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京都が8区で岡山を逆転! 3強対決を制す!
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(2008.01.12) |
双子の姉妹久馬悠、萌がともに区間賞!
最初から全速……といえば、まだ記憶にあたらしいだろう。
箱根駅伝の東洋大を初優勝にみちびいたあの1年生ランナー・柏原竜二のスタイルである。監督の指示をはねとばして、あくまでも自己をつらぬいた。若くして走る求道者というべきか。
もうひとり……。最初はゆっくり……という監督の指示をふりきって、最初からすっとばしていった選手がいた。柏原よりもはるかにわかい。15歳の中学生である。
京都の8区に登場した久馬萌、昨年もおなじ区間に登場し、47人のうちただ一人10分を切った。堂々の区間新記録であった。
3年生になった今年も8区に登場してきた。
久馬にたすきがわたるまで、京都と岡山がせりあっていた。4区から秒差の勝負でがっぷり4つに組んでいた。だが、岡山が先行、どちらかというと時の勢いは岡山のほうにあった。
だが、京都は7区の伊藤紋が岡山との差を3秒までにして、8区の久馬萌に勝負をたくしたのである。
8区の中学生区間は3区とともに、いままではつなぎの区間とされてきた。だが、岡山と京都が僅差で競り合う今回は、8区が勝敗をわけるポイントの区間になってしまった。ここに久馬を配していた京都にとっては願ってもない展開というべきか。
久馬はたすきをかけるのももどかしげに、ハナからすっとんでいった。小柄だがダイナミックな走法でぐんぐんと躯をまえにはこんでゆく。まるで中距離走者のようなおおきなストライドである。
200mにも達しないうちにまえをゆく岡山を抜きさってしまった。後半に坂があるというのに、最初から全力でいった。1qが2:58、中間点が4:36、2qは6:20である。とても中学生の走りではない。
後ろははなれる一方であった。あるいは……と懸念された後半の坂も勢いでおしきってしまい、なんと9:41というとんでもない区間新記録……である。
姉の久馬悠も3区に登場して区間賞だから、姉妹そろって区間賞をかっさらっていったこちになる。
かくして8区を終わって、2位の岡山とはなんと54秒も差がついていた。京都と岡山は2区から20秒ぐらいの幅で順位をあらそってきたのに、最短の3q区間でなんと54秒も差がついてしまったのである。
かくして苦しんできた京都は8区の中学生・久馬萌の快走で、5連覇をたしかなものとしてしまったのである。
今年もアンカーに登場した小島一恵(立命館大学)は、54秒もの貯金をもらい余裕の走り、わずか1秒差で区間賞こそのがしたが、楽々と優勝のテープをきった。
岡山と京都が1区から火花を散らす!
昨年は1区で勝負が決してしまった。そのせいもあるだろう。各チームともに1区には主力をつかってきた。1区の走者47人の内訳は、実業団選手30人、大学生7人、高校生10人である。
1qのはいりが3:11とおそかったのは気温8度ながら湿度が59%とひくく、肌寒かったせいか。岡山の中村友梨香(天満屋)、宮崎の永田あや(豊田自動織機)、京都の木崎良子(ダイハツ)らを中心にて、2qをすぎてもひとかたまりですすむ。
中間点は9:30……、永田、中村、木崎が集団をひっぱるかたち、3.4qあたりではトップ集団は16〜17チームとなり、優勝候補の一角、兵庫がおくれはじめる。高校生の中道早紀をつかってきたのでしかたがないところだが、兵庫にとっては2区に小林祐梨子を配しており、1区と2区をセットで考えているとすれば、多少遅れるのも織り込みずみだったどうが、ちょっとはやすぎる。
兵庫はともかく千葉の堀江知佳(アルゼ)がおこで遅れはじめたのは誤算だったことだろう。
4,5qののぼりになって岡山の中村が主導権をにぎる。中村がトップにたち、京都の木崎良子、埼玉の後藤奈津子(日大)追い、、山梨の飯野摩耶(第一生命)、馬目綾(福島)、新居真希(山口)らがつづいたが、愛媛の清家愛(シスメックス)はここで置かれていった。
中村がスパート、木崎が肩をなれべ、後藤、飯野がつづく……。4人がぬけだすかたちになっが、最後は木崎と中村のたたきあいになった。たがいにトップをゆずらずに肩をならべたまま中継所にとびこんだ。
同タイム……。区間賞はわずかに先んじた中村がもぎとったが、木崎も好走したといえる。岡山と京都、はやくも最初から熾烈なつば競り合いとなった。
1区で健闘したのは3位にきた埼玉、4位の山梨、5位の山口……といったところ。埼玉はもちろん、山口、山梨も前半上位にふんばったのは1区で好リズムをつかんだからだろう。
意外だったのは優勝候補といわれた兵庫の32位(48秒おくれ)、愛知の34位というところ……である。
小林の力走で兵庫が浮上! 3強対決の様相!
