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区間1位が5つ、全区間でトップを譲らず! |
(2007.1.08) |
ラストランで4連覇のテープを切る
もう、後ろからは誰も追ってこない。事実、アンカーの後藤麻友が競技場を前にしたとき、2位の名城大・佐藤絵里との差は1分もあったのだから、足音すら聞こえなかっただろう。
勝利を確信して競技場にとびこんでいった後藤を、立命館大学の選手たちは全員が入り口で出迎えていた。4年生最後のレースである。優勝のタスキを運んでゆく彼女にとって、そこからゴールまではまさに最後の花道というべきであった。
後藤麻友、高校駅伝の名門・信愛女学院(熊本)から立命館にやってきた。派手な実績こそないが、立命館の優勝請負人である。全日本と選抜に4年間で6度出場しているが、彼女が走ったとき、チームはすべて優勝している。3年のとき両大会とも、彼女の名前がなかったのは、右かかとを痛めていたせいだという。
彼女が欠場した一昨年の全日本で立命館は名城大にやぶれた。リベンジをめざした昨年、後藤は5区に登場している。トップをゆく佛教大をとらえ、背後からやってくる名城を突き放して、優勝への道筋をたしかなものにした。後藤の区間賞は、後にも先にもこのとき1回きりだが、優勝をきめたという意味で、ダイヤモンドのように輝いている。距離の長短にかかわらず駅伝では安定した走りをみせ、けっして大きくはくずれない。勝負強いランナーである。
後輩たちにみまもられながら、競技場を周回した後藤、ゴール直前になって、それまで懸命にこらえてきた喜びが一気に弾けた。満面の笑みをたたえては右手を冬晴れの空に突きあげた。
比較的地味なランナーだが、2チャンネルの「女子大生アスリート可愛い人ランキング」では、トップランクされているのを知って驚いた。端正な面立ちが笑みではじけると、まるで少女のようなあどけなさが沸き立ってくる。
あの谷口浩美に請われて、沖電気に入社するというが、たとえば三井住友海上に進んだ先輩の大山美樹のように、遅咲きの花を咲かせてほしいものである。
前半から勝負に出た立命館!
「さいたま」から「つくば」へとコースを移して最初の大会、優勝候補の筆頭をあげれば、先の全日本で6区間のうち4区間で区間賞をうばって、王者に返り咲いた立命館大学でうごかぬところだが、もう一方の雄である名城大学もあなどりがたい。両雄のマッチレースの様相だが、全日本では3区、4区で、立命、名城を押さえた佛教大学が両雄に割ってはいるのではないか。ほかでは城西大、城西国際大、さらには大阪体育大などが上位を争うであろうというのが大方のみるところだった。
立命館は前半勝負に出てきた。1区に樋口紀子、3区に小島一恵を配して、前半で突っ走ろうという底意がみえ、アンカーにエースの佐藤絵里をもってきた名城とは好対照であった。
1区の入りは1qが3分07秒……と、いくぶんスローの展開、2.5qまでは13人ぐらいの集団、そのなかには立命館の樋口紀子、名城の西川生夏、関西選抜の伊藤舞、大阪体育大学の山下沙織、城西大の酒井優衣、東京農大の川嶋雅子、立命館APUのM・ワシュカなどの顔があった。
レースが動き出したのは3.7qあたりで、立命の樋口が仕掛け、これに名城の西川がついてゆくかたちで、2人が集団から抜けだしたのである。
樋口と西川……。ともに1年生ながら、チームでは主力の位置にある。5000mの持ちタイムを比較すると、樋口が16:06、西川が15:57……、ほとんど互角だが、数字の上では西川が上回っている。
だが終始レースの主導権をにぎったのは樋口のほうだった。最後のスパートで西川をあっさり振りきってしまうのである。
先の全日本で樋口は6区(8q)に出で、名城の中尾真理子を下して区間賞、みごと優勝のテープを切ったのだが、あれで、すっかり自信をつけたというのか。トラックの記録では多少見劣っていてもロードではめっぽう強い。格のちがいというものをまざまざとみせつけた。
立命と名城、2区からマッチレース!
1区のトップは立命館、2位が名城で9秒遅れ、3位は立命館APU、4位は東農大とつづき、主力を形成すると思われた城西は19秒遅れの6位、城西国際は41秒遅れの10位、佛教大は43秒遅れの11位と大きく出遅れてしまった。
3q区間の2区では学連選抜をのぞく12チームのうち、9チームまでが1年生を起用してきた。立命館は境田遙、名城は足立依實子である。9秒差ならば追うほうに分があるはずだが、立命館のランナーは誰もかれも強かである。逆に名城との差を4秒かせいで3区の小島一恵にタスキが渡るのである。
2区を終わって、トップ・立命と2位・名城との差は13秒、3位の城西は29秒遅れとなり、佛教大は同じ11位ながら、58秒と差がひろがって脱落、早くも両雄のマッチレースとなってしまった。
3区は立命が小島一恵、名城は中尾真理子、いかにもエース区間にふさわしく、レースのゆくえを占う興味あふれる対決となった。
首位をゆく小島は余裕というべきか。1qの入りが3:12とゆったりしていたが、中尾はじりじりと差を詰めてきた、2qで5秒差まで迫り、その勢いからみて、あわや逆転……と思わせたが、小島はいっこうに慌てなかった。2.5q付近からピッチをあげて、逆に少しづつ差をひろげはじめたのである。
後方では先の全日本でも1区で快走した立命館APUのM・ワンガリが8位から5人抜きで一気に3位までやってきた。その前で小島と中尾の息づまるようなトップ争いがつづいていたのだが、ハイペースで入っただけに、中尾は後半のびを欠き、逆に小島に25秒差まで差をひろげられてしまったのである。
またしても繋ぎの選手が優勝への礎をきずく!
