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群馬が最終10区で逆転トップ!
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(2006.11.14) |
群馬がアンカー勝負を制した!
駅伝の象徴といえばタスキである。肩から脇腹にかけたタスキが激しくひるがえるさまが、走っている選手それぞれの躍動感やスピード感を測るバロメーターになる。
ところが……。タスキはランナーの上半身に貼り付いたように重くたれさがっていた。汗を吸ったせいではない。横なぐりのはげしい雨がふったせいである。雨は4区あたりから降り出した。初冬のいかにも肌寒そうな雨であった。
最終区の中間点の手前になって、ようやく雨は小止みになったが、レースのほうはにわかに熱くなってきた。トップをゆく地元・福島の背後に群馬が迫ってきたのである。
8区を終わってトップの福島と追う群馬との差は22秒であった。そして12秒遅れで千葉が追っていた。4位の神奈川はそこから36秒も遅れており、渋井陽子の東京は4分以上もおくれていた。優勝争いは上位3チームにしぼられていた。
トップをゆく福島のアンカーは仲泊幸恵、先の全日本大学女子駅伝で優勝した立命館大学の1区を走ったランナーである。追う芳賀万里奈はヤマダ電機のメンバーとして東日本実業団女子駅伝に出場、やはり1区に登場している。ともに福島出身のランナーが敵と味方に分かれて最終区で雌雄を決する局面になった。いかにも皮肉な結末である。
やはり実業団選手に一日の長があったというべきか。群馬のアンカー・芳賀麻里奈はじりじりと差を詰めてきた。5q手前で仲泊背後にとりついた芳賀は、中間点をすぎるやいなや、まるでそのタイミングをはかっていたかのように、するすると仲泊のかたわらをすりぬけて前に出たのである。
勝負はその一瞬に決した。かえりみれば福島と群馬は2区から最終区まで、はげしくツバ競り合いをつづけてきたのである。群馬は2区でひとたびトップに立つのだが、3区では福島が5位から一気に先頭を奪い、5区以降はほとんどマッチレースの様相であった。 勝負は最終区までもつれ、最後は決め手のある群馬が制し、16年ぶり2度目の優勝を果たしたのであえる。
混戦の序盤をリードしたのは地元・福島
勝敗のゆくえが最後までみえなかったのは優勝候補の筆頭にあげられていた東京が1区で思いのほか大きく出遅れたせいである。
第1区は神奈川の吉川美香、茨城の赤石久美、宮城の遠藤舞らがひっぱるかたちで1q=3:15のペース、3qは9:44で通過、だが、東京(岩田絵里子)はピッチがあがらず2.5qで遅れ始め、昨年優勝の埼玉も脱落していった。埼玉はともかく、東京にとっては大きな誤算だったろう。ブービーの区間17位というのはよもやの展開である。
1区の主導権を握ったのは吉川美香である。4.5qすぎてスパートをかけ、いかにも日本選手権の5000mの覇者らしい強さを発揮、後続の宮城を10秒あまりちぎった。
2区の順位争いも見ごたえがあった。トップをゆく神奈川(中村仁美)を1.8q地点で宮城(正井裕子)がとらえるが、2.3qで茨城(野口美穂)、群馬(萩原彩香)が追いつき、千葉(田中真知)もとりついて5チームの集団になってしまう。
2.8qの坂道にさしかかったあたりで、宮城がひとたび仕掛けるのだが、群馬が追ってきて、中継点手前で群馬の萩原が逆転でトップを奪うのである。3位には熊坂香織の区間1位の快走で8位から順位をあげてきた山形、4位以降は茨城、福島、千葉とつづきここまでがわずか17秒差、東京はトップから1分32秒遅れの15位といぜんとして勢いがつかない。
本命・東京の低空飛行がつづくせいで、前半の上位はめまぐるしく変転した。3区では境田遙(立命館大学)の4人ぬきで福島がトップに立つのである。群馬が2位、山形が3位と健闘、逆に首都圏チームの不振が目立ち、千葉は6位、神奈川は7位、埼玉は13位、東京は2分遅れの14位というありさまであった。
激しい雨のなかでのしのぎ合い