2区にはいって京都の早狩実紀と岡山の小原怜(興譲館高)がトップ争い、背後から山口の宮崎翔子(豊田自動織機)、埼玉などが追ってきた。
1qで京都、岡山、山口がトップ集団を形成、はるか後ろからは兵庫の小林祐梨子が今年も後方から猛然とおいかけてくる。2q=6:12というハイピッチで21人ぬき、先頭からも姿がみえるようになる。
2q手前で京都の早狩は岡山の小原、山口の宮崎についてゆけす、じりじりと遅れ始める。トップ争いは小原と宮崎にしぼられたが、最後は高校生の小原が競り勝った。
小林はその後も勢いがおとろえず、最後は京都の早狩もぬいて、なんと29人抜き、2年ぶりの区間賞の兵庫はトップから14秒おくれの3位までやってきた。
京都の4位(トップ岡山から23秒おくれ)は誤算だったろう。昨年は2区で独走態勢をきずいてしまったが、早狩が区間28位とくのはほとんどブレーキといってもいい。だが、京都の低迷でレース自体はおもしろくなった。
2区で驚異の追い上げをみせた兵庫の勢いはとまらなかった。
3区の中学生区間で渡辺真央が1.4qで岡山をとらえてトップをうばってしまう。そのうしろから京都の久馬悠がひたひたと追ってくる。
綾部中の久馬悠は8区に出てくる久馬萌の双子の姉で昨年も京都の4連覇に貢献している。今回ももうぜんと飛び出してゆき、残り850mで京都が岡山をぬいて2位にあがり、残り300mでは兵庫をもとらえてひとたびトップに立った。だが兵庫もゆづらなかった。中継所では兵庫がわすかに1秒ほど先んじた。
3区をおわってトップの兵庫から3位の岡山まではわずか12秒……。いよいよ3強対決の構図が鮮明になってくるのである。
中盤は岡山が主導権をにぎる
4区から6区にかけては岡山の健闘がきわだっていた。あるいは京都の5連覇危うしテ……という局面もあった。それだけ岡山の各ランナーのリズムがよかった。
3区のの勢いからゆけば4区では京都が抜け出すだろうと予測された。京都の4区は小崎まり(ノーリツ)である。昨年も小崎はこの4区に登場して、追ってくる岡山、兵庫の息の根をとめてしまったのである。
だが……、今年の小崎は昨年の勢いはなかった。トップをゆく兵庫の高校生・籔下明音(須磨学園)に離されてしまうのである。ようやく東大路の登りで差をつめはじめ、百万遍あたりでは4秒差まで迫るのだが、後ろからやってくる岡山の重友梨佐(天満屋)がはげしく追いかけてくる。
2.8qでは兵庫と京都、岡山の差はほとんどなくなってくる。ここで京都の小崎がトップに立つのだが、重友が猛追してきて、残り1qで京都の小崎は逆転をゆるして、9秒も先にゆかれてしまうのである。
2区の早狩といい、4区の小崎といい、京都はベテランがどうもピリッとしない。苦戦の理由はそこにあった。
5区になると岡山の浦田佳小里(天満屋)、を京都の夏原育美(立命館宇治)と兵庫の川上夏紀(須磨学園)がならんで追い上げる。京都が強かった。跨線橋のあたりで夏原は兵庫をふりきって、浦田にせまるのだが、相手は実業団の選手である。区間賞こそもぎとったものの、流れはかわらない。
中盤から愛知が猛追、7区で3位まで浮上!
