日時計 2000年9月 日記

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▲最新の日記▼読了本

2000.0930(土)〜1001(日)  
購入本
朝松健/『マウスオブマッドネス』/学研
佐藤亜紀/『1809』/文藝春秋
お借り本
梶原由佳/『『赤毛のアン』を書きたくなかったモンゴメリ』/青山出版社
内田善美/『星の時計のLiddle』1,2,3/集英社
頂き本
北野勇作/『クラゲの海に浮かぶ船』/角川書店
トム・マコックレン/『走れすばやく、走れ自由に』/福武書店
風見潤・編/『魔女も恋をする』海外ロマンチックSF傑作選1/集英社コバルト文庫

 本日は夕方からDASACON4に参加するので、真面目に家事その他。せめてそこらに積んである本のエントロピー減少だけは努めなくては。

 ゆうべプリントし忘れたDASACON会場周辺の地図をプリントしようとするが、地図ページがただ今メンテ中かなにかで表示されない。歩いて行く分にはわかるのだが万一タクシーに乗る羽目になったときに指示できないと困ると思ったのだが、あきらめて住所だけメモる。あとでこれが後悔の元となるとはつゆ知らず…。
 洗濯ゴミ捨て片づけ食器洗い洗濯物畳み紙類の整理そして本の片づけ&掃除機かけ。事前の腹ごしらえに3時半水道橋集合となったので、これ以上する時間なし。ご飯だけ炊いて、娘に「この材料でこうしてこうやっておかずを作るはずだったんだけど」と、ごはんを作る意志は充分にあったことをアピールして、あわてて家を飛び出す。雨。

 6人で待ち合わせし台南ターミー麺で食事後、会場までタクシーに分乗するが、私たちの乗った1号車の運ちゃんが「○○わかります?」「わかんない」「じゃ本郷○の○わかります?」「わかんない」「○○大学ってわかります?」「わかんない」いい加減にせいよ。「じゃとりあえず壱岐坂を曲がって下さい」案の定つぎに曲がるべきところを行き過ぎて、迷子になりかけてしまったのだった。無事到着した2号車の大江戸さんから安否を気遣うケータイが…。

 この会場は3度目とは言え、やはり玄関前に「ダサコン様」の看板が立っているのは気恥ずかしい。書く方はもっと恥ずかしかろう(*^_^*)

 席について間もなく倉阪さんとミーコちゃんがお出でになる。ひゃあミーコちゃんこんにちはあ、とご挨拶、今日はお友達の三毛猫ミミちゃんが一緒。このあとずーーっとミミちゃんを抱っこして過ごしたのであった。
 結局睡眠は朝の約1時間余り。帰宅後の母の引っ越し準備はちときつかったー。

2000.0929(金)  

 夕方からの職場の組合のあつまりが長びいて、帰りが7時近くになる。当局側からの組織替え等の方針に対抗するために、組合は当局案のいちいちに反対するのでは効果が薄いと判断して、いわば「影の内閣」のように独自の組合案を提出しようとしている。この戦略が理解できずに自分の意見を繰り返し述べたてる人がいて長びいたのである。

 帰宅すると、伊豆大島での仕事から帰ってきた連れあいがくさやをおみやげに買ってきていた。うげー、と言いつつ焼くと(責任をとって買ってきた人に焼いてもらったのだ)、予想したほどには臭くない。食べても記憶にあるのよりマイルドになっているようだった。おつ。けれどもやはり台所周辺、食卓まわりは臭いが染みついて大変。一番離れている長男の部屋も「すげえくせえ」と文句が出る。あっ、くさ!

 『青い鷹』の続き。タロンは、神官たちがいかに巧みに宗教を利用して王を操っているかを目の当たりにする。仕える神により神官の中にも派閥がある。神殿の狭く暗い秘密の通路をひそやかに歩く王とタロン、神官たち。

 明日の晩はださこん4に参加のため更新はお休みです。おやっ、公園のニワトリが時を作っている。ちょっと早いぞ。

2000.0928(木)  
購入本
チャールズ・パリサー/『大聖堂の悪霊』/早川書房
ロバート・シルヴァーバーグ編/『遙かなる地平』1,2/ハヤカワ文庫SF
荻原規子/『西の善き魔女 外伝2』/中央公論新社C★NOVELS
プチフラワー11月号
ネット経由古書
西崎憲・編/『怪奇小説の世紀1 夢魔の家』/国書刊行会

 今日のバカ買いは、上記のごとし♪おまけに、近所の書店で試しに注文してみたヘンダスンほかのハヤカワ文庫の復刊がわんさか入荷していたし。この山はありがたく次回までお預けとする。
 お昼を食べながら今買ってきたパリサー『大聖堂の悪霊』をちらりと見ようと思って開き、ついそのまま序章に当たる「編者まえがき」を読んでしまった。おお、面白!しかし意を決してここでしぶしぶやめ、『青い鷹』の続きにかかる。主人公の少年神官タロンが人目を忍んで川を下る@ネタバレ自重。暑さ、息苦しさなどの感覚、壁に隔てられた聴覚と限られた視覚によって描かれる緊張の川下りが圧巻で、時間の経つのに気がつかないほどである。

 2,3巻目しか持っていなかった『怪奇小説の世紀3』を、ネット経由で入手。国書刊行会が増刷すると言ったままそれきりになっているので、しばらく前から古本を捜していた。居ながらにしてこうして手にすることが出来るのはまったくありがたい(西崎さんごめんなさい)。西崎憲氏の解説はいつもながらに平易な文章でありながら実に有用だと思う。そのテンポが好きである。あいまにこの中の一つ、ヨナス・リー「岩のひきだし」を読む。指輪によって「向こうの世界」に抗い難く引き寄せられて命を失うというもので、類似のパターンの話は多いがどれも凄まじいばかりの怖さがある。
 10月は夏とはまた違った怪奇幻想にぴったりの月だ。この一年ほどでやや古めかしい怪奇幻想系の本がたまったので、ださこん4終了後の来週からまた心おきなくそっち方面に突入。