かくして立命館は1区から3区まで連続の区間1位を獲得、4区の矢口依久未にタスキが渡るのだが、4連覇の扉をひらいたのが、4年生の矢口なのである。
矢口が駅伝メンバーとして登場したのは2005年、3年のときからだが、過去3回走ってすべて区間1位をうばっている。2005年の全日本では5区、2006年の選抜では4区、そして2006年の全日本では4区に登場、2位でタスキをもらうと、トップの佛教大を追っかけ、4.9qという短い距離ながら、30秒あった差を一気に20秒も詰めて、逆転の足がかりをつくっている。そして5区は同じ4年生の後藤麻友がトップを奪ってしまうのだから、あの全日本の王座奪還は4年生コンビの置きみやげだった……という見方もできる。
さて、4区に出てきたその矢口依久未だが、1q=3:06という入りで、ハナから突っ込んでいった。名城の三宅裕子は3:20のペースだから、どんどん後ろに遠ざかっていった。
それにしても……。矢口は立命館のメンバーをみわたして、5000mの持ちタイムでは16分を切っている。これは小島一恵に次ぐタイムである。本来ならばもっと長い距離の区間に使われてもいい選手である。そんなランナーを3.5qの4区に配することが出来るのだから立命館は強いというべきである。
矢口はどんどんと後続との差をひろげた。終わってみると2位・名城との差は1分04秒、3.5qという繋ぎの区間で、なんと39秒もかせいでしまったのである。
4年生の矢口は卒業と同時に競技生活から退くという。最後のレースでも堂々の区間賞、かくして2年間で4度の駅伝を走って4度とも区間賞である。繋ぎの役目をしっかり果たす希有な存在であった。
矢口はほとんど後ろがみえないほど差をひろげて、2年生の松永明子にタスキを渡したのだが、こんな頼もしい4年生からタスキをもらえば、誰でも奮い立たないわけがない。松永もまた区間賞の力走で応えて、アンカーの後藤麻友にタスキをつないだのである。
大学女子選抜駅伝の存在理由は何なのか?
立命館はやはり総合力では一枚ぬけていた。メンバー全員の結束力が際立っており、誰もが駅伝の走りというものを熟知している。名城大とくらべて対照的なのは、全員がのびのびと走っている……ことである。
立命館は今回走った6人のメンバーのうち、矢口と後藤が卒業しても4人がそのまま残るのだから、次のシーズンはさらにパワーアップしてくるだろう。
全日本につづいて、またしても敗れた名城大は、選手たちが何か萎縮しているようにみえた。選手個々の力の比較では、立命館とくらべてそれほどの差はないのだが、選手たちの走りに独創性というものがないのである。
名城には佐藤絵里というスーパーエースがいるのだが、今シーズンは全日本につづいて本大会も、彼女の力をもてすれば、凡走に終わってしまった。体調がよくなかったのかもしれないが、エースの不調でチーム全体の勢いがつかなかった。それも敗因のひとつだろう。
佛教大は全日本で3位に入って、注目されたが、今回は1区の出遅れがすべてであった。このチームもともと力のあるチームなのである。数年前から優勝を争ってもいい力をもっているのだが、いつも1区で出遅れるという致命的なクセがあった。今シーズンの全日本で善戦したのは1区で4位につけたから……なのである。ところが、またまた、悪いクセが出てしまった。同じ失敗を繰り返すのは指導者の責任だろう。
健闘したのは3位にはいった関西選抜である。昨年も上位にきていたが、主力どころの城西大や佛教大、大阪体育大学まで押さえてしまったのはちょっと驚きである。逆にいうならば、佛教大や城西大、城西国際大、大阪体育大など、候補の一角にあげられていたチームが、にわか仕立ての選抜チームに敗れるというのは、いったいどういうことなのだろうか。もしかしたら、本大会を全日本のときほど重くとらえていなかったせいかもしれない。
それにしても……。全日本大学女子選抜駅伝なるものを開催する意味は、いったいどこにあるのだろうか。観戦しながら、わけもなく、ふと、考え込んでしまった。
出場20チームのうち、学連選抜8チームも出場する。1チームぐらいならいいとしても、選抜チームが8チームも出るような大会は、とてもチャンピオンシップの大会とはいえないのである。
総距離も区間数も全日本とそれほど大差がない。男子の大学駅伝の場合、出雲、全日本、箱根……と3つあるが、総距離も区間数もまったくちがっている。大会そのものの性格が、それぞれ大きくちがっているのである。
それにくらべると、女子選抜駅伝は、存在理由がいまひとつ希薄で、現状でみるかぎりコンセプト不明の大会としかいいようがない。
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