6区も岡山は逃げた。久保木亜衣が逃げてリードをひろげ、京都の近藤好がけんめいに追うのだが、差はつまらない。
7区のおなじように岡山の堤愛華が快調だった。前半からすっとばして差をひろげにかかったが、京都の伊藤紋は冷静だった。ひとたび差はひらいたものの後半の2.8qあたりから追い上げにかかり、残り1qで10秒、残り500mでは7秒と猛追、最後は3秒差までつめよって、ようやく追撃ムードをつくって8区にタスキを渡すのである。
中盤からの躍進がめだったのは愛知である。兵庫とはげしく3位争いを演じ、跨線橋でとうとう兵庫をふりきってしまうのである。
愛知の追う上げはそれにしても驚異的であった。
1区で34位と大きく出遅れた愛知は2区で21位まで押し上げると3区で19位、4区では伊澤菜々花(豊川高)が区間2位で10人抜き、一気に10位までやってくる。
さらに5区の加藤麻美(豊川高)が区間3位で6位、6区の中條宏美(ワコール)も区間4位でつづき4位にあがった。
そして7区ではやはり豊川高の下村環加が区間3位と力走、とうとうトップの岡山から1分41秒遅れながら3位までやってきたのである。高校駅伝で優勝した豊川高の主力がこぞって快走、みごとというほかない。
7区を終わった時点で、トップ岡山と2位の京都まではわずか3秒、3位の愛知、4位の兵庫までは1分30秒以上の差がついてしまい、かくして京都と岡山のマッチレースとなるのだえる。
圧倒的な戦力! 京都をやぶるのははたして!
京都の勝因はやはり選手層の厚さにあるだろう。大学駅伝の覇者である立命館大、高校駅伝の強豪・立命館宇治の主力をごっそりかかえ、数年前から中学の強化もすすんでいるから中学生も全国でも上位クラスにある。今回のように実業団勢に多少まぎれがあってもゆるがない。
今回は8区の中学生・久馬萌の快走が光ったが、たまたま展開のうえで彼女の出番がまわってきただけ。勝因のだいいちは圧倒的な戦力の分厚さにある。昨年の優勝メンバーが9人のうち7人をしめているのだから、負けようがないのである。
2位の岡山は大健闘したといっていい。とくに今回は7区までは完璧なレースぶりだった。8区の中学生で逆転されてしまったが、力の差からいってしかたのないところ。むしろ兵庫を抑えて、京都をあれほど苦しめたの戦いぶりを賞賛すべきであろう。
3位の兵庫も候補らしい戦いぶりだった。今年のチームは高校生中心で実業団選手が一枚足りなかったようである。
4位の熊本、5位の福岡は最後は地力でとびこんできた。ほかで健闘したのは埼玉だろう。1区で好位置につけ、中盤でも上位にふんばっていた。今回は実業団選手はわずかひとりである。高校生、大学生中心でここまできたのは大健闘である。
さらに最終区では10位まで順位をおとしたものの、愛知も大健闘したといっておこう。1区で34位とおおきく出遅れながら、7区では3位まで押し上げてきた。アンカーに高校生をつかわなければならないというチーム事情さえなければ、まちがいなく入賞していたはずである。
終わってみれば京都が勝つべくして勝ったという感じだが、他のチームも着実に力をつけてきている。京都も安閑としてはいられないだろう。展開次第では岡山、兵庫、愛知、とわどい勝負になるだろう。
最近の駅伝は各チームともに実力接近というよりも、各選手の力がパラレルになりつつある。圧倒的に図抜けた存在がすくなくなってきている。実業団、大学生、高校生の場合も、たとえトップクラスであっても駅伝ではその日の調子次第でどうなるかわからない。
とくに本大会のように最終9区をのぞいて、4qから6qという短い距離をつなぐレースではそれほど大きな差がつかない。だから……。短くても中学生の区間で大きな差が出来てしまい、それが勝負の分かれ目になる。来年以降、ますますそんな傾向が強くなってゆくように思える。
今回のケースはその予兆かもしれない。
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出場チーム&過去の記録 |
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関 連 サ イ ト |
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