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アジア大会、世界陸上を視野において、いまスタート!
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(2006.10.01) |
駅伝はマラソンの延長にある
出雲駅伝を1週間後にひかえ、プロローグを書こうとしているところに、実にタイミングよく福士加代子が全日本実業団10000mで、国内初の30分台をマークしたというニュースがとびこんできた。
まさに駅伝の申し子ともいうべき、かっとび娘がシーズン幕開けに話題を提供してくれる。縁起のいいスタートである。
今シーズンは12月1日から15日までの15日間、カタールの首都ドーハでアジア大会があり、さらには来年の8月には、大阪で世界陸上があり、マラソンや駅伝に出場する選手の主力も両大会をにらみながらのシーズンになる。
たとえばアジア大会に出場する福士加代子などは12月の全日本実業団女子駅伝には、おそらく出場しないだろう。トップ・アスリートたちにとって、駅伝というのは、あくまで「主」ではなく、「従」たる位置づけだから、ファンとしては淋しいが、しかたのないことである。
駅伝というのは、歴史的に見ても、あくまでマラソンや長距離をめざす選手たちにとって、冬場のトレーニングのひとつ……というねらいでつくられたレースなのである。駅伝があって、マラソンや長距離があるのではなくて、マラソンや長距離が最初にありき……なのである。
なぜ、そんなことをクドクド言うのかというと、最近の日本男子のマラソンや長距離の低調ぶりが残念でならないからである、マラソンも長距離に関していえば、どう贔屓目にみても、グローバルスタンダードにほどとおい状況にある。
端的にいえば駅伝を走り、そこでちょっとした活躍をすると、もうそれだけで満足してしまっている。たとえば箱根駅伝である。箱根はもはや国民的行事になってしまい、毎回たいへんな盛りあがりをみせている。駅伝ファンにとっては、よろこばしいかぎりなのだが、最近、箱根のスター選手が、箱根のスターだけで終わってしまって、その後の成長がみられない。さらに最近の学生のトップ選手は実業団選手にはまったく歯が立たないでいる。かつての瀬古利彦のように学生にして日本のトップというような選手が育ってこないのが、ちょっぴり困るのである。
箱根駅伝栄え、マラソンすたる……。これでは、それこそ洒落にもならないのである。
駅伝はあくまでマラソンや長距離の延長にある。金栗四三が箱根駅伝をつくった意味をいまいちど振り返ってみる必要があるだろう。
今年も大混戦必至、興趣つきない大学駅伝
駅伝を観戦するファンとして、やはり興味のメインは箱根を頂点にした学生3駅伝ということになる。出雲、全日本、箱根にいたる道のりが、いわば、ひとつの物語として織りなされるからである。
昨年、亜細亜が箱根でサプライズ制覇を果たしたように、各チームの実力差が接近し、各大会の優勝チームをかんたんに予想することは、きわめてむずかしくなっている。3駅伝ともにレースの性格が異なるうえに、出場チームもレースごとに若干の変動がある。たとえば今年、出雲で連覇をねらう東海大は、全日本では出場権がない。昨年も同じ状況で箱根に向かい、優勝候補の筆頭にあげられていたが、本番では調整の失敗で、往路で失速して消えてしまってるのだ。
駅伝は走ってみなければわからない。実力接近で、まさに古諺どおりになってきているのだが、箱根を制するのは、やはり出雲、全日本というステップを踏んでくるチームのなかから出る……と、みなければなるまい。3駅伝すべてに出場するチームを挙げると、中央大、日本体育大、亜細亜大、山梨学院大、日大、順天堂大、駒沢大、東洋大である。過去の例からみて、この9チームのなかから、箱根の優勝チームが出るとみて間違いないとみる。
さて、目前の出雲をにらんで各大学の戦力をざっとみておこう。
昨年、出雲を制した東海は伊達秀晃、佐藤悠基の2枚看板が着実に成長しており、両エースを中心にして、今年も戦力が充実している。決め手のあるチームだけにあなどれない存在である。
駒沢は今年もいつもながらのソツのないチームになっている。高井和治らの主力のほかに新戦力として宇賀地強、深津卓也といった1年生が加わり、今年も上位争いの安定勢力である。
