生命、資生堂などの主力チームは上位にあがってくるのが精一杯。とうとう最後まで優勝争いに顔を出してくることはなかった。雪中の1区の攻防がすべてだったのである。
前半は予想通りというべきか。北海道ゆえに雪には強いということではなかろうがホクレンが突っ走った。フィレスにつづいて2区では根城早織が区間賞、橋本歩の6人抜きの快走で2位にあがってきた三井住友との差を35秒にひろげた。 トップに手がとどくところまでやってきた三井住友に較べ、京セラは出遅れショックで完全にリズムを失っていた。2区で頼みとする杉森美保がなんと区間10位という信じられない凡走、ここで息の根を絶たれてしまった。資生堂も第一生命ものびてこない。 首位攻防の見どころというべき3区、三井住友は渋井陽子でホクレンの赤羽有紀子を追いあげてくる。渋井は日立のR・ワンジルを引き連れる格好で追撃、3.8qでワンジルに交わされて順位をひとつ落とすのだが、粘りに粘って、トップのホクレンとの差を18秒までに縮めた。さすがはエースという走りであった。 みどころがあったのは9qすぎからのホクレン・赤羽と日立のワンジルのトップ争い。渋井を振り切ったワンジルは7.6qでトップのホクレンに4秒差まで迫り、9qではトップをとらえるのだが、最後まで抜かせることはなかった赤羽、その勝負根性を讃えておきたい。 3区の渋井で18秒差までトップに肉薄した三井住友は予定通りの展開というべきか。繋ぎの区間というべき4区で石山しおりがあっさりと奪首に成功、5区の大平美樹で独走態勢をかためてしまうのである。 繋ぎの区間に石山のようなランナーを配することができるところに、三井住友の選手層の厚さ、チーム力の分厚さがある。かくして4区を終わったところで資生堂は1分02秒遅れの5位、京セラは1分37秒遅れの11位、第一生命は1分43秒遅れの12位と、いぜん下位に甘んじていたから、まったく勝負にはならなかった。
5区のみどころは福士加代子であった。 福士にとってはこれが今シーズン最初の駅伝レースである。ワコールにとってはまさにスーパーエースの登場だが、4区を終わった時点でワコールはトップの三井住友から2分23秒遅れの17位と下位にあえいでいた。 福士がどこまで追いあげるのか。トップ争いとは別の次元で、福士が何人抜きをやるのか……に焦点がしぼられた。 帰ってきた駅伝娘! 福士は期待通りの走りをみせてくれた。前をゆくランナーを次々と拾い、8.5qでは12人抜きで5位まであがってきた。 微笑みをふりまきながら、いかにも楽しげそうである。その後もペースダウンすることなく、10.7qではとうとう3位までやってきたのである。なんと14人抜きの激走、トップの三井住友とは1分49秒差、2位の天満屋までは22秒……。もし前半の出遅れがなかったとしたら、ワコールは首位にきわどく肉薄していただろう。福士ひとりでそこまでもってきたのである。 駅伝がスピード化して、さらに選手の実力が平準化されてから、長丁場の区間といえども2ケタの追い抜きというシーンはあまり見ることができなくなっている。それだけに福士の激走はきわだっていた。 白い歯をみせ、微笑みながら一人、またひとりと追い抜いてゆく。駅伝の醍醐味を満喫させてくれる福士の完全復活を喜びたいと思う。
三井住友の勝因は、やはりめぐまれた持てる戦力だろう。選手層の分厚さにおいては他の追従をゆるさない。三井住友を倒すチームとみていた京セラが3度チャレンジして3度とも敗れた。 優勝を争いの一角とみられていた京セラは4区から6区のランナーが健闘、最終的に5位までやってきて、なんとか面目を保ったが、今回に関するかぎりは完敗であった。前述のように1区の遅れがすべて……であった。資生堂もアンカーの弘山晴美の激走で4位まであがってきたが、それが精一杯であった。 期待を大きく裏切ったのは第一生命か。前半から低空飛行がつづき、最後まで浮上できずじま。13位に沈んでしまった。京セラと同じく1区の出遅れがチーム全体のリズムを失わせたようである。 それにしても京セラと第一生命の崩れかたは尋常ではない。まさか季節はずれの雪のせい……とは、言わないだろうな。 逆に1区でつかんだ好リズムを生かして大健闘したのが天満屋である。中村友梨香の1区3位のタスキを受けて、完全に流れに乗った。大砲はいないが堅実にタスキをつないで、常に上位で戦っていた。 3区の沖電気も大健闘である。前半は目立たなかったが、4区の山元本愛(区間3位)、5区の宮内洋子(区間4位)、6区の宮内宏子(区間4位)の3人の走りが光っている。 ホクレンは6位に終わったが、1区と2区で区間賞、4区の前半まではトップを走っていた。さすがに後半は息切れしたが、チーム力は確実に上昇している。 ワコールは福士加代子の激走で5区で3位まできたが、最終的は8位に終わった。野田頭美穂、鈴木亜弥子、風間友希という本来ならば主力になるはずの選手を欠いているだけにしかたのないところかもしれない。このあたりがパンとしていれば、三井住友海上といえども安穏とはしていられないだろう。 対抗馬がいずれもいまひとつ伸び悩んでいるだけに三井住友の王座はしばらくつづくのかもしれないが、もし王者を倒すチームがあるとすれば、京セラよりも、むしろ戦力がととのったときにワコールかもしれない。 ★開催日:2002年12月18日(日) 岐阜県/長良川競技場発・着 6区間42.195km ★天候:吹雪 気温-0.4度 湿度86% 北東の風4,97m(12時現在) ★三井住友海上チーム (山典子、橋本歩、渋井陽子、石山しおり、大平美樹、大山美樹)
区 間 最 高
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() |
|
| Home | 駅伝Home | 駅伝ひとくちメモ |駅伝BBS | 駅伝オフ時評 |
|
Copyright(c) 2002 Takehisa Fukumoto All rights reserved. . |
|