 『プチフラワー11月号』巻頭の波津彬子は、若い女の子が古いお城のようなお屋敷を相続し…次号に続く。今号と次号の2回連載だそうだ。

  9月も末であるが、きょうはまさに風光る一日だ。木々の梢を渡る風は、ざざーっとまぎれもない秋の音を立て、風に葉裏を光らせる桜や欅が最後の葉群の勢い を誇っている。木々の葉、電柱の金属部分、建物の角かどが秋の真昼の日光をまぶしく反射する。目を射るきらめきのひとつひとつが、そこに何かの意味を暗示しているように思える。そこから何かを読みとれるように思うが、小さなつむじ風が落ち葉と一緒に意味をも ぎ取って行ってしまう。

 bk1はやたら重たいから余りあちこち見て歩いておらず、検索も単純な検索しか利用していなかったので、目玉の一つである書評は検索できないものと思いこんでいた。ところが突然書評検索と言うものを発見。これは結構便利かも知れない。

2000.0927(水)  
購入本
デイヴィッド・アーモンド/『肩胛骨は翼のなごり』/東京創元社

 朝洗濯物を干しにベランダに出ると、ひんやりと肌寒い。長男は寒いと言って、学生服を着て登校した。雲一つない抜けるような碧空、というのは今日のためにあるような言葉だ。次男の保育園は運動会の総練習、今日が本番だったらよかったのに、と親も保育士も口々に言い合う。昼頃急に風が出て、これを境に綿雲が空に広がったが、湿度の低い爽やかな空気はそのまま。そのせいかこの数日、肌が乾燥するのを感じる。

 帰宅するとbk1から『肩胛骨は翼のなごり』が届いており、食後さっそく開いてみるがそのまま一気に読了。手になじむソフトな造本と、ふくろうの鳴き声と月夜のシーンにぴったりのブルーの装丁は好き。感想は後日。

 『青い鷹』に若い王が登場、物語は次第にディキンソンらしくなってくる。

2000.0926(火)  
購入本
ケネス・グレアム作・アーネスト・H・シェパード絵/『おさわがせなバーティくん』/徳間書店
トーベ+ラルス・ヤンソン/『黄金のしっぽ』ムーミン・コミックス1/筑摩書房
『SFマガジン11月号』秋のファンタジー特集/早川書房

 秋の夜長はまったくもって眠いですハイ。

 近所の本屋のレジのバイトの女の子は2,3ヶ月前に新しく来たようだが、この人がいるとなんというかもう、今日は欲しい本がないといいなと思っちゃうのだ。これだけは困るということを一つだけ言うと、彼女は本を袋に入れるのが(も)奇跡的に要領悪いのだ。きちんと入れれば平らになるのに、積み重ねたままを入れるものだから、いつもだるまのように太った紙袋を渡されることになる。その際に本の角で袋が破れて入れ直すことがままある。帰り道では抱えている指が紙袋の無駄な空間に突き刺さるので袋が破ける。これだけならまだしも、うまく袋に入らないときには1,2冊を取り出して押し込み直すので、既に袋に入っている方の本の帯が傷んでしまうのだ。私はそれ程帯を神聖視する方ではないが、今買ったばかりの真っさらな本の帯が目の前でぐちゃぐちゃになるのはやはり耐えられない。てんちょー、何とかして下さい〜。

 読み途中の『青い鷹』は児童文学として訳されているためか独特の紙面(漢字仮名交じりの具合など)でどうももどかしさがある。これが出た1982年に訳者(小野章)は55歳、そのせいもあるのかも知れない。ディキンスン(ディキンソン、ディッキンスン?)は日本語表記が統一されていないので検索しにくい(ディキンスンが一番元の発音に近いのだろうか)。せっかく幾つかは読んでいるので、ともかく訳本にはおいおい全部当たりたいものだと思う>ね、MZTさん(謎)。
 この作品が受賞しているガーディアン賞のリストを挙げておく(候補作、邦訳リストもあり詳しい)。なかなかなラインナップで、思いがけないところで『ふくろう模様の皿』のタイトルを見てドキっとする。好きなのです、これ。

2000.0925(月) 

 片づけに疲れたのか秋眠暁を覚えずか、10時に次男と寝てしまう。よろよろ6時半に起きる。

 昼休みに「メルツェルの将棋指し」を読み終える。有名な自動人形がどうやって動くか…機械なのか、あるいは人が動かしているのか…の謎解き。どのような特徴をもって機械らしさ、あるいは人間らしさと捉えるかが面白い。機械ならば予測可能な筋道については理屈ではどんな難しい問題でも解けるはずだという。この自動人形を動かしているのがじつは人間だという大きな証拠が、チェスが難しい局面になると、逆に考え込んだり逡巡したりする動作をしなくなることだという。操っている人間がチェスの内容にかかりきりになって細かい仕草がお留守になるのだ。また本当に機械なら、観客にアピールするのは仕掛けの複雑さではなくむしろ単純さであろうという指摘が鋭く、現代的だと感じた。

 ディキンソン『青い鷹』の解説ページを開いていると長男が「本の解説って(そもそも)読むものなのか」という質問をする。まともに考えるとこれは答えるのに難しい質問だ。
 その中で『過去にもどされた国』『心のやすらぎ』『悪魔の子どもたち』という三部作がちょろっと紹介されていたので、読みたーいと思う。『過去〜』と『悪魔〜』だけ大日本図書から出ているとある(1968,1970)。なぜに2作だけ?図書館で入手できるだろうか。他の邦訳作品としてサンリオ文庫の『キングとジョーカー』『緑色遺伝子』があげられているが、なるほどこの『青い鷹』は1982年刊であった。
 本文にはいるのは明日から。

2000.0924(日) 

 次男のピアノのあと、母の引っ越しの準備。姉が先に来て衣類の選り分けにかかっている。近所に行くほか殆ど外出をしない母だが、びっくりするほど衣装持ちだとわかる。どうしても女性は洋服を買うことに自己充足を感じるのか。
 私はひたすら自分の本の選り分け。更に一箱、売る本が出るが、焼け石に水。

 いい加減に切り上げて、次男、連れ合いと白山方面へ。予想通り根津のお祭りは先週終わってしまっていた代わりに、白山神社のお祭りをやっていた。ちょうど神輿が出ていたのでしばし見物する。遠い昔住んでいたあたりはすっかり大きいマンションに様変わりしていた。

2000.0923(土) 秋分の日 
図書館本
ピーター・ディキンソン/『青い鷹』/偕成社
河野一郎編訳/『イギリス民話集』/岩波文庫
エミリー・ロッダ/『ローワンと魔法の地図』/あすなろ書房

