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トップで上尾運動公園グラウンドにもどってきたのは今年も立命館大だった。アンカーの小黒久子の横顔には淡い笑みがこぼれていた。 3連覇をめざした先の全日本で名城大に敗れてから、立命館大のメンバーたちは2日間にわたって涙にくれたという。 立命館大にとって本大会は、王座奪還をもくろむリベンジの舞台というべきであった。 小黒久子は先の全日本でもアンカーをつとめている。だが、彼女にタスキが渡った時点でトップをゆく名城との秒差は約50秒……。勝負はすでに決していた。 ところが……。 今回は立場が逆転、5区を終わったとき、立命館がトップ、2位は城西大で42秒差、ライバルの名城大とは、1分28秒もの大差がついていた。小黒久子と追っかけてくる名城の三宅裕子の走力の比較からゆくと、もはや勝負は明らかであった。この時点で立命館大は選抜3連覇をほぼ手中にしていたのである。 1区4位、2区3位、3区2位……、トップからつねに10秒差以内をキープしていた立命館は本大会の勝負どころというべき4区で一気にトップを奪い、繋ぎの5区で優勝への足がかりをしっかり築いてしまった。 全日本につづいて今回もエースの池田恵美を欠いてはいた。スーパーエースはいないのだが、誰が出てきても、それぞれが安定した力を発揮する。チームとして奥の深さを感じさせる戦いぶりであった。 小黒久子はゴールの瞬間、満面の笑みをうかべていた。右手の指を3本立てて、王座奪還のテープを切った。瞬時その横顔に恥ずかしそうな表情がゆらいだが、それには理由がありそうだ。その瞬間こそ、まさに2ヶ月前に訪れるはずだった……という想いがふと脳裏をかすめたのだと思う。
全日本チャンプの名城大か、それとも立命館大の巻き返しがあるか。選抜には良績ある城西大が割り込んでくるのか。勝負のみどころはもっぱら3強の動向にしぼられていた。 なかでも昨秋の全日本で悲願の初制覇をとげた名城大にとっては、まさに真価を問われる大会であった。ところが今回、名城は全日本で勝負を決めたスーパーエースの佐藤絵里を欠いている。佐藤ぬきで王座がまもれるかどうか。もともと浮沈のブレ幅の大きいチームだけに、そこのところが踏ん張りどころといえた。 一方、全日本で名城に敗れた立命館は今回もまたエースの池田恵美を欠いての出場となった。両チームともに今回はエースを欠いている。条件はまったく同じになった。そういう意味で総合力が問われる勝負になったのである。 名城は1区と2区に中尾真理子、田中真知という主力を投入してきていた。前半勝負の布陣で立命館を一気に突っ放す作戦とみた。 立命館は1区に樋口紀子を使ってきた。本来なら3区に使うはずの樋口をあえて1区に投入してきたのは、おそらく先の全日本の結果が伏線になっていたのだろう。樋口はエース区間の3区で名城の佐藤絵里に名をなさしめている。人一倍責任を感じているであろう彼女の悔しさを一気に炸裂させようというネライがあったとみる。 名城と立命館……。第1区から火花が散った。 名城の中尾真理子がひっぱる展開で幕あけた第1区、立命館、大体大、日大、東農大、城西、九州学連選抜などが一団でつづく。 3.9qで立命館の樋口がトップに立つも、4qすぎからは大体大の山下沙織追ってきて、樋口ともに飛び出す……という展開、だが主導権をうばうまでにはいたらない。最後は中尾と山下のトップ争いとなり、800m学生チャンプの山下のスプリント力がいかんなく発揮された。 立命館は5秒遅れの4位、城西は9秒遅れの5位と好位をキープしたが、仏教大は42秒遅れの10位、京都産業大学は1分30秒あまりも遅れて18位、この時点ではやくも圏外に去った。 2区は3qと短い区間だが順位変動はめまぐるしかった。立命館の才上裕紀奈が1q手前で大体大をとらえてひとたびトップに立ったが、名城の田中真知、城西の岩村聖華が追ってきて3校による激しいつばぜり合いとなる。最後は田中真知の地力がモノをいったが、2位の城西とは8秒、3位の立命館までの差は9秒……と、名城にしてはもくろみどおり決定的な差を奪えなかった。
