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1秒に笑う者あれば、1秒に泣くものあり! |
(2006.10.23) |
2度あることは3度ある!
その差、わずか1秒……
10人がおよ1時間走ったトータルのタイムで、その差がわずか1秒なのである。一人あたりの換算すると0.1秒ということになる。10人トータルで1秒、一人当たり0.1秒でもって、あるものは笑い、あるものは笑った。残酷だなあ……と思った。
さらに、もうひとつ……。
笑ったほうは、3分40秒ものアドバンテージが与えられていた。つまり一人当たりにして22秒、距離にしておよそ110m……ぐらいのハンディをもらっていたのである。
20qの区間を10人でつなぐ100qのレースといえども、3分40秒というタイム差は大差である。距離にしていえば1.2qぐらいは十分にある。とくに近年のように実力伯仲の時世になると、そこそこ力の差があったとしても、背中のみえていない相手をとらえるのはそれほどかんたんなものではない。
さらに駅伝の予選とはいえ、駅伝の形式をとっていない奇妙なレースである。相手というものがまるでみえていない。もっぱら時計だけがたよりだが、相手が誰なのかわからないうえに、そのタイム差もランナーたちにはクリアになっていない。選手にしてみれば闇のなかを走っているにひとしい。
当面のライバルがどこにいるのかも解らないまま走り続け、レースをおえて結果が発表されたときに初めて相手の全貌がみえてくる。そのときに「ラストでオレが踏ん張って、もう1秒なんとかしていれば……」と悔やんでも、もう遅いのだ。
さらに……。3分も4分もアドバンテージを与えるシステムそのものがおかしいのではないか? 2度あることは3度あるというが、5年のうち3度も同じ結末を招いては、予選会の選考システムそのものを見直すべきであろう。
順調な早稲田、大東、城西は大苦戦
箱根駅伝予選会……。予選会とはいえ、年を追って沿道の観衆は増えつづけてているようである。現在では数千人ものファンが詰めかけるというから、たいへんな盛りあがりようである。
今年も国立昭和記念公園の周辺で行われたが、昨年までとは一部コースが変わり、スタートは陸上自衛隊立川駐屯地内のコースを5q、市街地に出て4q、そして昭和記念公園の周回コースを11q……。駐屯地のひろい滑走路を走るスタート風景はなかなか壮観であった。
予選会といえば、きまってケニア人留学生たちが集団をぶっちぎって走る。去年も山梨学院のモグスがケタはずれの走りをみせたのだが、今年はそういう先導役を果たすケニア勢は不在で、めずらしく落ち着いた展開になった。
スタートで飛び出したのは専修大学の座間紅祢で、滑走路の周回でとびだしをみせ、それに神奈川の中山慎二郎がついてゆくという展開であった。
5q=14:44秒というペースで2人が後続を約100mほど離し、集団をなす後方では早稲田の選手たちの積極的なレースぶりが眼についた。
注目の竹澤健介(早稲田)は2週間前に股関節に炎症を起こしていて、痛み止めを飲んでの出場という話、それでも城西の田上のように大きく遅れることなく、落ち着いたレースぶり、つねに好意をキープしていたのは、さすがというべきだろう。
10qは座間が29:41で通過、後続との差はおよそ40秒ほどあった。10q通過時点の成績は、神奈川、早稲田、拓殖、専修、國學院、中央学院、国士舘、明治、城西、大東文化……の順、9位・城西と10位・大東文化の差はわずか9秒。あるいはトップを争うのではないかという声もあった城西はエース田上のブレーキもあって大きく出遅れていた。さらに大東文化、意外な苦戦ぶりがひときわ目立っていた。
7位以下は大混戦、焦点は残り2つ!