 次男が、小学校の運動会の「来年度就学児のかけっこ」に出場。この3,4年前から近所に大規模マンションが二つ出来たので、小さい子が増えた。今日来た子だけで優にふたクラス分くらいいるのではないだろうか。
 次男の保育園のクラスの子も半分くらい来ており、再来週は保育園の運動会でもあるので気合いが入り、本番さながらの頑張りである。次男もすごい形相をして走り見事一着!(クラスで一番早い子は来なかった)一年生のメッセージ入りの折り紙と朝顔の種をもらって意気揚々と帰ってきた。

 そのあと昼前から長男の文化祭に行ったが、その頃から雨がぱらぱら降りだし、昼過ぎには本降りになる。運動会も多分お昼で切り上げになってしまったのだろう。休みの度に雨が降るような気がする。
 我々とほぼ同時に別な用事で出掛けた連れ合いも、「時間を間違えたから今から行くー」とアホな電話をかけてきて文化祭に合流。なんで12時はじまりと4時はじまりを間違える?お昼に付き合ったので、早く帰る予定がつぶれた。

 来月末、母が我が家と同じ建物の別住戸に引っ越してくることになったので、その片づけに手を着け始める。私の本がいーっぱいあるので、文句を言われないうちに出来るところから片づけないと以下略(来週はださこん4もあるでよ)。要らない本は捨てなさいって連れ合いは言う。要らない本って言うのがあるならこういう状態にはならない。それでも今日の2時間弱で段ボールひと箱分の古本屋行きが出る。あとはそれ程出そうもない。
 母もさすがに以前のようには片づけが出来なくなってきてリスみたいにいろんなものがあちこちにため込んであるので、その片づけも大変。スーパーの袋、タオル、ひも、紙、段ボール、古い電話帳、などなど。要るもの・要らないものをある程度まで分別したら、あとは頑張らないで引っ越しらくらくパックにしてしまうつもり。それにしてもいろいろな住所変更や手続きが煩わしい。

 でもってサッカー(Boo)、陸上の観戦で活字とは無縁の一日。ううっ、禁断症状。

 『ローワンと魔法の地図』は、図書館にリクエストしておいたほかの二冊を取りに行った時、児童書の新着の棚にあったもの。しばらく前から書店で「オーストラリアで人気」というようなポップが立っていたので気には留めていた。シリーズもので、オーストラリア児童図書協会が選ぶ年間最優秀児童図書賞を受賞しているという。さてどんなものでしょうか。題名は最近大人気の「誰それと何とかのかんとか」と言う本によく似ていますな、とか思ったりする。原題は"Rowan of Rin"なので、やはり時流に乗せようと言う編集者の意向か。

 『イギリス民話集』を見ると、確かに「夢の家」が載っている。以前掲示板で内田善美がらみのぞりこさんの質問に対して安田パパさんのお返事でフランスのフォークロアと落語のネタが紹介されたところ、さらに姥姫さんの書き込みで『イギリス民話集』があげられたので、では私もそれを見てみよう、と言ったままになっていたもの。この本ではどこからどの年代の話が取られた、ということが明確に書かれていないので、時間的な関係がわからない。こういったものに詳しい方には有名な話なのかもしれない。噂やフォークロアの伝播は研究したらさぞかし面白かろうと思う。

 あっ、突然思い出した。今日で丸2周年です。ぱちぱちぱちぱち。

2000.0922(金) 
購入本
梶尾真治/『おもいでエマノン』/徳間デュアル文庫

 家の雑用のため、一日つぶれる。銀行とか役所とか、行くついでに今日やってしまおうという手続きとか、まとめて始末する。途中2時間ほど空いたので池袋へ行き旭屋でハヤカワ文庫のフェアを見る。おお、ゼナ・ヘンダスンは一冊もなし。黒いナイロンと革のショルダーバッグを一つと、ダヤンのハンカチ三枚を買う。帰宅してそれを見た息子に「保育園バッグまた買ったの?」と真顔で訊かれた。

 待ち時間に『影が行く』から「消えた少女」「悪夢団(ナイトメア・ギャング)」を読む。古さは否めないが、それはつまらなさではない。

2000.0921(木) 

 昼過ぎは、どうしてこんなに、と思うほどの日差しとしつこい暑さだったが、たまたま今日はそれから約1時間ごとに外気に触れる機会があり、そのたびごとに暑さが涼しさに取って代わってゆくのが体感できた。最後に帰宅する6時すぎには、あの暑さが同じ一日のことだとは思えないような秋らしい夕闇が落ちていた。

 最近睡眠時間が増えているような気がする。昨晩は9時半から6時15分まで、9時間近く寝た。ううー。ケータイが鳴り、ピッと押しても着メロが止まらないのでおかしいなーと思ったら、それは目覚ましであった。

 中村融・編訳『影が行く』を、キース・ロバーツ「ボールターのカナリア」から読み始めた。おおー、ホラーだ!子どもの頃『超生命ヴァイトン』をジュヴナイル版で何度も読んだが、目に見えないエネルギー生物ヴァイトンは怖かった(今もハヤカワSFシリーズで入手可)。続いて表題作。これもずいぶん昔に読んだ記憶があるがすっかり忘れている。犬のあたりですっかり思い出した。今改めて読むと、怖さがひとしおである。

 ランプリエールの解説で自動人形に関して言及のあったポーの「メルツェルの将棋指し」をこれから読む。創元推理文庫の全集の表記は「ポオ」だが、一般的にはどちらなのだろう(「ポオ小説全集」1〜4)。

2000.0920(水) 
購入本
小林泰三/『肉食屋敷』/角川ホラー文庫
恩田陸/『光の帝国 常野物語』/集英社文庫
トーベ+ラルス・ヤンソン/『ムーミン、海へ行く』ムーミン・コミックス3/筑摩書房

 『不良のための読書術』読了。いっぱん読者(含む私)があまり知らない本の流通について、へーそういうふうになっているのか、とわかるほか、ゴダール式読書法のくだりが笑える(「笑える」とはこの場合肯定的表現なんだが一般には否定的表現なのか?ぶつぶつ<)

 「ゴダール的読書法」とは、何が何でも本は最初から最後まで読まなくちゃいけないと強迫観念を持たずに、面白いところだけ読めばいい、と言うことである。これと「疑似速読術」、つまり(1)「 」の中の会話だけを読む、(2)キーワードが入っている文章だけ拾って読む、(3)一行に上の方の10文字だけを読む、という三つのテクニックを併用すればよろしい、と言うのだ。たまたま面白い本なら最後まで読み通しちゃってもよろしい。この方法で本当にその本を読んだことになるのか?と問われれば「「読んだことにならなくたって、いいもんね」というのが不良の答えである」。あくまでも本を読む主体は、自分なのである。