日大はもともとそのスピード力には定評があるが、日体大記録会では4人が5000mで13分台をマーク、土橋、阿久津を中心に、ダニエルという新戦力も加わっている。ダニエルがサイモンほど活躍できるかどうか?……がポイントになる。
中央はエースの上野裕一郎が健在で、全カレ5000mでは自己新で大会記録を更新するなど、さらにパワーアップしている。、かんじんなところでずっこけるというポカさえなければ、つまりこのスーパーエースが額面通りに走れば、上位争い必至である。
順天堂は今井正人、松岡佑起の両エースのほか、佐藤秀和、松瀬元太、長門俊介らがいて、戦力は充実している。出雲よりもむしろ全日本、箱根が楽しみなチームである。
日本体育大学も保科光作、鷲見知彦、北村聡の10000m28分台トリオに加えて、29分台の選手が5人ほどいて、まちがいなく主力争いに加わるだろう。
山梨学院大学の注目はケニアからの留学生、M.J.モグス(2年)。今シーズンになってますます力をつけ、関東インカレで1500m、5000m、10000mを制して長距離三冠を達成。距離の短い出雲では前半うまくつなげばゴボウ抜きで、あるいは……のシーンもあるかもしれない。
昨年、箱根を制した亜細亜、復路優勝の法政は出雲では苦しいだろう。むしろ出雲で今年の戦力を測ってみたい。
とにかく出雲駅伝は、各チームの戦力、戦略を見るという意味で重要な大会で、勝敗のゆくえよりも、今シーズンを占うレースとして、きわめて興味深いものがある。
駅伝ブームにかげりがみえた?
ライブ放送でなくなった「大学女子駅伝」
実業団駅伝は男子、女子ともにマラソンや長距離で世界選手権をめざす選手たち、あるいはアジア大会を出場する選手たちもいて、かなり出入りのはげしいチーム構成になるのではないかと想定されるが、男子は今シーズンも選手層の分厚いコニカミノルタ、女子も三井住友海上を中心にして展開されてゆくだろう。
高校駅伝では昨年も活躍した須磨学園の小林祐梨子、今年になって1500mで日本新記録を連発しているだけに、いちだんとパワーアップした走りに要注目である。
今年で10年目を迎える本時評は駅伝ブームのまっただなかでスタートしたが、長く隆盛を誇った駅伝も、時のうつり、近年では翳りがみえはじめている。
その顕著な例が女子の大学駅伝である。全日本大学女子駅伝は国際駅伝として発足し、19年間にわたって大阪でおこなわれてきたが、昨年から仙台に移されてしまった。秋の御堂筋を走る風景がみられなったのは残念に思っていたが、仙台に移ってもっと残念な事態が生じてしまった。
駅伝観戦の醍醐味はあくまでライブ放送によると思うのだが、仙台へ移されたあとはビデオのダイジェスト放送になってしまったのである。大阪から仙台にコースが移ること自体、それはそれでまた別の意義もあるのだろうが、テレビのスポンサーが離れてしまうとは夢にも思わなかった。
さらに、もうひとつの大学女子駅伝「全日本大学女子選抜駅伝」も、今シーズンから「つくば市」にコースを移すことになった。同駅伝は「さいたま市」でおこなわれてきたが、もともとは土屋前知事が「埼玉へも全国的なスポーツ大会を……」とわざわざ学連と交渉して開催がきまったものである。ところが……である。何を血迷ったのか県と県警が上田知事におうかがいも立てず、勝手に開催をことわってしまったというのである。
知事は激怒して、学連に謝罪するやら、事態の修復に走り回ったが、もう後のまつりだったというのだから、なんとも格好のつかない結末というほかない。
かくして第4回からは「つくば市」開催がきまり、学連サイトでも正式に発表されている。「立命館大学 関東学友サポートページ」では問題の起こりから結末にいたるまで、詳しくのべられており、さらに第4回大会開催が1月9日(成人の日)に決まったことに、「学連や関係者はどういう神経をしているのか」と大いに異論をとなえている。「現役の2、3年生は成人の日に出席できないじゃないか」というわけですが、それは、けだし当然の言い分というものである。
テレビ放映のシフトチェンジやコースの変更は、とりあえず最も人気が低いとみられる大学女子駅伝に象徴的にあらわれてきたが、それは駅伝ブームに翳りがみえてきたことのの現れというものだろう。
それはともかく……。駅伝ファンとしては今シーズンも駅伝ランナーたちの爽やかな走りを熱くみまもり、時には沿道に立って声援をおくるつもりである。
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