朝もやの中、イエローストーンへ向けて、ジャクソンホールを出発。まもなく「シェーン」の舞台となった平原や、山があるグランドティートン国立公園を通る。グランドティートンは、ジョン・フォード監督がこよなく愛したところだという。幾度となく西部劇の舞台にもなっている。グランドティートン山や、その他の山々は霧に隠れて姿を見せない。途中ハンティングに向かう一行に出会う。彼らはオレンジ色のジャケットや、ベストを身につけている。誤って人を撃つことのないようにとの配慮からだろう。
グランドティートンを北に抜けると、すぐにイエローストーン国立公園に入る。その頃には、空もすっかり晴れ絶好の行楽日和となった。イエローストーンは10月末には閉鎖される。今回は何とか間に合うように日程を組むことができた。ところが公園内のホテルや売店はすでに閉まっていて、すっかり冬の準備が整っている。ただでさえ広い公園内には売店、レストランなどの場所が少ない。おなかを空かせてやっと探し当てた売店も、すでに閉店している。昨夜降ったのだろう、道路脇の日陰には雪が残っている。
一口にイエローストーンと言っても、その表情はさまざまである。ムースやバイソンの遊ぶ広野を縫って流れる、いく筋もの川。ある場所ではやさしく、またある場所では勇壮な滝を作り、岩を削る。グランドキャニオンと呼ばれる深い渓谷。そこかしこに間欠泉があるノリス。流れ出た硫黄が固まり、テラスを作っているミネルバテラス。
そこかしこにふんだんに温泉が噴き出している。これが日本だったら、「何とか大温泉郷」「なんとか観光ホテル」などとなり、一大温泉地として開発されているところだろう。じっさいこれだけふんだんに湧いている温泉を見ると、このまま流してしまうのは惜しい気がする。観光開発はともかくとして、希望者が入れる温泉があっても良いのではないだろうか。その昔のインディアンたちは、温泉に浸かるということはしなかったのだろうか。また、日本の山の中の温泉には、傷ついた獣たちが傷を治しにやってくる話も聞くが、ここの動物たちはしないのだろうか。
公園内の宿泊施設は、今シーズンの営業を終了している。今夜の泊りはいったん公園のエントランスを出て、ウエストイエローストーン。
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