 ありがたいことに読者がこの読書法をすぐに実践することが出来るように、文中にはツカミの語句がちゃんとゴシック体になっている。たとえば「マンガはいまや全出版物の四割弱を占めるに至っている」とか「図書館は本好き養成ギブスなのである」のように。

 元の単行本は1997年の出版で、すでに古さを感じる部分もあるが、この文庫版へのあとがきが新たに付け加えられている。当時と変わらないこと(出版点数が相変わらず異様に多いこと)と変わったこと(リサイクル系古書店が増えたこと、オンライン書店などインターネット関係のこと)について書かれたこのあとがきがもっとも記憶に残ったが、これすら日々古くなろうとしているというのが実感である。

 一度読んで筋を知っている本から入るのが吉だとか>原書読みのススメ。じゃあ『黄金の羅針盤』"The Golden Compass"から行くかっ!と開けば、字が小さくってぎっちり…。不戦敗。ほんじゃもう一つのアドバイス、短篇から入るのが吉、てことで"Who's Afraid? and Other Strange Stories" (Philippa Pearce)をちびちびいきますか…。このなかの"The Yellow Ball"は、涙なくしては読めないジェントル・ゴーストもの(これは以前読んだのだ)。これは日本語訳が先だったか、英語が先だったか。日本語訳は『こわがってるのは だれ?』(岩波書店)収載。ピアスのスーパーナチュラルものはどれもすばらしく、特に"The Shadow-Cage"の怖さは天下一品だ。これが読めるのは『幽霊を見た10の話』(〃)だったかな?
 ピアスは『トムは真夜中の庭で』ばかりが人気だけれど、どうかほかの作品ももっと読まれて欲しい。

2000.0919(火) 

 ちょっと訳あって、と言っても大したことではないが、ハヤカワSFシリーズ、一名銀背で出ていてその後文庫落ちしていないもの、というものを一目瞭然に見られるリストがないかなあ、とちょっとだけ捜してみた。そのものはないみたいなのでAMEQ(アメキュー)さんのところで当たってみることにする。

 昨日も書いた贋あなたまSF系掲示板をはじめWeb上にはいろいろなリストやツール等々、本当に様々な便利サイトが揃っている。AMEQさんのところもその一つで、利用するたびに、これだけのリストを作られた労力には頭が下がる。

 貴重な昼休み、職場の組合の集会があったため一文字も読めず。まだ暑さが残っているというのに、リストラの北風はしっかり吹いているのだ。
 というわけでまだ『不良のための読書術』2/3くらい。

2000.0918(月) 
購入本
R・シャパード、J・トーマス編/『Sudden Fiction 2 超短篇小説・世界編』/文春文庫

 にじむさん贋あなたまSF系掲示板を作って下さったので重宝しております。感謝。

 『不良のための読書術』読み始める。本の選び方等は私が普通にやっていることも多く、それほど目新しさは感じないが、出版・流通に関しては知らないことだらけなので得るものはある。速読しやすいように(?)あちこちゴシック体で強調してあるのでその前後だけ読んでもとりあえず読んだ気になりそう。

 『Sudden Fiction 2 超短篇小説・世界編』は94年のものだが、上記の本で言う「タッチ・アンド・バイ」をしなかったためにその後お目にかかる機会が殆どないままだったもの。近所の本屋で、正編とともに並んでいたので今日こそ「タッチ・アンド・バイ」。ブッツァーティ、ボルヘス、カルヴィーノ、ディーネセン、バーセルミ、他、ほか。

 久しぶりの秋晴れに、気分もすっきり。湿度が低く、洗濯物がよく乾いて嬉しい。いち早くきんもくせいが香っているが、例に洩れず本体の姿は見えない。

2000.0917(日) 

 この週末はハヤカワ文庫復刊・重版の『宇宙気流』以下を見に大きい書店に行きたかったが、時ならぬ台風接近による天候の悪化その他で行く機会を逃す。辛うじて夕方近所に用足しに出たが、目的の店は二つとも連休のためかお休みでがっかり。

 これと言った用もなく家にいる時間が長かったおかげで『ジョン・ランプリエールの辞書』読了。パリの章の終盤からラ・ロシェルの章、そしてラストまで、立ち読み・歩き読み・座り読み・そして家族の皆さんにおつきあいして見たオリンピックのTVの前で、ずっと手放せずに読み終わる。あー、面白かったぁぁぁ!
 
古典の遺産がつまった歴史小説かと思いきや、ミステリでもあり、ファンタジーでもあり、SFの様相もおび、恋も友情も(クサイかな)あり、その楽しいこと。作者の視点は次第に時空を越え空の高みにも登る。スチームパンクに通じるところも多い。ああ、もう終わりの方なんて笑いっぱなし。ご老体ばかりの海賊船の行方やいかに!?いやこれは、私には今年のベストかも。

 次はあれもこれも、とひしめいているのだが、ぐっとこらえて『不良のための読書術』にgoぢゃ!と我が身を励ますのであった。おっと、早く寝なくちゃ、ださこん4もあるし!

2000.0916(土) 

 昨晩、Web遊びを終えたあと、『ランプリエール〜』をつい読んで遅くなり、おまけにケータイの目覚ましを月〜金にだけ鳴るように設定したまま、土曜の今日鳴るようにセットし直すのを忘れた。三連休の真ん中だが、娘は文化祭、長男も普通に学校があるのだった。で、彼らはそれぞれ勝手に出ていったのだが、私はしっかり寝坊。そんなこんなで連れ合いに「(子どもたちが学校に行くのにそれを放っておいて)起きられないんだったらホームページのメンテはやめなさいっ!」と叱られてしまった。申し開きできず、うなだれて「起きる…」と小声でつぶやき、一日おとなしくしている私なのであった。

 夜は池袋の芸術劇場で京劇を見る。今日の演目は「孫悟空天空で大暴れ」。花果山で小猿たちを従えて反っくり返っている孫悟空が、天帝に呼ばれたあげくあちこちで大変な騒動を引き起こし、かまどで49日間焼かれても一層強くなって蘇り、羅漢たちをやっつけて「バッハハーイ」とばかりに金斗雲に乗って飛び去ってしまう、という楽しい一番であった。茶目っ気たっぷりの孫悟空の軽業、漫才顔負けの二人の厩番、腕長、足長、でぶ、ちび、等のマンガのような羅漢たち、形相も凄まじい天の神々たちなど見所たっぷりで、あー、おもしろかった!

