「そろそろ出かけようか」と夫に起こされ、眠い目をこすりながら支度をする。時計を見たのは、車に乗り込んでからだった。昨夜の「6時出発ね」という彼の言葉を信じていたわけではないが、これほどとは.......。時計の針は4時ちょうどを指していた。途中財布を忘れたことに気がつき引き返し、結果的に、4時半出発ということになった。 うとうとしていると「写真、写真」と、夫に起こされる。車は、オーレムから100マイルほど南下。最初の目的地アーチーズ国立公園まで、約50マイルにまで近づいている。どこまでも続く荒野。その向こうに、赤い岩肌を露出した山々が迫って来る。絶好の被写体とばかりにシャッターを押すが、車が進むに連れますます素晴らしい景色になっていく。こんなことをしていては、フイルムを何本使うかわかったものではない。ちょっと良い景色だからといって、やたらに写真を撮らないようにしようと何度も話し合ったのに......。 途中トイレ休憩で立ち寄ったビューポイントはこれまでのところとちょっと様子が違っている。自動販売機は金網でしっかり囲まれている。トイレットペーパーは回らないようになっている。ホルダーが回らなければ、必要以上に紙を使うこともない。その上、ホルダーには鍵がかけられている。
朝食が早かったのでそろそろ昼食をとろうと思うが、ガスステーションも街もない。そうしているうちにアーチーズ国立公園にの入り口につく。イエローストーンは公園内の売店で軽食を販売していた。ここにも何か簡単なものがあるだろうと入ったのが間違いだった。園内はトイレ以外何もなく、空腹を抱えたまま2時間近く......。
公園を出て5分、デニーズを見つけて入る。夫は念願のTボーンステーキ、私はステーキとシュリンプを頼む。
日が落ちると辺りは闇になり、遠くに見える灯を頼りに走る。雨は上がり、月が出ている。月はようやく半分の大きさに回復してきたところである。かすかな明かりを頼りに、ようやく目的のホテル「」を探し当てる。暗くて全体は分からないが、大きなモニュメントの中腹にある。日中はモニュメントバレーを一望できる、眺めの良いロケーションにある。チェックインのついでに明朝のモニュメントバレーツアーの予約もする。ガイドブックには3ドルと書いてあったが、このホテルのツアーは30ドルとなっている。ガイドがついて、一般車は入れないところまで連れていってくれるという。 ホテルのロケーションと、雰囲気は十分満足の行くものである。しかしここの従業員たちときたら、Thank youを言うのに、にこりともしない。私の英語が下手なので馬鹿にしているのかと思ったが、ほかの客たちにたいしても同じ顔をしている。このホテルの従業員はすべてナバホインディアン。彼らどうしでもほとんど笑顔は見せない。どうやら感情をはっきりあらわさない人たちのようである。
長い一日が終わろうとしている。昨日まではYやKの庇護のもとにあったが、今日は二人だけで行動している。ガソリンも入れた。食事もした。ホテルも取った。夫は出発前「言葉の通じないアメリカに行くより、日本で旅行したほうが良い」と言っていた。今日一日が終わる頃には「今度来るときはもっと時間を取ってゆっくり回ろう。おやじやおふくろも連れてこよう」などと言うようになっている。かなり強引に私が決めた今回の旅行だが、結果を待つまでもなく大成功であると言って良いだろう。 |