名城は2区でトップを奪ったものの主力チームは、ほとんど差がなくつづき、勝負は3区、4区の攻防にゆだねられた。 3区で勢いのあったのが立命館と城西である。丸毛静香と大谷木霞といえば、立命と城西の主力選手だが、併走しながらトップの名城を追い、2.3qで名城の佐藤麻衣子をとらえてしまう。奇しくも候補3チームが集団を形成するかたちとなったが、ここで主導権をにぎったのが城西だった。4.3qで名城がじりじりと脱落、樋口と大谷木のマッチレースとなったが、ここは余裕を残していた大谷木が最後で伸びた。 立命館は手堅く11秒差の2位につけたが、名城は30秒遅れとなってしまい、イエローランプが点灯した。 3区の区間賞は主力3校のトップ争いとは無縁の玉川大の五十嶺綾である。区間新記録の快走で14位から一気に6位まで押しあげてきた。 4区にはいると立命館が地力を発揮した。 立命の4区の走者は矢口衣久未、ひたひたと城西に詰めより、3qでついに逆転してしまうのである。トップに立った立命館は2位の城西を一気に突き放し、第3中継所では34秒差、ライバルの名城には1分以上の差をつけてしまう。勝負はこの3区で一気に立命館に傾いたといっていい。 中盤でのせめぎ合いが、最終的に勝負の明暗を分ける結果になった。実績のある丸毛静香と最近好調の矢口衣久未を3区、4区に配することのできた立命館の分厚さがモノをいったようである。
立命館の勝因はなんといっても選手層の厚さだろう。このチームにはエースの池田恵美を欠いてもカバーできるほどの総合力がある。全日本を池田抜きで戦っているから、今回も池田が走れなくても動揺というものがなかった。 対照的に名城のほうは、佐藤絵里を欠いて、チームとしての求心力を失ってしまったようである。さらに前半の1区、2区で立命を引き離す作戦に出たのだが、トップを奪いはしたものの、思ったほどリードをひろげられなかった。敗因はそんなところだろう。 ネライがはずれて、もとの浮沈のブレ幅が大きい、本来の姿にもどってしまった。意気消沈したというわけではなかろうか、最終区ではなんと6位まで順位を落としてしまった。 健闘組のいちばんは大阪体育大学である。最終区の堀岡智子の踏ん張りもあったが、名城を上回る3位はみごと。4位の関西選抜も最終区の北野泰子が快走した。堀岡をしのいで区間賞をもぎとった走りはみごとである。 意外だったのは全日本3位の城西国際大学と4位の京都産業大学である。 城西国際大は5区までは5位以内につけていたが、最終区で崩れてしまった。京都産業大学は第1区がすべてだったようである。20チームのうち18位と出遅れ、終始後方におかれたまま、最終的にも16位……と、まったく沈んだままに終わってしまった。 メンバーの入れ替わりがはげしい学生駅伝はチームづくりがむずかしい。だが、少なくともここ2年ぐらいは立命館と名城のせめぎ合いはつづくだろう。 全日本を制した名城がひとたび頂点に立ったが、立命館が選抜を制して、名城に傾きはじめた時代の流れを押しもどした。 連覇を果たしてこそ初めて王座につくことができる。そういう意味で名城はいまだチャレンジャーである。 ★開催日:2004年02月19日(日) スタート・埼玉県庁前→ゴール・上尾運動公園陸上競技場 6区間30Km ★天候:曇 気温6.3度 湿度45% 北の風2m ★立命館大学(樋口紀子、才上裕紀奈、丸毛静香、矢口衣久未、人見麻友、小黒久子)
区 間 最 高
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