 帰宅すると柔道の田村、野村がしっかり優勝していて、それを見ながらまたも夢の国にさまよいこむダメ母であった。

2000.0915(金) 

 10時に次男のピアノに付いていって(たん、たた、たん、うん、だの、どれみー、みれどー、らしどー、どしらーだの)、終わってすぐマンション内のリフォーム例を公開しているところを見に行く。80平米で一人暮らしなら、押入半間分のデッドスペースができてもかまわないよなあ…貸してくれればいいのに。我が家も来年お風呂と洗面所を直さないとダメなので、バリヤフリーのお風呂は参考になる。浴室乾燥機能は魅力>貯金はどうする

 それも終わり次第、久しぶりに美容院へ。適当におしゃべりして、「さあ読書モード」と宣言しランプリエールの続きを読む。ああ楽しい!そうかそうか、そういうことか!と一人うなづきつつ前の方に戻って確かめたり。まだパリの章。自動人形は一度出てきたあと、またずいぶんとはでにサイボーグ化して登場するのだった@_@
 ジョン・ランプリエールは、ギリシャローマの神話の世界にすっかりひたりきった、人間社会には無垢な青年で、細面に眼鏡をかけてひょろりとやせた姿に描写されている。少なくとも外見は全然違うのだけれど、なぜかMZT氏を思い出してしまう(*^_^*)

 連れ合いがBSで「怪」を見て「水木しげるがでた、ミヤベがでた、アラマタが出た」と騒いでいた。ご丁寧に「録画したから見なさい」とのお達し。

2000.0914(木) 
購入本
『ユリイカ』7号(1979) 特集 ラテンアメリカの作家たち/青土社

 ボルヘスって意外に手に入りにくいのねと実感。

 昨晩、「テニスのおじちゃん」が次男に、とわざわざ持ってきてくれたユーハイムのクッキーをぽりぽり食べながら「よなよなエール」(軽井沢の美味な缶ビール)を飲んで、『ぼく、ネズミだったの!』を読了。プルマンらしくまた斜めの視線が特徴的。でも釣り書きでネタバレしちゃいけませんて>偕成社

 昼休みに『ジョン・ランプリエールの辞書』続きを読むが、可笑しくて、ほかに人がいなかったのを幸い声をあげて笑ってしまった。パリの部に入る。次第に謎の輪郭が見えてきて、今日は殺人!おお。

 夜遅くなって、ようやくDASACON4のアンケートの回答をする。15日中に送信すればよいのかと思っていたが、送信後15日0時〆切と知る。滑り込みー。

2000.0913(水) 
購入本
平井呈一/『真夜中の檻』/創元推理文庫
G・ガルシア=マルケス/『予告された殺人の記録』/新潮文庫
永江朗/『不良のための読書術』/ちくま文庫
大塚英志/『木島日記』/角川書店
 〃 /『北神伝綺』上・下/角川書店 ニュータイプ100%コミックス
『本の雑誌』10月号/本の雑誌社

 ださこん4の課題図書だということもあって『不良のための読書術』を入手。著者の永江朗氏がゲストに決定したとのことである。
 いま、昨日届いた『ぼく、ネズミだったの!』に浮気しているから、これが終わり次第『ランプリエール』に戻り、そのあとに読むことになる。『出版クラッシュ!』も途中だから結構きついかも。どうしてもフィクションに手が伸びてしまう現実遊離型の私なのだ。

 近くの書店で『本の雑誌』を買って安田ママさんのどとーの記事を読む。
 この書店で、店長氏に小声で「あのー、創元文庫の『真夜中の檻』はいってます?」と訊くと「あっ、今日入りました!」と机の上の山の一番下から出てきましたたった1冊。帰宅して東へんしうちょうの詳細な解説を読む。この書店ではハヤカワ文庫のフェアの商品はまだ置いていない。うー。

2000.0912(火) 
購入本
妹尾ゆふ子/『NAGA復讐の蛇神』/ハルキ文庫
フィリップ・プルマン/『ぼく、ネズミだったの!』/偕成社チアブックス

 日曜からのヤク中続く。思い切ってきょうまで休むことにする。次男は元気が有り余っているので保育園に。午後から近くの区立のホールに歩きで行って子供劇場を見に行くのだという(子供の足で20分強)。台風の影響があると言うが朝のうちは雨も降っておらず静かなものだ。そのうち10時過ぎに窓の外を見るとものすごい吹き降りに目を見張る。この気候の激しさは本当に何なのだろうか。昼を過ぎると嘘のように雨は上がり薄日さえ射している。
 結局次男たちは一滴の雨にも会わずに子供劇場に行って来られたようだ。

 この台風14号の影響は我が家にも及んだ。昨日の昼前に京都へ行った連れ合いが、昨晩帰る予定の18時台の新幹線が遅れて20時過ぎの出発となり、結局そのまま米原にもたどり着けず、車中泊となってしまったのだ。駅と駅の間だったので食糧も出ず、パソコンの電池も尽き、手持ちの本も僅かとなり、辛うじてケータイは生きているという状態。結局昼前に大阪に戻ることが出来、電車で小松へ行き、そこから羽田へ飛んで、帰宅したのが18時半。まあ24時間の旅とはお疲れさまでした〜。

 『幽霊の恋人たち』読了。先日まで知らなかったのがもったいない。

 あちこちに散らばる本を片づけていて書棚の『アザー・エデン』が目に留まり、そうだキース・ロバーツの短篇が出ていたはず、と再読する。「笛吹きの呼び声」である。
 一言もものをしゃべらずただフルートだけを吹く者・笛吹き。その音色は魔法を持ち、人々からは「妖精の民」の生まれ変わり、不死の者、などと言われた。ある時一人の少女を愛し始めるが彼女は彼のものとはならずに身を落として行き魔女として連れ去られ、笛吹きは復讐と喪失を知る。長い年月、笛吹きはフルートを吹き続けついに悪魔にさえも打ち勝ち再び彼女を得るが、最後にその傲慢によって悪魔の奴隷である彼女と魔法の絆を結んでしまったことを悟る。これが今も残る「笛吹きの呼び声」と言われる森の物語である。
 こういう舞台は文句なしに私のツボなのだ。『パヴァーヌ』がようやく復刊されたのは喜ばしいことだが、相変わらず他の作品の邦訳はされないままなのだろうか?

