2010-2011 駅伝時評エピローグ

 テレビ中継のある駅伝レースは今シーズンしめて14本ありました。そのうち13本を本時評でとりあげました。昨年から駅伝シーズンは10月から1月の4カ月となっています。駅伝はウインタースポーツとはいえ、およそ1月あたり3.5レースという超過密スケジュール、時評子としても,、とくに11月kら翌1月にかけては息がぬけません。
 
 今シーズンの駅伝レースは相対的にみて、各大会ともに、いまひとつ盛りあがりを欠いていました。総じて各チームの実力が接近というよりも、全般的に小粒になり、低レベルでの平準化という流れがとまらないというありさまです。
 観るレースとして面白かったのは、やはり大学3駅伝で、今年は早稲田大学が出雲。全日本、箱根を相次いで制し、ひさしぶりに学生3冠
に輝きました。


世界がどんどん遠くなってゆく!?
(2011.06.03)

 駅伝の今シーズンの駅伝は、2011大邱(韓国)世界陸上を目前にひかえ、さらには2012年のロンドンオリンピックを視野においての大会であった。それゆえに選手たちにとっても、陸上競技ファンにとっても、前途に夢をもてるかどうか。もっぱらの興味はその一点につきた。
 とくにファンとしてはメダルをねらえるようなニュースター登場を期待していた。だが結果から先にいうと、今シーズンもまた世界レベルからみると、きわめて低調なままに終始してしまった。
 ロンドンオリンピックにむかう日本のマラソン・長距離陣にとって、いったいどんな未来あるのか。夢を育む希望の萌芽があるのか。注目してみまもったのだが、その期待はみごとに裏切られてしまった。
 世界を舞台にして戦える大器といおうか。いまはまだ原石でもいいのだ。とにかく若くて伸びざかりの選手が出てきてほしいと切望したのだが、ないものねだりだったことがなんとも口惜しいのである。

 男子も女子もいまは過渡期に突入してしまった観がある。それは駅伝レースの頂点をなす全日本大会をみれば明らかである。
 男子の「全日本実業団駅伝」は今シーズンも最後までもつれる激戦となった。前々回前回大会と同じく、ゴール直前まで優勝争いがくりひろげられ、最後はトヨタ自動車が富士通、日清食品グループの三つどもえ戦に競り勝ち、初の栄冠にかがやいた。
 トヨタ自動車は32回目の出場にして初制覇である。中部地方代表が制覇したのも初めてのケースである。コニカミノルタ、中国電力は凋落傾向が目立ち、前回の覇者・日新食品、前々回の覇者・富士通、それに今回の覇者・トヨタ自動車を加えた新3強の時代になりつつある。
 いずれのチームも絶対的なエースという存在を欠いており、レースのたびに順位はめまぐるしく変わりそうなほど、選手の質は均質化し、チーム力も平準化している。ひところは大学時代はスターであっても、実業団のトップとくらべれば、かなりの落差があったのに、最近では入社1年目からでもレギュラーになれる。悪いことではないが、ひるがえって考えてみれば、それほど実業団の選手層は薄くなり、レベルが落ちてしまっているのである。
 実業団女子もいまだ過渡期にあるようだ。全日本実業団女子駅伝は記念すべき30回目をむかえたんだが、いろんな意味で曲がり角にさしかかる日本女子の長距離のありようを象徴するかのようなレースいなった。今回もまた大乱戦となり、1区、2区、3区、そして4区にさしかかっても、さっぱり勝負の行方がみえてこないというありさまであった。
 乱戦を制したのは天満屋である。19回連続19回目の出場での初制覇である。女子の場合も、ざっと見わたして、抜けた力をもつチームがなく、最近では猫の目のように優勝チームが変わる。割拠の時代に突入した。
 王者・三井住友海上は土佐礼子が引退、渋井陽子という絶対的なエースの力が落ちて凋落、資生堂も弘山晴美のいたころのチーム力と比べものにならない。福士加代子や赤羽有紀子など、いまもエース的存在にあるが、渋井や土佐もふくめて彼女たちは10年もまえから日本のエースだった。現在もエースとして君臨していることが、すでに異常な現象というべきで、裏を返せば、彼女たちを脅かす新勢力の台頭がなかったということになる。
 彼女たちがいまだ注目をあつめるようでは長距離日本女子にとって、明るい未来はないだろう。20歳前半の勢いのある選手が出てきて、早く彼女たちを引退に追い込んでほしいのである。
 マラソン・長距離にかんするかぎり、世界はどんどん遠くなってゆく。男子だけでなく、女子までもがである。

 学生3駅伝は観るレースとして、今年もそれなりに興味深いものがあった。今シーズンは早稲田大が10月の出雲選抜駅伝、同11月の全日本大学駅伝をともに大会新記録で圧勝、その勢いはとまらず、年あけて箱根も復路で東洋大を逆転、「3冠」を達成した。
 学生3冠は1990〜91年の大東大、2000〜01年の順大に続き史上3校目であった。東洋大は今シーズンも山の神・柏原竜二の快走で往路を制したが、復路では早稲田大に競り負けて、3連覇の夢はついえてしまった。
 早稲田は分厚い選手層にモノをいわせたという感じで、黄金時代が幕開けた観があり、当分のあいだ、大学駅伝は早稲田を中心にまわりそうである。
 勢力地図もぬりかえられ、明治、東海、青山学院などがシードチームとして安定感を増す一方、かっての雄・日本大学、山梨学院大学、神奈川大学などがシード権にとどかず、大東文化大学、法政大学、順天堂大学などは浮かび上がってもこれないというように様相は一変してしまった。

 大学女子では昨年、立命館大から王座をうばった仏教大学が、王者の走りをみせ、大会新記録で圧勝した。史上5校目の連覇達成である。
 レースは終始、仏教、立命館という京都の2強によるマッチアップで、他の24校とはまるで別次元の空間で覇を競っていた。2強とほかとではあまりにも実力差がありすぎるようであった。
 大学女子にかんしていえば、今年から選抜大会がなくなってしまった。スポンサーがつかなくなったせいだろうが、それは首都圏から筑波みたいなところにコースを移したかからだろう。
 岐阜でおこなわれてきた全日本実業団女子駅伝も来シーズンから仙台に移るというのだが、スポンサーとの関係は、はたして大丈夫なのだろうか。
 それにしても駅伝大会が、ひとつ、また、ひとつと、歯がこぼれ落ちるかのようになくなってゆく。昨シーズンは横浜国際、今シーズンは全日本大学女子選抜……。そのうち全日本大学女子駅伝も同じ仙台でやるのだから、合体してしまえ……などというような乱暴な議論にならないのだろうか。はなはだ心配である。

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