10qをすぎてトップの座間の走りはゆるがなかったが、中山は少しずつ遅れ始め、13qあたりで中央学院の木原真佐人が2位にあがってきて、先頭と後続集団の差がいくぶん詰まりかげんになる。
早稲田の安定した戦いぶりが目立ち、15qではトップ通過から1分42秒で10人目のランナーが通過。好調そのものである。早稲田がトップに立ち、専修、神奈川、中央学院、國學院、拓殖、国士舘、明治、大東、城西……という順序で、9位・大東文化と10位・城西は14秒差となった。
拓殖が失速して3位から6位に落ち、相変わらず城西と大東はもどかしいほど調子があがってこない。意外な展開となった。圏内候補といわれた東京農大、青山学院も伸びてこない。かわって上武大が圏内をうかがう位置にあがってきていた。
トップをひた走る座間は一時はかなり後続に追い上げられたかにみえたが、ゴールまえでふたたびペースアップ、楽々と逃げ切ってしまった。
2位には中央学院の木原真佐人、3位は早稲田の駒野亮太、早稲田はほかにも10位以内に河野隼人(6位)、宮城普邦(8位)が入り、さらに故障を伝えられた竹澤も11位でゴール、トップ通過から1分51秒で10人目がゴールして、終わってみれば2位におよそ6分もつけていた。
20qの10人通過は、早稲田、中央学院、拓殖、明治、國學院、専修、国士舘、大東文化、神奈川、城西、上武、東農、帝京……とつづいた。
昨年は苦杯をなめた拓殖は10人通過が3番目、昨年は10人通過が5番目で落選したが、3番目なら大丈夫だろうと思われた。むしろ焦点は最後までのびてこなかった城西、大東文化、神奈川ではないか……と思われた。
レースに勝って、勝負に負ける! 奇妙な駅伝
ところが……。運命の女神は非情なものである。まさに思いがけない結末……としかいいようがない。
上位6校は早稲田、専修、中央学院、國學院、神奈川、明治……。そして関カレポイントが勘案される7位以降だが、城西、大東文化とつづき、最後のひとつは国士舘がコールされるのである。拓殖はわずか1秒差に泣いてしまった。
予選会の記録は国士舘が10時間20分47秒で10位、拓殖は10時間17分08秒で7位である。ところが関カレポイントのアドバンテージをみると国士舘が3分50秒、拓殖はわずか10秒しかなかったのである。
かくして拓殖は予選会レースでは3分39秒という大差で勝ちながら、駅伝と何の関係もない短距離、投てき、フィールド競技などの成績が反映される関カレポイントの差で敗れ去ったのである。
今回がはじめてではない。2度あることは3度ある……というが、なんと今回が3度目なのである。
最初は3年前の80回大会である。拓殖は予選会成績では8位にはいりながら、関カレポイントで2分29秒のアドバンテージを持つ国士舘に4秒差で敗れた。
2度目は昨年の82回大会である。拓殖は9位、国士舘は10位だったが、国士舘はこのときも4分20秒という大きな関カレポイントをもっており、一気に8位に浮上して、拓殖は圏外に弾きとばされたのである。
かくして拓殖大は奇しくも3度まで国士舘大に関カレポイントの差で敗れ、涙をのんだことになる。
駅伝の出場校を決める予選に、駅伝とは何の関係もないトラックやフィールドの成績を反映させるのは筋ちがいである。ぼくは関カレポイントなるものが導入されてから、終始そのように声を大にして言っている。予選会というのはいったい何のための予選会なのか。駅伝はあくまで駅伝なのである。
関カレポイントなるものは、いわば陸上の伝統校、有名校を救済するという意図がみえみえ、とてもフェアーなシステムとはいいがたい。そろそろ見直すべきときに来ていると思うのだが、いかがなものだろう。
今年の早稲田は本物か? 真価を問われるシーズンに!
トップで予選会を通過した早稲田はあぶなげなかった。エースの竹澤の調子がいまひとつだったが、それでもぶっちぎりのトップである。個人のトップ10に3人もはいり、トップ20には7人も名を連ねているのをみても、今年は全般的に底上げされているようである。
早稲田は本戦でもかなり期待できそうだが、このチームは最近、予選会の好調さを本戦で生かし切れていない。そういう意味で今シーズンこそ真価を問われるレースになるだろう。
専修、中央学院、國學院、神奈川、明治は、ほぼ順当な結果だといえる。意外だったのは城西、大東文化である。とくに最近は予選会回りがすっかり定着した大東文化大、予選会でこのありさまならば、かつての覇者の片鱗もみうけられず、今年も本戦ではとうてい期待できないだろう。
城西もエースがチーム内11位におわったせいもあるが、田上抜きでも予選会でトップを争うぐらいの勢いがないと、シード権を獲る……なんて、おこがましい。
さて悲運に泣いた拓殖だが、3度もつづけば、さすがにガックリ……というところだろうが、本戦出場がチームの目標ではないだろう。他のチームも同じである。予選会を突破するのが目標ではないはずである。ほんとうの目標は箱根の本戦で上位争いにからむことにある。
ならば関カレポイントに泣いた……なんてことは、セコい言い訳にすぎない。予選会ではハナから上位争いを演じて、堂々と6位以内で決めてほしい。予選会ではげしく上位を争うほどの力がついていないと、本戦ではシード権争いにも絡んでこれないからである。(完 2006.10.23
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