 プルマン『ぼく、ネズミだったの!』bk1に今朝注文し9:09受注確認、9:48発送完了、17:45頃到着。プルマンは言わずと知れた『黄金の羅針盤』『神秘の短剣』の著者である。『NAGA』は予約注文しておいたもの。

2000.0911(月) 

 金曜からハナが少々出ていた次男は、見事に悪化。咳がたくさん出るので保育園を休んで医者に連れて行く。帰宅して次男と共にひたすら睡魔に身を任せる私である。この睡魔、ものすごい強力で、いっこうに去る気配がない。いったいあの酔い止めの中の何が効きすぎたのだろう。

 この異常な眠気にも波があるので、引き潮の時に『幽霊の恋人たち』の続きを読む。ファージョンの「リンゴ畑のマーティン・ピピン」以来こういう形式の物語は好きなのだ。あと一編を残すのみ。

2000.0909(土)〜10(日) 
購入本
S・N・バーマン/『画商デュヴィーンの優雅な商売』/ちくま学芸文庫
エリック・マコーマック/『隠し部屋を査察して』/東京創元社
月刊コミックフラッパー10月号/メディアファクトリー
大島弓子/『金髪の草原』/朝日ソノラマ

 土曜の朝から日曜の昼過ぎまで、次男の保育園の年長クラスの「卒園旅行」で秩父方面へ行く。約半数を占める(!)幹事さんたちが何から何まで手配して下さり、行き帰りは貸し切りバス、お弁当作りも不要のため楽チン。パンフではものすごい豪華版らしかった宿は、着いてみればなるほどそれなりだったが、裏手から崖を下ってプライベート川岸があって子どもたちの川遊びには最適。あいにくと、もとい、幸いにものすごいカンカン照りだったので、子どもたちはそれは楽しく過ごせたのであった。
 夕食後の花火、おきまりの子供が寝静まってからの飲み会、翌朝は急遽ぶどう狩り、等で子どもたちは「あー楽しかった!」

 行きのバスでもう少し乗っていたら酔いそう、という感じになってしまった私は、帰りに子供用の酔い止めを子供用の量だけ飲んだのだったが、それが効きまくってしまいその後たいへん…。

 1時半過ぎに帰着し、仕事で出ていた連れ合いから「映画を見に行こう」と言う電話が入ったので、どうも眠い、とおもいつつ次男を連れてへろへろ出て行く。一番見たかった「フリントストーン2」は昨日でどこもおしまい、仕方なく「スチュアート・リトル」(吹き替え版)を見る。ここでどうにも眠くて途中から爆睡。やたらに「だって、家族なんだもの」が連発されるのには辟易した。スチュアートの動きは非常になめらかで実写との食い違いも感じられなかったのだが、さすがに日頃ネズミを見なれているとあの顔は人ともネズミともつかず何とも奇妙で違和感が残った。吹き替えのせいか、特に登場ネズミの声が姿とそぐわなかった。ネコたちは表情がおかしくってサイコー。スチュアートがネコたちにだまされたことがわかり養父母のもとに帰ろうとするあたりから寝てしまい、気付くとエンドクレジットなのであった。あーもったいない。

 リブロに寄り、そのまま家の近所で長男、娘と落ち合い中華を食べる。このあたりは土日とお祭りなので、最後のおみこしが繰り出して盛り上がっている最中だ。ちょうど店の前で小さいながらみこし4基がもみ合って賑やか。このあと異常な眠気が本格的にやってきて、帰宅するなりバッタリ倒れ込む。

2000.0908(金) 
ネット経由購入本
安房直子/『きつねの窓』/ポプラ社文庫

 じとーっと湿度が高く、その分体感温度の高い過ごしにくい一日。帰宅時に自転車置き場へ行くとサドルが濡れていて、またにわか雨だったのを知る。昼休みには日傘だったのに。今週の雨模様続きのせいで、洗濯物が玉突き状態にたまる。洗濯物も5人分となると洗濯をしない日というのはありえないのだが、家の中に干すのには限度があって、さすがに今日は未洗濯物が山となってたまっているのだ。明日は泊まりで次男の保育園の卒園旅行。朝洗濯した分は干して行くとして、日曜の朝洗濯機を回して置いてくれるかしら(疑)。

 ランプリエール、ロンドンの地下の怪しい地下道は太古の昔に竜(恐竜?)の横たわったあとだという。ジョーン・エイキンの作品を思い浮かべたり。だんだん人名がこんがらがってきたのでメモしてみたりする。

 9月から10月の初め頃までに出る本で気にかかったものを抜き書きしてみたら既に十数冊、それ以外にもともと買うつもりの本もあるのだから合計したらいったい何冊に >いつ読む

 というわけで明日はどこやら秩父の方でお泊まりなので更新はお休み。。次男の年長クラスの父母会行事なのだが、担任の先生二人と園長先生まで参加だという。天気予報だとかなり暑そうだ。降らない程度に曇って涼しいのを望む〜。

2000.0907(木) 
図書館本
アン・ローレンス/『幽霊の恋人たち―サマーズ・エンド―』/偕成社

 どうも曜日の感覚がずれているらしい。帰宅してしばらく明日が土曜だとばかり思っていた。お釣りを少なくもらうとすぐに気が付くが多くもらう分には全然気付かないというアレである。

 昼休みはせっせと『ジョン・ランプリエールの辞書』にひたる。ロンドンの狂乱がこれでもかと物量作戦のように雪崩をうって溢れ出てくるそのものすごさ。
 帰りに図書館に寄りリクエスト本『幽霊の恋人たち―サマーズ・エンド―』を引き取る。原題はそのまま"Summer's End"、美しい題名。夏が終わり秋の入り口に立つとき(ちょうどいまこの時期)、学校を卒業してしまったベッキーは農場の柵に腰掛けて秋空を見上げていた。そこへふらりとやってきた男の人が、彼女の家に住み込むことになる。そのレノルズさんがベッキーたち三姉妹に「家賃」がわりにお話を聞かせてくれる…。と思わず引き込まれてしまう出だしである。ちょっと見るつもりで一話目を読んでしまった。

 筑摩書房のサイト内のwebちくまで永江朗のオリジナル連載「これでいいのか日本の出版」が読める。たむらしげるの連載「モービーディック」も素敵です。ただしこれらを読むにはT-Timeの簡易版のようなT-Time plugを同サイトからインストールしなくてはならない。

