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在日メンバー中心のケニアが男女ともに1区から独走!
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(2006.11.23) |
衝撃の駅伝デビュー、ゲディオンが区間新
登載エンジンがちがう……というのは、こういうことをいうのだろうな……。2区のケニアのランナーとして登場したガトゥーニ・ゲディオンのことを言っている。1qの入りが2分25秒と聞いて、何かのまちがいではないのか……と、一瞬耳を疑ってしまったのである。
第1中継所での順位はケニアがトップで2位の学生選抜が19秒遅れでつづいていたが、ゲディオンはまるで中距離走者のような飛び出しをみせた。後続をみるみる引き離し、1qもゆかないうちに、はるか遠くのかなたに消えてしまったのである。
ゲディオンは今年から実業団の日清食品チームに入ったケニア人選手だが、マサイ族出身という変わり種である。金哲彦さんのブログ「金哲彦のLife Style Runnning」によると、日本で活躍しているケニア人ランナーはキクユ族かカレンジン族のいずれかで、マサイ族の選手の来日は初めてのことだという。
ゲディオンのすらりとした華麗な体躯でバネをつかって走るフォームをみていると、なるほど、これが広大な草原を住み処にする狩猟・遊牧民族の血というものか……と、思わず溜息が出てしまった。身体能力のレベルがまるでちがっているのである。
まだ来日したばかりだというのだが、それでいてケタちがいの強さである。おそらく来年1月の全日本実業駅伝では、またまた衆目をあっといわせることだろう。日本育ちのケニア代表として、やがては世界の檜舞台で大活躍するのではないかという期待感をいだかせる選手である。
ゲディオンは中間点をなんと13分07秒……と、この時点で区間新記録まちがいなしというありさま、後ろは完全にみえなくなってしまった。
ゲディオンの爆走によって、ケニアと2位の日本とは差はここで早くも1分49秒……。500mあまりも先んじて、勝負は決したのである。今大会は何もかもゲディオンの衝撃の走りにつきるようである。
1区・2区で学生ランナーが健闘!
今回は男女ともにエチオピアが出場しないため、勝負のゆくえについては最初からみえていて、観戦するレースとして食い足りなかった。観戦のポイントをあえてあげれば、男子の場合、今回ジャパンのメンバーにはいっている3人がどのような戦いぶりを見せてくれるかにつきた。
男子の第1区は東海大の佐藤悠基、学生選抜のほうは中央大の上野裕一郎が登場、ケニアのマサシがぶっちぎってゆくかと思われたが、フタをあけてみれば1q=2:46という比較的ゆったりだったせいか、佐藤、上野もオーストラリア、アメリカのランナーとともになんとか食らいついていた。
だがマサシは2qまで2:41、2〜3qまでを2:33秒にあげて飛び出してしまうと、力の差がはっきりと出てしまった。
佐藤と上野はたがいに良い意味でのライバル心を燃やしていたのだろう。後半も大きく落ちることもなく、20秒遅れで2,3着を占めたのは、まずまずといったところ。最後の上野がわずかに佐藤に先んじたのは、意地というものだろう。
2区の全日本は東海大の伊達秀晃、学生選抜は日本体育大の北村聡で、ここでも学生長距離界のエース対決となった。だが、ゲディオンに1q=2:25でいかれてはなすすべもなかった。
ゲディオンの背中が遠く霞んでしまって後ろでは、日本の伊達、学生選抜の北村、オーストラリア、アメリカが集団で追いかける展開となり、レースは2着争いにしぼられるかたちとなった。
レースが動いたのは6.6qすぎで、日本の伊達がしかけるとアメリカがこぼれ落ちてゆき、残り2qで伊達はさらに2段スパートをかけ、追いすがる学生選抜、オーストラリアを振り切った。
佐藤敦之が意地の走り!
男子の場合、ケニアがイチ抜けで、はるか前方をゆくなかで、わずかにみどころがあったのは、4区であった。ケニアはマラソンで歴代2位の記録をもつS・コリル、追っかける日本は佐藤敦之、だが3区を終わって、トップをゆくケニアとの差は2:25にひろがっていた。
佐藤は見えないケニアをけんめいに追っかけた。ケニアチームになかにあって、コリルのみは本国から駆けつけてきた選手である。他のメンバーのように日本の実業団に所属していて、駅伝に走りに馴れているわけではない。1q=3:00というゆったりしたペースではいり、その後もピッチがあがらない。佐藤はどんどんと差を詰めてゆき、中間点では30秒かせぎ、その後もピッチは衰えなかった。4年前にみせた微笑み走法はみられなかったが、ひたむきに前へ前へと突っ込んでゆく走法は健在で、最後までペースは落ちなかった。終わってみればトップとは1分7秒差で、およそ700メートルあった差を、一気に300メートルあまりに詰めてきたのである。
佐藤の快走がなければ、区間賞はすべてケニアチームに独占されていただけに、そういう意味でも佐藤の健闘は価値あるものとなった。
ほかでは6区に登場した学生3人目のランナー・竹澤健介も勝負がきまってからの登場だったが、ケニアのジュイに10秒遅れの区間2位というのは、まずまずの健闘といっていいだろう。3人の学生ランナーは、1区の佐藤が区間3位、2区の伊達も区間2位だから、いずれも区間3位以内でまとめており、さすがは学生のトップクラスという力をみせつけてくれた。
女子・松岡範子がここでも好走!
