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世界で戦うために 男女とも若い力の台頭を!
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(2009.06.03) |
駅伝はマラソンの延長にある。
モントリオール、モスクワ、ロサンゼルスの五輪マラソン日本代表であり、第一線を退いてからは実業団駅伝の雄・旭化成をひきいた宗茂のことばである。
駅伝はマラソンの延長にあるのであって、駅伝の延長にマラソンがあるのではない。最初にマラソンありき……なのである。マラソンのトレーニングのプロセスに駅伝があるというわけである。それは、かつてあの金栗四三が箱根駅伝をつくったときの動機にしっかりつうじている。
だから今シーズンの駅伝をふりかえるまえに、まずマラソンの結果をみておかねばなるまい。とくに今シーズンは北京オリンピックで惨敗した日本の男女マラソンにとっては、まさに正念場にあたるシーズンであった。
男女ともに3大マラソンはベルリン世界陸上の代表選考レースであり、3年後のロンドンオリンピックを視野において、あたらしい勢力の台頭があるかどうか。そういう意味でも注目すべきシーズンであった。
だが駅伝の隆盛とは裏腹に、マラソンは人気のうえでも、レースのおもしろさという面でも、きわめて低調におわってしまった。いまひとつもりあがりを欠いたレースにもかかわらずベルリン世界陸上の選考レースに指定されており、男女あわせて10人の代表がえらばれてしまった。
晴れて8月のベルリン世界陸上の男女マラソン代表に選ばれた10人はつぎのとおりである。
▽男子
入船 敏 (33歳 福岡国際マラソン2位 2時間09分23秒)
清水 将也(28歳 びわ湖毎日マラソン4位 2時間10分50秒)
前田 和浩(28歳 東京マラソン2位 2時間11分01秒)
藤原 新 (27歳 福岡国際マラソン3位 2時間09分47秒)
佐藤 敦之(30歳 ロンドンマラソン8位 2時間09分16秒)
▽女子
尾崎 好美(27歳 東京国際女子マラソン1位 2時間23分30秒)
渋井 陽子(30歳 大阪国際女子マラソン1位 2時間23分42秒)
藤永 佳子(27歳 名古屋国際女子マラソン1位 2時間28分13秒)
加納 由理(30歳 東京国際女子マラソン2位 2時間24分27秒)
赤羽有紀子(29歳 大阪国際女子マラソン2位 2時間25分40秒)
男子の藤原新をのぞいて、いずれも駅伝でも実績のあるランナーたちで、当時評でもおりにふれなんどか採りあげて声援をおくってきた。なじみふかいランナーたちだからベルリンでも好走してほしいとおもっている。
だが、顔ぶれをあらためてみわたして、いかにも夢のないラインアップだなあ……と、思わずためいきが出てしまった。男子はタイム的にみて、とても世界で戦えるレベルではない。09分台ではどうしようもなかろう。
年齢的にもみんな3年後には30歳をこえてしまうから、かれらにロンドンオリンピックで期待をかけるのは、もはや酷といわねばならないだろう。
女子もおなじことがいえるだろう。5人のうち期待できそうなのは、わずかに渋井陽子ぐらいなものである。その渋井にしても、すでにして全盛期をすぎており、昔ほどの爆発力はない。渋井に期待をかけなければならない現状が、なんともはや淋しいのである。
尾崎好美にしても、藤永佳子にしても、加納由理にしても、赤羽有希子にしても、年齢的にみて、よくぞ代表になったというべきで、これ以上の上積みはとても期待できそうにない。
だが世界陸上の代表になることが最終の到達点であってはこまるのである。だがそうはいっても現実には力のうえからみて、彼女たちに多くをのぞむのはムリというものである。むろん選ばれた彼女たちにはなんの非もないわけで、責めるわけにはいかないのである。
ようするにロンドンオリンピックをにらんで、期待のニュースターが男女ともにいないのである。今シーズンのマラソン、駅伝からは次代をひらく期待の新星は出現しなかったというわけである。
かつて高橋尚子や野口みずきが出てきたように20歳代前半の若い力の台頭がない。世界陸上代表が昔の名前で出ている選手ばかりではどうしようもないのである。本時評のしめくくりというべき「プロローグ」を書く筆が重いのは、ひとえにそのせいなのである。
2009-2010のシーズンには、なんとか男女ともに20歳前半の若い力、男子でいえばかつての瀬古利彦、女子でいえば高橋尚子のような大粒の選手の出現をまちのぞんみたい。この1年〜2年ぐらいで出現してくれれば、なんとかロンドンオリンピックに夢を馳せられるのだが……。
箱根駅伝といえばいまや新年の国民的行事になったが、今シーズンは不祥事でゆれにゆれた。まずは東洋大である。2年生の部員が通学中の電車内で女子高生の体を触った疑いで逮捕された。箱根の出場もあやぶまれたが、関東学連は連帯責任を問うことなく、出場を容認した。事件は集団でなく個人が、合宿中などのチーム活動以外で起こしたものであることなどを考慮したというのだったが、寛大なお裁きに驚いてしまった。
東洋大は、事件をおこした当人をすぐに退部処分とし、川嶋伸次監督、川野祐司部長を引責辞任させるなど、事件にたいする対応はすばやく、それが関東学連に好印象をあたえたというべきか。
その東洋大学があれよあれよと箱根を制覇してしまった。事件のよる危機感からチームがひとつにまとまったとすれば、なんとも皮肉というほかない。
東洋につづいて、このどは日本体育大学である。陸上部の男子部員が合宿所で大麻事件などを起こしてしまったのである。事件をおこした当人は陸上部でも長距離のではない。跳躍種目の部員だったたのが、関東学連は連帯責任を援用して、箱根駅伝のシード権を剥奪、はく奪、関東学連主催大会への出場停止などきびしい処分を課したのである。
関東学連が箱根のシード権をはく奪するのは初めてケースである。連帯責任を課したのは合宿所でおこした事件だからというのだが、駅伝とはまるで関係のないフィールド種目の部員の不祥事である。東洋大のケースとくらべると、かならずしも公平なお裁きとはいえないだろう。
裏読みすれば、大学当局の処し方がお裁きに影響したというみかたもなりたつ。東洋大の場合は、事件を起こした当人を即刻退部させ、間髪入れずに監督、部長の首を斬って、ひたすら恭順につとめた。だが、日本体育大のほうは、事態を少々あまくみすぎていたようである。
対処がおくれてうえに、学連の処分にも異をとなえ、最後まで争う姿勢をみせていた。そういう頭の高さが学連をちりちりさせたともいえる。だからといって学連のほうに分があるかというとそういうわけでもない。両校の明暗をわけた根拠がいまひとつあいまいで議論を呼んだのは当然の結果といわねばならぬ。
ともかく日本体育大学は前回3位の強豪である。東洋大のように「禍転じて福……」にできるかどうか。予選会をぶっちぎりで通過して、箱根本戦でも優勝争いにからんむという気概をみせてほしいものである。
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