2000.0906(水) 
購入本
小関智弘/『鉄を削る 町工場の技術』/ちくま文庫

 次男と保育園に行くときには、これで暑さが戻るってほんと、と言うほどの涼しさだったが、昼にはまた蒸し暑さがぶり返した。また2度ほどにわか雨が降る。
 昼休みに、たむらしげるとますむらひろしが目当ての『月刊フラッパー』を買いに行ったら、「この所配本がなくて…」と謝られてしまった。えーん。どこで買ったらいいの。

 『ジョン・ランプリエールの辞書』は、文句なく面白い。パリサー『五輪の薔薇』があたかもディケンズの忘れられた作品か、と言った趣であったのに、『ジョン〜』はここにスピードとユーモアと視覚的要素をたっぷり盛り込んでどんどん読ませる。場面の転換が多いことも映画を見ているような気分を味わわせる。悲しいかな古典の素養が(泣)…けれども注がかなり親切なのでそれなりに楽しむことが出来る(と思う)。いそいそ。なおパリサーの新刊は『大聖堂の悪霊』(早川書房 46判 2200円)9月下旬刊行予定だそうだ。

 山之口洋さんがbk1で連載コラムを始められたが、今週からNHKFM「青春アドベンチャー」で彼の『オルガニスト』再放送が始まっているのであった(22:45〜)。

 学研M文庫のサイトbk1内に出現。先日ヘン、と思った大槻ケンヂの作品も立ち読みコーナーで読める。

 夜遅く帰ってきた連れあいが珍しくTVを見ているので、何かなと覗いて見るなり「怖〜い!」と叫ぶ私。なぜなら、ブラックウッド「柳」を読んで想像したのと同じ光景が映し出されていたからである。NHKの、ルーマニア部分を流れるドナウ川のルポと聞き、ブラックウッドの筆の確かさに舌を巻く。ただし画面に映っているのは別に嵐の光景ではない。

2000.0905(火) 

 尋常ならざる睡魔が滞在中。夕食後8時半から9時半まで安眠ソファー、9時半から朝の7時までちゃんと寝直す。ケータイでしゃべっているときにキャッチがはいり、あれ、ケータイのキャッチってどうやって受けるんだろう、とおたおたしていたら、それは目覚ましであった。睡魔さん早くお引き取りを…。

 『出版クラッシュ』に浮気中。

 いつのまにか野溝七生子『アルスのノート』が刊行されていたのを知る(7月)。誉めすぎのきらいもある久世光彦の評を発見。

2000.0904(月) 
購入本
上遠野浩平/『ぼくらは虚空に夜を視る』/徳間デュアル文庫
岩本隆雄/『鵺姫真話』/ソノラマ文庫
ディック、クーンツほか/『影が行く』/創元SF文庫
フレッド・チャペル/『暗黒神ダゴン』/創元推理文庫
F・ポール・ウィルスン、ブライアン・ラムレイほか/『ラヴクラフトの遺産』/〃
『母の友10月号』/福音館書店
『こどものとも10月号 おばあさんとマリーちゃん』/ 〃
ジョージ・ヘイ編/『魔道書ネクロノミコン』/学研M文庫

 一週間が始まったばかりというのに、しにそうに眠い>早く寝なさい

 網戸が直らないため窓を閉めきりにして置いてもとりあえず困らないくらいの涼しい一日。久しぶりにハイネックのTシャツを着る。この気温の落差はものすごい。
 一日天気が変わりやすく、昼休み、昼過ぎと2回外に出る用があったが、そのたびに運悪く雨に遭う。夕方も西日が射しているなと安心していればまた雨。幸いに帰る前には上がる。夕食どきになってやっと届いた網戸をはめようと長男と四苦八苦、西の空の三日月(ほんとは月齢5.5)が美しい。この秋の満月は9月14日と10月13日である。

 bk1ホラーの棚のコラム「スペシャル5 オカルト+民俗学+伝奇ロマン!?」(ここから飛ぶのが便利)は、タイトルを見てさっと身を退く向きもあろうが、じつは中味は読みでがあって興味深い。一読をおすすめする。コラムが小間切れになっていて、やたらに上位ページに戻らなくてはならないのがbk1コラムの良くない点。関連コラムは各ページから一覧できるようにしリンクして置いて欲しいものだ。

 この記事では柳田国男や折口信夫のことが取り上げられているのだが、高校時代の現国の「青年教師」が、折口信夫を「折口先生」あるいは「釋迢空先生」といって事あるごとに誉め称え心酔していた。「いかるがのさとの〜」と釋迢空の歌に曲をつけて授業中に「恥ずかしいから目をつぶって聞いてくれ」と自分で歌って聞かせてくれた(生徒は笑いをこらえるのに苦労した)のも懐かしい思い出である。
 私自身は、折口信夫は「死者の書」を何度か読んだ程であるが、うーんこれはなんだろう、とひどく不思議に、同時に興味をそそられたものであった。この作品はかなり好きです。今読み直したらどう感じるだろう。

 でもって同じくホラーの棚「スペシャル6 『墓地に建つ館』とケルティック・ゴシックの炎」が面白いのでぜひ読みましょう。ほんとにここんちのコラムは捜しにくいブツブツ。(ここから飛ぶのが便利)

 また黄色に黒のパッケージが届く。管理人さんありがとう。今日のも学研M文庫、そうかこのマスコットはモグラくんであったか、カモノハシかと思った>東へんしうちょう殿。

 『鵺姫真話』にちょっと浮気しちゃおっかな。

2000.0903(日) 
購入本
東雅夫・編/『少女怪談』/学研M文庫
菊地秀行ほか/『クトゥルー怪異録』/〃

 昨日の東京は37.4度もあったのだってぇ@_@。今日は狂ったように風が吹きまくっていたのでまだよかったらしい。さすがに涼しくなった夕方六時過ぎに隣の小学校の脇を通った時、すでに暗くなり始めた草むらからわき上がるような虫の声に包まれる。仕事から帰る時間に自転車の電灯をつけるのも間近かと思うと、夏が恋しい。

 網戸の修理(駐車場に来て直してくれる)のビラが入っていたので、電話予約し、朝から取り外して一応それらしくソージしておくが、一向に来ない。来るのは宅配便だったりピザの配達だったり、かかってくる電話もセールスだったり学校の連絡網だったりで、結局来たのは5時を回っていた。ほれ見なさい、7時に出来ますと請け合ったのに後刻「やっぱり出来ません〜、明日届けます」になっちゃったではないか。あまりに暑くて外に出る気にならなかったので別段来るのが遅くてもかまわなかったのだが、網戸がないと唯一明日の夜まで窓を開けておけないのが困る。