女子も1区からケニアが飛び出した。1区のランナーはホクレンのO・フィレスといえば、もう日本でもおなじみのランナーである。2qでこのケニアのフィレスがイニシャティブをにぎり、あとは日本の松岡範子、ロシアのL・ショブホワ、オーストラリアが追いかける。
松岡範子は先の淡路島駅伝、福井スーパー女子駅伝でも1区に登場して快走したが、現在最もノッているランナーであある。本大会でも好調ぶりをいかんなく発揮、フィレスのスパートについていけなかったものの、ロシアのショブホワを競り落としての区間2着はみごとな走りだった。
2区ではケニアが1分以上も先に行ってしまい、日本とロシアの2着争いになった。5秒差をつめてきたロシアのアビトワと日本の扇まどかが6.3q付近から併走状態となった。扇がとらえられても抜かせないという意地をみせていたが、7qではとうとう引き離されてしまう。最後は力の差が出てしまったようだが、扇の粘りにはみるべきものがあった。
2区で健闘したのは学生選抜の佐藤絵里である。7位から一気に5位まで順位を押し上げてきて、区間5位ながら、学生選抜の最終4位の原動力となった。
3区に登場した日本の那須川瑞穂の走りもみるべきものがあった。2位のロシアを急追、14秒あった差を詰めてロシアとデッドヒート、最後は引き離されたが、区間2位で4秒差まで迫ったのである。5位の学生選抜の大谷木霞がルーマニアを抜いて4位にあがってきて、元気のよさをみせつけてくれた。
男女とも学生選抜が大健闘
女子の2区以降は日本とロシアとの2位争いに終始した。3区を終わって2位がロシアで3位の日本とはわずか4秒差、4区は加納由理、ロシアはL・グリゴリエワであった。わすがにグリゴリエワは強さを発揮、加納をひきはなしにかかるのだが、加納もしぶとく粘った。6.5qでは4秒差まで迫ったのだが、最後は地力でもってゆかれた。
2位争いに結着がついたのは5区である。ロシアのG・ボコモロワが区間賞の走りで日本の早狩紀を一気に引き離し、ここでの50秒の差が明暗を分ける結果になったのである。 日本チーム最終区の赤石久美も最近になって力をつけているランナーである。出番が2着争いに結着がついてしまった後だけに、持ち前の競り合っての強さが発揮できなかったようだが、区間3位は健闘したといっていい。
日本チームは早狩をのぞいて5人は区間2位から3位でまとめており、まずまずの出来だったといえるが、とにかく相手が強すぎたというほかない。
奮闘ぶりが目立ったのは学生選抜である。男女ともに終わってみれば4位にもぐりこんでいた。ロシアとケニアをのぞけば、それほど強力な相手チームはみあたらないのだが、それにしても4位なら上出来というべきである。
お祭り駅伝の意味を問う!
ゲディオンはともかくとして今年もケニアが強かった。男女ともにメンバーのほとんどが日本の実業団にいる選手たちだから、駅伝の走り方というものを知りぬいている。もともと潜在能力が高いのだから、駅伝の戦法さえ身につければ、日本選手ではとても太刀打ちできないのである。
国際千葉駅伝は女子の横浜国際とともに、国際親善のいわばお祭り駅伝だが、毎年少しづつテンションが落ちてきているようである。この時期に、国際駅伝をやる意味がどこになるのか。今となってはそろそろ問い直さねばならない時期にきているようである。
とくに今年は12月にアジア大会があるので、中・長距離のトップクラスは出てこれない状況にある。さらに女子の場合は12月に全日本女子駅伝があるので、出場チームはお祭り駅伝なんかに選手を出したがらないはずである。男子の場合も12月には福岡国際マラソンなんかもあって、なかなかトップクラスはの出場はむずかしい。だから今年のように、長距離のトップクラスは顔をみせずに、学生3人でお茶をにごすということになる。
テレビの視聴率をとるための窮余の一策といえるが、それでも次代を背負うであろう学生ランナーたちが、それぞれ持てる力を発揮したという意味では、とりあえずそれなりには成果があったとみておこう。
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