雨が降り始めたのは4区からである。この季節にしてはめずらしい横なぐりの激しい降りっぷりであった。中学生区間のの4区は埼玉の柴田千歳と秋田の渋谷璃沙が区間1位で駈けぬけたが、トップは福島がキープ、14秒遅れで山形、18秒遅れで群馬がつづき中盤の勝負どころというべき5区をむかえるのである。
東京は北海道マラソン優勝の吉田香織をここに配していたが、調子を落としていたのか、それとも降りしきる大雨のせいで乗り切れなかったのか。いずれにしても駅伝では無類の強さを発揮する吉田が区間12位というブレーキになり、順位こそ落とさなかったがトップとの差をさらに30秒も開けられ、3分以上の大差になってしまうのである。この時点で東京の優勝という目は完全に消えてしまった。
かくして6区以降は福島と群馬のマッチレースになっていった。群馬は6区で追い上げて17秒差、7区では2秒差まで追い迫るのだが、8区の中学生区間でふたたび22秒までひろげられてしまうのである。
レースの流れは福島にかたむいていたが、2度あることは3度ある。福島はまたしても地方チーム特有のウイークポイントをさらけだすのである。県内に実業団チームを持たない福島はいつも最終区10qを走れるランナーを持たないでいる。それゆえに中盤までは優勝争いを演じながらいつも最後の最後で逆転を許すのである。
東京はアンカーの渋井陽子にタスキが渡ったときにはトップの福島におくれること4分35秒の14位、10000mの日本記録保持者といえども、これではモーチベーションが高まるはずがない。渋井自身もいくぶん調子を落ちしていたのか、9位までやってくるのがやっとというありさまで、タイム(32:33)も平凡なままにおわった。それでも同タイムながら区間1位をまもったのはさすがというべきだろう。
大会のコンセプトを問い直す時
優勝した群馬は総合力の勝利というべきか。区間賞をとったのはわずか2人のみだが、終始上位からこぼれおちることがなかった。5区での32秒差が最大の遅れで、つねにトップをうかがえる好位置をキープできたことが最大の勝因だろうと思う。
今回も最後の最後で優勝をのがした福島は、やはり首都圏チームや茨城、群馬のようにチームの核をなす実業団チームを持たないからだろう。最終区10qを普通に走れるランナーさえいれば、今回もぶっちぎりで優勝しているだろう。
2位・茨城、3位・神奈川、4位・千葉はなんとか面目を保った感じだが、優勝候補の呼び声が高かった東京は9位、埼玉は10位に終わった。だが埼玉の10位はチーム構成からみて当然の結果とみなければなるまい。昨年は実業団の「しまむら」の選手が中心になっていたが、今年は実業団選手が1人もいない。今回は大学生と高校生中心のメンバーである。しかも埼玉では高校駅伝の県予選が同じ日におこなわれており、本大会に出場する高校生ランナーは県予選に出場しない選手たちである。他の府県のように高校生の主力は顔をみせていないのである。それゆえに10位もしかたのないところである。そんななかで区間賞をとった2人の中学生の健闘は誉められるだろう。
前半は上位で健闘していた山形も最終的には7位に終わったが、福島と同じく地方チームの宿命というべきだろう。
本大会は高校生、あるいは中学生が実業団のトップや大学生とともに走るところに意義がある。ならば開催時期を再検討する必要がありはしないか。本大会の開催日が毎年のように高校駅伝の県予選日とダブる埼玉の例もある。実業団チームも岐阜の全日本をひかえているという事情もあるから、主力選手をかんたんに出してくれないだろう。そんなこんなで大会そのものの存在理由をいまいちどよく考えて、それにふさわしい開催日を選ぶべきであろう。
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出場チーム&過去の記録 |
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関 連 サ イ ト |
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