 学研M文庫はbk1経由。配達のヤマトのおにいさん(何年来のおつきあい)がbk1の黄色と黒のパッケージを差し出しながら言うには「この頃これ多いですね、これがあると、あっ、きっとお宅のだな、と思う」そうだ。
 『少女怪談』には山尾悠子の「通夜の客」が収録されている。先頃刊行の作品集成には収録されなかった「初夏ものがたり」の第三話である。大槻ケンヂと森村誠一を読む。大槻ケンヂのはとってもヘン。
 東へんしうちょうのあとがきの一節に吹き出す。いわく「暗闇の中の少女と「牛の首」の邂逅は、(略)極め付きの少女怪談を連想させずにはおかないだろう。/そう、牛の首をいただく、あの呪われた娘の物語を…。」笑ってごめんなさいへんしうちょう殿。

 『永遠の森』読了。9話からなる連作短篇集。一編読み終わるたびに、いま読んだのが一番好きかも知れない、と思う。音楽にも縁の深いこの作者らしく、全編音楽が絡んでいるのでかなり自分に引きつける形で読めた。強いてあげれば、視覚と聴覚を扱った第一話、邦楽(笛)の家元の襲名披露の第三話、年老いた学芸員の第五話、海に溶けた人魚の第七話などが好き。表題作「永遠の森」もいかにも菅浩江らしい作品でおのずと「そばかすのフィギュア」を思い出す。どの作品も緻密で神経が行き届いており、いずれ劣らぬハイレベルなものだと思うが、いかんせん私にはどれも甘すぎると思えた。甘すぎるがハイレベル、と言う順序で言った方が良いのかもしれない。

 ようやく『ジョン・ランプリエールの辞書』を読み始める。何のことはない、読み始めてみたら読み易いではないか(今のところは)。だが『永遠の森』のムネーモシュネーだのアフロディーテだのにどうも弱いらしい私はこれから大挙して出てきそうなギリシャローマの名前をフォロー出来るだろうか。翻訳物がダメ、と言う人はその理由としてよく「登場人物の名前が覚えられない」と言うが、私は少なくとも読んでいる間は大丈夫。ただし例外があって、どうもこのギリシャローマ風の神様たちの名前だけは弱いのである。名前はもちろん耳に親しくて、好きな名前だってあるのだが(ヒュアキントスとか…)、どの名前が何の神様、というのが覚えられないのだ。おお、はずかしい。

2000.0902(土) 
購入本
『詩と思想』9月号 特集:世界少数民族からの発信/土曜美術社出版販売

 あ・ぢ・い!公称36.6度という猛暑である。ぎらぎらしすぎてまともに目を上げられないような日中の日差しのなか、用事で自転車に乗る(惨)。汗もかくそばから乾いてしまう感じ。体温より暑いではないか。身を寄せ合えば涼がとれるかも。

 『詩と思想』9月号には、寮美千子の3ページの美しいエッセイ(「1992・夏・アリゾナ 先住民の言葉に耳をすまして」)が掲載されている。昨年のださこん2でもアリゾナでの経験に触れておられた(以下緑色はこのエッセイからの引用)。

 先住民ホピ族の居留地の夜。大空と地面の境目がわからないほどの濃い闇。

 星々が、きらめきながらまっすぐに空へと駈けのぼっていた。目で追ってぐるりと頭をめぐらせると、それは頭上で巨大な弧を描き、反対側の地平線へと沈んでいた。見たこともないほど大きな虹のような天の川の姿に、わたしはただただ息を飲んだ。

そして

 突然、不思議な感覚に襲われた。生まれてはじめて、星々への果てしない距離を実感したのだ。その時、星々のきらめきは、もう闇天井に開けられた無数の針の穴ではなくなった。ひとつひとつが違う距離を持って、がらんとした宇宙空間に浮いていると感じられたのだ。そして、その間に広がる真空の闇の、恐ろしいほどの冷たさを、痛いほど感じた。

彼女は、耕すでもなく、ただ自然(精霊)からあたえられるトウモロコシを受け取って暮らしているようなホピ族の生き方を、少しだけわかったように思う。

 そうか、そういうことか、と思った。こんな、壮絶なまでに美しい星空を夜毎に見ていたら、いやでも生かされてあることの不思議を思わずにはいられない。

 と。降るような星空を見たときに、宇宙の深淵のあまりの巨大さ、その空虚さに震えるほどの思いをした経験を持つ人は多いだろう。
 翻って、このホピ族のひとびとは、どのような宇宙観をもっている(いた)のだろう。凄いような星空を頭上に頂いて、不毛と言いたい程の大地に暮らしている彼らの宇宙に対する認識はどのようなものだったのだろう?
ひとつひとつが違う距離を持って、がらんとした宇宙空間に浮いているという認識、その間に広がる真空の闇の、恐ろしいほどの冷たさを感じるような宇宙観を、彼らは持っていたのだろうか?
 寮美千子のこの感覚は、非常に共感するものではあるのだが、それをホピ族の生き方・文化へ結びつけようとすることは、都市生活者としての我々のあくまでも第三者的な、外部からの見方に過ぎないようにも思える。

2000.0901(金) 
購入本
中野節子・訳/『マビノギオン』/JULA出版局

 やっぱりまだ暑いので、しばらく涼しげな色にしておこう。

 『歯みがきつくって億万長者』読了。それなりに面白くはあった。
 『永遠の森 博物館惑星』第2話の終わりの方。どうも『小惑星美術館』と設定が混同してしまって、あれれと思ったりしながら読む。

 どうしようかずっと迷っていた『マビノギオン』をbk1から購入。解説を読むとわくわくしてしまう。カバーを取ってみるとなかなかに素敵なクラシックな装丁だ。きのうのレ・ファニュのカバーも取ると、こちらはカラーではないがケルズの書(だったかな)が使ってある。どれがどれやら混同しそうだ。分厚い本がたまってしまったので嬉し悲し。

 掲示板の過去ログをいつでも載せられるようにと、いじるが、あちらを直すとこちらがヘン、と大したところじゃないのに数字やアルファベットの一文字をまちがえていることにさみだれ式に気付くのでうんざりして途中で放棄。昼間やろうっと。


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最終更新日 01/12/31 01:11:40
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